3.奇跡
事故の話で一瞬だけ、血の表現があります。苦手な方は気をつけてください。
目を開けると、そこには白い天井がみえた。
周囲を見渡す。
どうやら、俺は助かったみたいだ。ここはおそらく病院だろう。
体を起こす……ってあれ?事故に遭ったはずなのに、どこも痛くないし、体が軽い。
……うむ、現代医療はこんなにも進歩したのか。
「とりあえず、看護師を呼ぶか」
右手を動かそうとするが、右手が動かない。
というか、何かが右手の上にのっている感覚がする。
そこに目線をやる・・・・・・刹那がいた。
「刹・・・那?」
瞬間、事故の映像がフラッシュバックする。
すぐに体が小刻みに震え始め、呼吸も激しくなる。
あの時刹那は頭部と腹部両方から大量出血していたはずだ・・・あの状態で生きているとは到底考えられない。
寝ぼけているのだろうか?なんとか呼吸だけは落ち着かせもう一度彼女の姿に目をやる。
刹那本人に間違いない、微かに聞こえる呼吸音、右手に伝わってくる刹那の温もり……どうやら俺の右手を枕にして寝ているようだ……。
生きてる!
「……刹那!刹那!」
声を張り上げて叫ぶ。
いても立ってもいられなかった。
早く刹那の顔が見たい、声を聴きたい……!
「……んっ?」
刹那が起きる。
俺は嬉しさの余り、無我夢中で寝ぼけている刹那を抱き寄せる。
「刹那!・・・刹那!」
「永遠!ちょっと?いきなりなにするの!?」
いきなりすぎる状況に飲み込めてない刹那。
だが、そんなことはどうでもいい。
生きてる・・・刹那が生きてる!
「刹那!・・」
ひたすら彼女の名前を叫び続ける。頬に滴るものを感じたがそんなことはどうでもいい。
「ねぇ永遠、落ち着いて。恥ずかしいから。離してよ!」
と訴えてくるが離せるわけがない。
死んでしまったと思ってた刹那が今こうして生きているんだ。
目の前にいてくれる。まさに奇跡である。
もっと、温もりを感じていたい。
抱き締めている腕に思わず力がはいってしまう。
何か言っている刹那を無視して抱き締め続ける。
刹那もなんだかんだ言っておきながら、動かない。
俺が名前を呼び続けてると、
「でもよかった。永遠が無事で……永遠」
と刹那が弱々しく呟く。刹那も嗚咽が混じりながら、ぎゅっと抱き締め返された。
胸のあたりがキュッと苦しくなる。
嬉しかった刹那が生きていてくれて、
そしてこんな俺のことを心配してくれていたことが。
だけど、あの時助けられずに刹那に心配をかける自分が申し訳なかった。
しばらくお互いに泣きながら名前を呼び続けた。
「こほん」
気づくと看護師が「いつまで待たせるのかな」とでも言うような顔で、苦笑いをしまがらこちらを見ていた。
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