19.望むもの
今回も暴力的描写が続きます。気をつけてください。
この状況打破まで後1話になります。
瞬間、腹にやつの拳がもろに入ってしまい。俺は石田に殴り飛ばされてしまった。
俺の体に当たった机やいすがガラガラと倒れる。腹部の痛みを気合いで抑えながら石田を睨む。
とはいえ、頭では理解していた。やつには勝てないことを。
そりゃあそうだろう俺とあいつでは運動能力に差がありすぎる。
向こうはサッカー部のエースに対してこちらは運動なんて一般人並みにしかできない。
ただ、許せなかった。刹那をこんなにもボロボロに傷つけたあいつを。そして・・・
「冬海、夏山は俺の女だ。お前が出しゃばるんじゃねえ、お前みたいなゴミが夏山と関わるんじゃねえよ。お前にはきっちりわからせてやるよ」
そう言って俺に近づいてくる石田。
「・・・」
石田の言葉に返す言葉も無かった。自身でもわかっていた。
刹那を傷つけた俺みたいなゴミは刹那とは関わっちゃいけないなんて。だけど・・・
石田は俺の胸倉を掴み、拳を顔の前に構える。
「後悔しろ、己の行動を」
そう言って俺を殴り始める。俺はただ殴られることしかできない。
「っ・・・・永遠!・・・・・永遠!・・・もうやめて!」
刹那が泣きながら訴える。しかし、やつの拳は止まることはない。
刹那の方を見る。あんなにもボロボロに傷つけて、辱めて、泣かして・・・あんな状態になっているのに刹那を助けられない自分になによりの怒りが溢れる。
そう・・これは報いなのだ。俺が刹那を傷つけた。しかるべき罰なのだ。
「ふん、この程度か所詮・・・なんでこんなゴミに俺は」
やつは最後に俺を突き飛ばし俺はその場で倒れ伏した。
「っ永遠!」
刹那が悲痛な声で俺を呼ぶ。
「そいつの名前を言うんじゃねえ!」
叫び散らして、近くにあったいすを倒れ伏す俺に投げた。当然俺は避けられるはずもなく直撃する。
「永遠!もうやめてよ。私はどうなってもいいから!永遠には手を出さないで!」
「・・・」
石田は刹那の方に振り返って無言で歩きだす。
「あんたは最低な男よ。永遠はねぇ・・・ゴミなんかじゃない!不愛想だけど人のことしっかり見てて、誰よりも繊細で優しい・・・そんな永遠を傷つけて私は絶対に許さない!ゴミなのはあんt」
「黙れ!もうあいつの話をするなと言っているだろうが!」
刹那の話を遮り、刹那の髪を掴み上げる。
「っあ・・・」
「この場で教えてやるよ。お前には俺という男が一番だとなぁ!」
刹那の顔が再び恐怖の色に染まる。
俺はその光景をただ見ていることしかできなかった・・・・・・
・・・・・・また、俺は刹那を守れないのか。周りが暗くなり、どこからともなく中1の記憶が映し出される。
やせ細った体に隈のできた目でそれでも必死に笑顔を見せ、そんな刹那に暴言を吐き、傷つけた。
今でも鮮明に思い出せるあの絶望に染まって泣いていた顔が。
次は先日の事故だった。アスファルトの上に大量に流れる血、そしてそれを流して倒れている刹那。そして告げる。
『・・永・遠・・・あり・・が・とう・・・・・だい・・す・きだ・・よ・・・・・・・・』
・・・・・・・・・・・・・そうじゃない!やめろ!俺はそんなことを聞きたいんじゃない!だ・・・・
体を起こせ。足を動かせ。刹那のもとに!
暗闇の中、光が差し込む。眩しくて温かい。
その光源は俺の大好きな世界で一番大切な笑顔だった。
これを見た誰もがつられて一緒に心の底から笑顔になれる・・・そんな・・
そうだ。俺はこれを守りたい。たとえ俺がどうなったとしても!
もう刹那を傷つけさせない!既に傷つけた俺が守ろうだなんて傲慢で愚かなのかもしれない。
これまで守れなかったのに今度こそっていうのも遅すぎるのかもしれない・・・・
それでも・・・俺は・・・心の底から笑った刹那の笑顔がみたい!
次の瞬間、尋常じゃないほどの痛みが襲いかかってきた。
まただ!
今回は最初に腹を、次に左足を、そして体全体を激しい痛みが俺を襲う。
尋常じゃないほどの痛みで意識が飛びそうになる・・・
だめだ!気をもたせろ!刹那を救うまで・・
・・こうして痛みと闘い続けて・・・
目を開けると視界にさっきと変わらない光景が移る。刹那は髪を石田に掴み上げられており、石田は薄汚い手を刹那に伸ばす。
「刹那!」
俺は刹那のもとへ駆け出して、やつの懐に一発を入れ込んで吹っ飛ばした。
そうして倒れ込む刹那を優しく抱きかかえ、もう一度名前を呼ぶ。
「刹那!」




