26.大樹の下で・・初恋・・
「じゃじゃーん!」
刹那のそんなかけ声と共に箱が開かれ、サンドイッチをはじめおいしそうなご飯が姿を現した。
「おいしそうだな!全部刹那が作ったのか?」
「そうだよ!」
なるほど、俺をリビングから追い出してこんなことをやってたのか。
大量の料理に準備、運動までやって元気な刹那の体力はいったいどこから来ているのだろうか。
俺が料理を眺めていると、刹那がサンドイッチを渡してきて、
「早く、食べてみて!」
「えっ、俺が先に食べていいのか?刹那が作ったんだし」
と俺は言うが、
「いいのいいの、永遠に食べて欲しくて作ったんだから」
「じゃあ、いただきます」
刹那に言われてしまったので、サンドイッチを受け取り、1口かじる。
「どう?」
「おいしい!」
「ふふっ、ありがとう!」
レタスはシャキッとしていて、ハムカツも衣はサクサクしれおり、ジューシーである。そしてなにより、
「サンドイッチに使ってるソースがうまいな、ピリ辛だけどすごく合ってるし、辛すぎずたべやすいよ」
「よかったー、色々と研究した甲斐があったよ。じゃあ、次はこれも食べてみてよ」
とポテトサラダを出され、食べる。これもジャガイモがホクホクでおいしい。
刹那はそんな食べる俺の顔を見て、嬉しそうにしている。
「うんうん、今回は上手くできたかな」
刹那も自分の作った料理を食べ、満足しているようだ。
とまぁそんな感じで刹那の作った昼ご飯を楽しむのだった。
昼ご飯の後私達は草茂る地面の上で休憩していた。ちなみに永遠はおなかいっぱいになったからか、
さっきのバドミントンで疲れたのか寝てしまっていた。
私としたことが永遠の体力のことが抜け落ちてしまった。
本当は手加減しようと思ったのだが、永遠があまりにも必死な顔で打ち返してくるものだからかわいくて、ちょっといじめたくなってしまった。
それに地味に負けず嫌いだし。手加減していたとバレればそれはそれでふてくされそうだ。
・・・そんな永遠もいいかも。
「せっかく、2人で一緒にいるんだから・・・」
と私は隣で寝る永遠の顔をつつく。つつかれて顔が少し嫌な顔をする永遠かわいいな。
私は永遠をつつきながらも目の前に広がる草原を眺める。
懐かしいな。
来るとき、永遠に大切な場所だって言ってくれて自分と同じ気持ちだったことがわかって嬉しかった。
そう、ここは私と永遠が初めて出会った。私の今も続く初恋の原点。
私が小学校4年生の時だった。
両親の仕事の都合でこの町に引っ越して来た。
私が学校から帰ってきても両親は仕事で忙しく家には誰もいない。
学校では当時は後ろにひっこみがちな性格だったので、友達を作ることができなかった。
そう、私は1人で寂しかったのだ。
家でも、学校でも私は独り。
もちろん両親は少しでも時間を作って私との時間を作ってくれたし、たくさん愛してくれた。
私もそんな両親のことが大好きだった。
それでも寂しいもの寂しかった。
ドアを開ける。「ただいま」と言っても「おかえり」は聞こえない。
気づけば私の体はランドセルを放って外に出ていた。
誰もいない静かな家で自分は1人だということを考えたくなかったのか、私は家を出て歩き回った。
しかし、慣れない土地でそんなことをしていたために山道に入り込んでしまい迷ってしまったのだ。
夕暮れ時になっていて、森の中は薄暗かった。
怖かった。もう戻れないんじゃないかって。
涙がこぼれそうになるのをぐっとこらえながら、歩いていたときだった。
「おい!お前こんなところを歩いてどうしたんだ?」
「・・・」
私はいきなり話し掛けられて怖くて固まってしまった。
何も言わない私を見てどうしたのかとうつむいている私の顔をのぞき込んでくる。
「あっ、もしかして夏山刹那?」
私はコクりと顔を立てに動かす。
「たしか、転校生だよな?迷ったのか?」
「・・・うん」
「あっ、ちなみにおれは同じクラスの冬海永遠って言うんだ。よろしくな!」
私はうつむいたまま何も言えなかった。
怖さや驚きと、様々な感情がぐちゃぐちゃになってしまい、
内気な私はどう接したらいいのかわからなかったのだ。
そんな私をみた永遠にいきなり私の手が引っ張られ、
「俺、ここの近くにすごくきれいな場所があるのを知ってるんだ。迷ったついでに教えてやるよ」
と無理矢理だったが私が転ばない程度に引っ張ってくれて、ついていくとそこには沈みゆく赤い夕日が照らす草原とさらに少し奥で上がったさきに1本の大きな木があった。
初めて見る幻想的な景色に周囲を見渡しながらも大きな木のもとまで歩いて行く。
「ほら、着いた。後ろを振り返ってみてよ」
永遠にそう言われ振り返るとそこには先程歩いて来た草原が目の前に夕陽に照らされており、その奥には町が広がっている。そしてその奥に広がる海に沈んでいこうとする夕陽がどことなく幻想的だった。
「・・・きれい」
とそう呟いた私に
「だろ!」
と私に明るく微笑みかける。
彼が横を向いて私に見せてくれた屈託のない笑顔が夕日に照らされてさらに輝く。
このとき私の中で熱くなるものを感じた。
「・・・ありがとう!」
「やっと、笑ってくれたな。やっぱ、笑ってる顔が一番いいよ」
それから永遠はクラスやこの町のことなどたくさん教えてくれた。
気づけば日は完全に沈んでおり、あたりは暗くなっていた。
遠くに見える町一面に光っている。
「やばいな、そろそろ帰らないとまずいな」
「そうだね、続きをまた聴かせてよ」
私はいつの間にか永遠と普通に話せるようになっていた。
そうして私達2人は大きな木に背を向け山道に入っていくのだった。
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大樹の下に広がる草原って現実的にはどうなのだろうか、行ってみたい。




