29.伝えます
俺はもう1度問い返す。
「どうだったって、何が?」
「えっと・・そのぉ・・さっきくっついてた感想・・・」
と刹那は少し目線を逸らして聞いてくる。顔は真っ赤なままだ。
なんと答えるのが正解なのだろうか。
ここで素直に『はい、やわらかかったです』なんて言えば引かれるに決まっている。
かといって、『嫌だった』は自分に嘘をつくことになるし、なにより刹那がまた自分を責めるから言えない。
俺がなにも言えないでいると、
「ごめんね、やっぱり、嫌だったよね」
と悲しそうな顔で目をうるうるさせながらこちらを見てくる。
どうやら言うしかないようだ。
「安心した」
「えっ?」
こちらに近づいて見つめてくる。
ちょっ近いって。それに自分で言っておいてなんだがかなり恥ずかしい。
「だから、刹那がちゃんと近くにいるんだなって安心した。刹那と一緒にいられて嬉しかった・・」
「・・・ほんと?」
「ほんと!・・・それに・・・」
「それに?」
「やわらかくて、気持ちよかった・・・」
「!いきなりなにいってるの?やっぱり変態!なにストレートすぎる感想なんか言ってるの!?・・・・・でもありがとう。私も永遠と一緒にいられてうれしかった・・・・ってそうじゃない!」
?いきなり、俺を罵倒したり、お礼を言ったりと態度がころころ変わる。
「って、とっ、永遠とくっ、くっついてたことが嬉しかったんじゃないから!」
「わかってるって」
否定された。悲しいな。とりあえず刹那を落ち着かせるために同意をしておく。
「ごっ、ごめんそうじゃない・・・こんなこと他の男子にはできないし、ただこんなことできるのは永遠にだけだからって・・・・!ってこれは私が永遠のことが・・・永遠のことが・・・」
と刹那の声がしぼんでいく。
て?俺のことが・・・?俺にだけできる?
そのさきを言わずに、下を向いて何かと格闘している刹那だが、決心したのか顔を上げる。
「私ね・・ずっと永遠に言いたかったことがあるんだ」
その不意打ちにドキンと心臓が跳ね上がる。今までの刹那では見たことがない顔で言われる。
夕陽によって照らされる顔は、真っ赤に染め、恥ずかしそうにしながらも、何かにおびえながらだけど真剣な目で、それを見た俺は自分の顔が熱くなるの感じた。
「今までこそこそ、やってたけど、もう自分の気持ちを抑えたくないから」
それって?まさか?
「私はね、永遠のことが・・・っす・・・す」
その先を言えない刹那。気づけば瞳の奥には涙が溜まっており、体は細かく震えている。
今までのことを振り返る。そしてその先の言葉を予想する・・・いや、既にそんなのできている。
今思えばわかりやすすぎるサインだった。
それを俺は刹那にはふさわしくないと思って目を背けてきたのだ。
だがそれは刹那にとって一番気持ちを傷つけていることになっていたとようやく自覚した。
そして、続きを言えない理由。怖いのだろう。そうじゃなかったとき俺達は確実に気まずくなる。家には2人で住んでいる。親にもそして俺にも迷惑は掛けられないと思ったのだろう。
こんなにも優しい刹那が勇気をだして、恐怖と闘って伝えようとしているのに俺は何をしているんだ?
と自分に嫌気が差すのと同時に、
嬉しかった。自分と同じ気持ちだったなんて・・・刹那から確信から事実に変えるものがほしい。
「っす・・・す・・・」
刹那はずっと言えず涙はポタポタと流れて、嗚咽でもうなにも言えなくなっていた。
違うそうじゃなかった。俺が刹那を守るって決めたから、そのためには・・
俺は泣いている刹那の震える肩に手を回して引き寄せ抱き締める。
「!?」
俺も自分の気持ちにもう嘘はつかない。刹那を守るならもっと近くでずっと・・・
刹那はいきなりのことで戸惑っているようだが、体の震えが止まったのを確認した俺は刹那の肩を優しく持ったまま、顔が互いに見える距離まで離して
「好きだよ・・刹那」
「!」
「ずっと、刹那のことが、幼馴染としてだけじゃない。一人の女の子として・・・
好きだ、刹那。俺と付き合ってください」
刹那は涙を流していた。嗚咽を抑えながらも
「なんで、私言おうとしてたのに言っちゃうのかなぁ」
「俺から伝えなきゃって思って。待たせてごめん」
「ほんとだよ。返事するね。
・・・・・・はい!私も・・・私も永遠のことがこの場所で初めて会ったあの日からずっと大好きです。こんな私だけど付き合ってください」
と笑顔で答える。涙を流していても今までで1番のとびっきりの明るく優しい笑顔。
夕陽に照らされてさらに輝きを放つ。
そう、ずっと見たかったあの顔は初めて会ったとき見せてくれた笑顔をやっと見ることができた。
頬に何かが伝う。気づけば俺も涙を流していた。
そして刹那が手を俺の背中に回してきて抱き締めてくる。
刹那は顔を俺の胸に埋めながら、
「嬉しいよ、永遠が好きでいてくれて・・・好きだよ、永遠」
「ああ、俺も嬉しい。好きだよ、刹那」
そう言って、刹那を強く抱き締める。刹那もそれにこたえてギュッと抱き締める。
刹那の温かさが、柔らかさが、優しい匂いが伝わってくる。
2人とも同じ気持ちだったこと、気持ちが伝わって、同じ気持ちを共有するってこんなにも嬉しくて幸せなことなんだなって。
そんなことを噛みしめながら、
「刹那、好き」
「私も、好き!永遠」
と俺達2人は涙を流して笑いながら、同じことを繰り返し続けるだった。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願いします!
日常の変わり目は突然に・・・・そんなことってなかなかないかもしれない。少なくとも・・・
いきなり刹那と永遠は付き合うことになりましたが、この物語はまだまだ続きます!
むしろここからが始まりです。




