39.トランペットパート
今回は過去編です。
トランペットパートの軌跡を少しだけ。
まだ残暑が強く残る秋の初め、先輩方はコンク-ルで引退し、1年生と2年生の新体制となった。
まだ1年生である私、桜木愛華は部活のために学校に向かった。
この高校にきて約半年が経ったのだが、少し気に入らないやつがいる。
同じトランペットの冬海永遠だ。吹奏楽部に入ってきたくせして、人との関わりを極端に避ける。
私と晴生がどれだけ歩み寄ろうとしても冷たく突き放す。
これからのことを思うとすごく億劫な気持ちになる。こんなやつと後2年やっていかなければならないのだ。
晴生はあれは照れ隠しでなんだかんだ良いやつだろと決めつけており、ダル絡みしている。
だが、私には素っ気なくされるやつに親しくはできない。
そんなんだが部活でも親友と呼んでもいいんじゃないかと思うほどの人に会えた。
その親友の名前は夏山刹那。
刹那とは部活に入ってすぐに友達になれた。気軽に話せて、明るく優しいやつだ。
しかし、あいつは刹那だけには普通に振る舞う。
そんなところも気に入らなかった。
部室に入る。すると、トランペットの音が聴こえた。
そこにいたのはあいつだった。集合時間はまだ1時間前だが基本練習をしていた。
音が鳴り止む。お互いに存在を確認して私は席に着いてスマホをいじる。あいつも練習を再開する。
どうやら刹那はまだ学校には来ていないようだ。
部活が始まり、パート練習となり教室に移動した。先輩達は今後の方針の話し合いでおらず、晴生は今日は病院とかでいなかった。
つまり、私とあいつの2人だけである。
すごくやりづらいが、私も黙々と練習する。次に演奏する曲ももらっており、音出しや基本練習を軽く済ませ、曲の練習に入った。
あいつはまだ基本練習をしていた。色々なパターンがあるみたいだ。
こう言っちゃなんだが、あいつはそこまで上手くない。練習はとても熱心ではあるが、音色も暗いし、音の響きはイマイチで音を合わせるのも上手くいかない。
しばらく練習していると、曲の一部ができなくて躓いていた。何度やっても上手くいかなかった。
どうしようか悩んでいると、
あいつがこちらをじっと見ていた。
「何?」
と私は素っ気なく返す。
「いや、さっきからそこばかり練習してるけど」
と向こうが珍しく口を開いた。だが、むかつく。
「そんなのこっちの勝手でしょ!」
と練習を再開しようと思ったのだが、
「ただ、繰り返してもできるようにはならないぞ。まずは、リズムも全部崩して音だけをひろう。音の流れがわかってきたら、今度はリズムだけを練習する。そして、フレーズを短く切ってゆっくりやる」
「・・・」
いきなりのアドバイスで驚いた。
「お前、いつも練習がワンパターンなんだよ。お前は上手いからそつなくこなすけど、それだとできないとき対処が難しい。来年は後輩にも教えないといけないし、色々な練習パターンは持っていた方がいい。
まぁ、こんな下手くそな俺の言うことなんか聞かなくても、お前ならなんとかなるだろうけど」
そう言われ私はただ、
「わかった、試してみる」
それだけ言った。
10分後、
「・・・できた」
さっきまでのは嘘みたいにスラスラ吹ける。
少し休憩を取るついでに報告をする。
「吹けるようになった。ありがと」
「そうか、それはよかった」
と無表情で返してくる。
にしてもよくわからん。他人なんかどうでもいいみたいにしていたのに、以外と私達のことを見てたり、的確なアドバイスをしたりする。私の中でモヤモヤが抑えきれなくなり永遠に聞いた。
「なんで、アドバイスしてくれたの」
「気になったからだ、いつもだったらそつなくこなすお前が珍しいこともあるんだなって」
いつもって、あんだけ周りに無関心なふりをしていたのに?少し驚く。
そういえば今日の練習もこっちをじっと見てきていた。
なんだか少し興味が湧いた。だからいつもより踏み込んでみたくなった。
「いつも、関わってくるのを拒むのはなぜ?」
「・・・」
思わず聞きたいことを言ってしまった。あいつは何も言わず黙る。
「いやなら無理して聞かないけど、私達は同じパートなんだから、なんかあるんだったら言ってほしい」
「いや、お前らは悪くない。俺が一方的に拒絶しているだけだ」
「どうして?」
「それは言えない」
どうやら何か暗い過去があるようだ。だが、今日やっとあいつがいいやつだとわかった。
晴生が言ってたなんだかんだ人のことを気に掛けている良いやつというのは当たっていたみたいだ。
「よし、決めた」
「なにを?」
と永遠が不思議そうに聞いてくる。
「晴生と同じようにこれからガツガツ関わってやるわよ。拒否しても巻き込んでやるからな、覚悟しとけよ」
「はぁあ?なんで?」
「永遠は意外と良いやつだってわかったからな。トランペットパートとして交流は大事だ」
「だから、俺は・・・」
と言おうとする永遠を遮り
「そうと決まったら、音を合わせるぞ。そして曲練だ」
「いや・・・」
「あれっ?いいのか?ただでさえ音を合わせるのが苦手な永遠くんよ~」
と強制する私に対して、呆れつつもどこか嬉しそうに
「わかった、付き合うよ」
それからは一緒に練習した。相変わらず下手ではあったが、少しずつ音も合っていたのがわかり、楽しかった。
その日から私と晴生がグイグイいき、永遠が渋々了承するという構図が出来上がった。
しばらくの後、渋々もなくなり、普通に会話ができるようになり、ある程度は気を許してもらえたみたいだ。
相変わらず友達というワードは否定されるが。
部活でも他の人々とも話し掛けられたら話し返すようにもなり、信頼も得られたようだ。
そして、12月頃に刹那から不安そうな顔で永遠のことについて相談を持ちかけられるのだが、
それはまた別のお話。
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楽器吹きたいなぁ・・・




