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21.永遠の能力

 その後、俺達は落ち着くと、散乱した机やイスなどをもとに戻して教室を出た。

最後まで先生や生徒は誰も近くを通ることはなかった。

俺は黒板の下でぐったりしている石田に力を使い、元通りにしておき、ナイフを回収しておいた。


俺達はこの出来事を無かったことにすることにした。

まぁ、石田が話したらすぐにばれてしまうことなのだが、プライドの高い石田は自分からはこの話をすることは無いだろうがなと勝手に決めつけることにした。


ちなみに、刹那には俺の制服を着させた。

なんか、めっちゃ顔を赤くされたが。あんな格好じゃ外では歩けないしな。

刹那は帰り道に俺の制服を観察したり、匂いもかいでいた。なにより終始ご満悦そうだった。


ちなみに刹那の・・・ががっつり見えてしまったのはここだけの秘密だ。表には出さないように努めたが、俺も立派な男子だ、気になります。意外とあるんだなぁ・・・って。

今、思ったのだが、教室で泣いていたときに当たっていたのは?・・

・・!考えるのはやめよう。


 こうして、家に帰ってきたのだが、俺は今刹那の前で正座をさせられている。

帰ってきたまんまの状態で。


「んで?これはどういうことなの?」

「・・・」


さて、やはりというか、どう言おうか。ナイフに刺されなかったなら言い訳がまだできたが。

刹那に今着させている俺の制服にはナイフが貫通した跡がはっきり残っている。


こうして何を言おうか思案していると、

刹那が目の前で座ってきて、

「ごめんね。今日は私のせいで、こんなにも永遠を傷つけて。こんな私が言うのもあれだけど、永遠のことをちゃんと知っておきたい。永遠のためにできることをしたい」

申し訳なさそうな顔で言う。


相変わらず優しすぎるな。今回はどう考えても刹那は悪くないのに自分を責めすぎだ。

俺は覚悟を決め、話すことを頭にまとめて、刹那の目をみて話す。


「信じられないかもしれないが、それでも聞いてくれるか?」

「うん、大丈夫。いつも永遠を信じてる」

と返されぶっ飛んだ返事で鼓動が跳ね上がるが、なんとかそれに耐える。


「俺はどうやら不思議な力を手に入れたらしい。その能力は一瞬で傷を治すことができるんだ」

刹那は驚いた顔をする。


「もちろん、自分にも他人にも使える。そして他人の傷を治した場合のみ、

その人が怪我をしていた分だけ俺の身体能力等が向上する感じらしい」


「それで、あの時私の怪我を治して、身体能力を上げて、石田君をふっ飛ばして、自分の傷は自分で治したってこと?」


「まぁ、そういうことだ。おそらくだがこの力を使ったのは今までで3回だと思う。

最初はたぶん高2初っ端の交通事故だ。

大量の出血痕があったのに俺達が無傷だったのは俺が力を使ったからだと思う。

2回目は小さい女の子がひどく転んだ時に使った。持ち手が赤くなった日のことだ。

そして、今日で3回目だ。いや、正確に言えば4回だな。最後は石田にも使っといたから」

「・・・」


驚きの余り何も答えない刹那。

そりゃそうだ、だって目の前にいるやつが人の皮を被った化け物なのだからな。


「ごめんな、俺は化け物みたいなもんだ。刹那といたら刹那に迷惑がかかってしまう。だから・・」

「だめ・・・・」

刹那が俺の話を遮って言う。

「どんなことがあったとしても、永遠は永遠だよ。それだけは何も変わらない。だからこれからもよろしくね」


と俺に優しい笑みを浮かべる。読まれていたのか言おうとしていたことを先回りされてしまった。

せっかくこの家から刹那から離れる覚悟をしていたってのに、

だけど素直に嬉しかった。こんな自分を認めてくれて。これからも刹那と一緒にいることを許してもらえて。


「何言ってんだ。どこにも行くわけないだろ」

俺も刹那に笑みを返す。俺のこの力なら刹那を守れる。もう二度とあんな目には遭わせない。

「うん・・」

とほっとする刹那。


「今までは無意識に発動してたけど、これからは意識的に使えるってことがわかった。

石田の時にできたから実証済みだ」


「ねえ、私から1つ聞きたいんだけど、その能力ってなんかデメリットとかないの?流石に致死レベルの傷まで治せる力なんだし」


痛いところを突かれ、一瞬目を逸らしてしまったが、視線を戻して言う。

「いや、何もない。だから気にせず使える」

「・・・本当に?」


刹那はいかにも怪しいとこちらに顔をぐっと近づけてのぞき込んでくる。

「本当だ」

と俺は答える。てか刹那さん?顔近いんですけど。

「・・・わかった」

引き下がる刹那。一応納得してくれたようだ。


「というわけだから、刹那のことに何があっても必ず守る。2度とあんなことは起こさせない」

「・・・」

あれ?刹那が固まっている。顔もリンゴのように真っ赤である。


「どうした?大丈夫か?」

「・・・・はっ!大丈夫、大丈夫・・・・・・そのぉ・・・ありがとう」

と照れる刹那、かわいい。


気を落ち着かせるように首をぶんぶん横に振って、刹那は立ち上がり、

「じゃあ、夕ご飯作るね」

「えっ、大丈夫なのか?無理してないか?」

「大丈夫!永遠が治してくれたから」

そう言って台所に向かう刹那。


この力でも肉体的な傷は治せても精神の疲労までは治せないはずなのだが。


刹那は途中で立ち止まり、

「永遠・・・その力むやみに使わないでほしい。

上手くは言えないけど、永遠が傷つく・・そんな気がするの」

一転して、急に弱々しい声になる。

「・・・」

「・・お願い」

「・・・」

「・・・」

「わかった。ここぞというときだけ使う」

「うん、ありがとう・・・・」


ほっ、と息をつく音が聞こえる。少しは安心したようだ。

「さて!今日は永遠の大好きなハンバーグにしよおっと」

明るい雰囲気に切り替える刹那。


せっかく変えてくれた雰囲気を壊すわけにもいかないし、

やっといつもの日々に戻れたことを実感しながら俺もそれに続く。

「おぉ!それは楽しみだな!俺も下準備手伝うよ」

そう言って俺も台所に向かうのであった。

今回も読んでいただきありがとうございます。

新たにブックマーク登録、評価ありがとうございます!

今後もよろしくお願いします!


永遠の能力は次回の後書きにてまとめます。

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