20.覚醒
私のせいだ。私がわがままを言ったから、永遠はこんな目に遭ったのだ。
永遠が殴られたのは私のせいなのだ。
そして、永遠のことをこんなやつに馬鹿にされて、私はなにもできなかった。
自分の無力さで後悔に溢れる。
ごめんね、永遠。
石田のやつは再び私を襲おうとしている。髪を持ち上げられ体中も痛くて動くこともできない。
でもこれでいい。永遠が殴られるのは終わらせられた。後は私が傷つけば永遠は傷つかなくていい。
こうすることでしか今の私には永遠を守れない。
これからどうなるのだろうか、これから起こることが嫌でも想像される。
覚悟はしていても怖い。体の震えが止まらない。
やつの手が伸びる。私は目を固くつぶった。
だが、やつの手は私に触れてくることはなかった。それどころか抱きかかえられた。
目はつぶっていたが誰の手かすぐにわかった。
このとても温かくて安心する優しい温もりは・・・
目を開く。
「刹那!」
この世で1番好きな人に名前を言われた私は
「・・・永遠」
と彼の名前を呼ぶのだった。
抱きかかえたまま刹那を見つめる。
「刹那、助けるの遅くなってごめん。痛かったよな。怖かったよな・・・・」
俺は刹那に謝る。
「ううん、私のせいであんなにも殴られて・・・」
と刹那も謝ってくる。こんなにも自分が傷つけられたのに、俺のことを想ってくれているのか。
「俺は大丈夫、ちゃんとここにいる」
刹那の不安を少しでも取り除けるように声をかける。
刹那の体を見る・・・・腫れたところもない。外傷はなくなったみたいだ。
かくいう俺も先まで殴られたところは治っているのだがな。
俺はこの瞬間自分に備わった不思議な力の能力にようやく理解した。この能力は・・・・・
「このやろう!よくもやってくれたな!」
後ろでさっき吹き飛ばされた石田が起き上がり、こっちを睨んでくる。
「お前だけは、殺してやる」
と言ってポケットからナイフを取り出す。
おいおいそんなものまで持ってるのか、やばいだろ。
ナイフを俺に向けて向かってくる。
「ひっ・・・・永遠!私のことはいいから!」
刹那が恐怖一色に染まった声で叫ぶ。
とはいえ、刹那を抱きかかえたままの状態なので、俺はそのナイフが間違っても刹那には当たらないようにかばって、背中に刺された。
その一瞬にして場が静まり返る。
「あっ、いやあああああ」
すぐに悲痛の叫びを上げる刹那。
「おっ、おれは、わっ、悪くなっ、いっ」
俺の後ろでは自分が刺したことに動揺し、刺したナイフから手を離す石田。
その瞬間、俺は刹那を抱えたまま一瞬で石田の背後に回り込んで、回し蹴りで蹴り飛ばした。
「えっ!?」
刹那は何が起こったのかわからなくて目を真ん丸にパチクリさせている。
移動した際に舌を噛んでいないかヒヤヒヤしたが大丈夫みたいだ。
石田の方に目をやると気絶していた。死んではおらず、加減は一応できていたみたいだと、ほっとする。
「終わったぞ、刹那」
いつまでも固まっている刹那に声をかける。
やっと気づいたのか刹那ははっとして、体が震えだし顔が次第に青ざめていく。
「さっき、刺さ・・れて・・」
と泣き顔になる、刺されたのが抱きかかえられていた自分のせいだと思っているのだろう。
そんな刹那を下ろして言う
「大丈夫だよ」
と言ってナイフを抜く。そんないきなりすぎる行動に
「抜いちゃだめ!」
と叫び、背中の傷を見るが、
「えっ?嘘、なんで?」
刹那は絶句する。
そんな刹那に振り返って
「ほら、この通り。なんとも問題ないだろう?」
と言った次の瞬間
「よかった・・・・永遠ぁああ」
俺の体は刹那にだきしめられ、顔を俺の胸元に埋めてきた。
「よかったぁああ、っぁああああ。永遠がいなくなちゃうと思うと・・・っあああああ・・・」
そうやって体を震わせ泣きじゃくる刹那の頭を撫でながら、
「大丈夫、俺はいなくなったりしない、ここにいる」
と伝え、俺は撫でるのをやめて、刹那の後ろに手を回し、言った。
「もう、正直になっていいぞ」
刹那の泣くのが止まった。震えは依然と続いている。
「もう、いいよ。辛かっただろう、怖かっただろう、苦しかっただろう・・刹那・・よくがんばったな」
もういいんだと刹那の体を強くけれど優しく、抱きしめる。
他人のためじゃない、自分のために泣いていいのだと
「・・・かっ・・た」
うん、わかってる。だから大丈夫だほら。
今もなお震えが止まらない刹那をぎゅっと抱き締める。
「こわっ・・かっ・・・た・・・いたかっ・・・・たっぁああああああ・・・」
刹那はさっきよりも大きな声で、泣き出した。
刹那は優しい。自分のことよりも他人を心配して涙を流す。
だけど、今はただ、自分のために涙を流してほしかった。
そんな様子にやっと俺も安心できたのか、視界がぼやけてきた。
「俺も、・・・・刹那が無事で・・・・本当によかったぁ・・」
もらい泣きか俺も今までの不安を爆発させる。気づけば俺も涙を零していた。
刹那も俺の背中に手を回して強く抱き締めてきた。
こうして、赤い夕暮れが差し込む教室の中で俺達2人は抱き合いながら泣き尽くした。
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やっとこの状況に一段落つけられました。次回からもまだまだ続きます!




