16.少しは気づいてくれても・・
「はぁ・・・」
と俺は誰もいない部室に1人で佇みながらオレンジ色の空を眺めている。
今日の昼に刹那に言われた通りに待っている。
今朝から同じことをずっとぐるぐる考え続けている・・・刹那次第なのにな。
どうしても考えてしまう。刹那に彼氏ができてしまったら・・・
俺は素直に応援はできないだろう。なにせ俺は刹那のことが好きなのだから。
そして俺は孤独になるだろう。
俺は今学校では基本1人でいるようにしている。まぁ中には突っぱねても構って来るやつがいるが。
だから刹那といないときは基本ずっと1人なのだ。俺はこれでいいと思ってる。
でもなんだかんだ1人というのは寂しいもので本当は友達とかを作ってみたいが、それでも・・・。
ちなみに部活では1人でやる部活ではないので協力はするが、こっちからは干渉しに行くことはない。
それでも近づいてくる奴らがいるのだが。
とりあえず、刹那の帰りを待とう。
そう決めて俺は考えるのを止めて窓から外を眺めた。
ここは教室。
手紙で呼び出されたので永遠を部室に残してここで待っている。返事は既に決まっている。
本音はこんなの無視して永遠と帰りたいが、流石に勇気を振り絞って行動してくれたのにそんな踏みにじるようなことは流石にできない。
ちゃんと断ろう・・・にしてもあの文字はどこかで見たことがある気がするんだけど・・、まぁいいか。
「てか、永遠はやっぱり私のことは幼馴染としてしか見てくれてないのかな?」
と独り事を呟く。
自分の告白の返事の時にわざわざ人を帰りまで待たすだろうか?普通は先に帰らすだろう。
実は永遠を私の告白の返事で待たすのはすでに何回もやってる。
永遠に告白を意識させて、私に告白してしてほしかったりする。
私は自分で言うのもなんだがかなりモテるらしく、今まで数え切れない程告白されて、全て断ってきた。
だから、これだけ告白されまくっていると好きな人からの告白が欲しくなったりするのだ。
それもただ単に私の勇気が無いだけだが。
でも、永遠が私を好きになるはずがないのもわかってる。
私のことをすごく大切にしてくれているけど、それは中一の時のあの罪悪感からだろう。
永遠はクラスでも部活でも自分からは人との関係は全く作らない。友達も作らない。
永遠と関わっているのが私1人であると思うとそれはそれで嬉しいんだけどね。
だけど、昔みたいに色々な人たちの関わりを大事にして、もっと楽しんでほしい。
と思考しているとガラガラァと扉の開く音がしたので後ろを見た。そしてそれを見た私は血の気が一気に引く感じがした。
「夏山」
と目の前にいる彼は言った。彼の名前は石田 健介サッカー部の次期キャプテンとまで言われている。
周りからの評判はいい。協調的で友達も多く、勉強もでき、運動神経もよく、顔立ちもイケメンに入る部類だ。
ではなんでこんな男を恐れるかというと、彼からは以前も告白されている。
それを私はすっぱり断ったのだが、それからというのも彼からの目線が異常に怖く。
若干私を付きまとってくるので、もうこれ以上そういうのも止めて欲しいと前に伝えたのだが、
彼はプライドが高かったらしく、それを折った私はさらに狙われてしまったのだ。
「おい、夏山」
と名前を呼ばれる。体震える。今はただこの目の前の男が怖い。
「俺の女のくせになんでまだあんなゴミと一緒にいるんだぁ?俺の告白を受けておきながらクズとまだいるとは」
「もう、私に関わるのは止めてよ。それに告白はちゃんと断ったじゃない!」
「うるさい!俺はそんなことは聞いてないだろうが!どうしてあんな虫といるのかって聞いてるんだよ!」
「・・・」
こぶしに力が入る。
そうこの男は発言の通りプライドが高すぎて、私を自分の女だと主張してくるのだ。私はそんなモノ扱いする人なんか大嫌いなんだけども。
だけど、今はそんなこと以上に許せないことがあった。
永遠のことをゴミだの、クズだのと馬鹿にされて怒りを覚える。あんたなんかに永遠の何がわかる。
我をついに抑えられなくなり、
「永遠のことを馬鹿にしないで!あんたのほうがクズよ!」
言ってしまった。瞬間しまったと思った。
相手の顔を見ればわかる。顔は鬼のような形相をしており、自分のプライドが傷つけられて相当怒っている。
「夏山・・てめぇ」
声のトーンが一気に低くなり、じりじりと寄ってくる。
私は恐怖で体が動かなくなってしまった。気づけばもう目の前まで迫られていた。
「俺があんなやつよりも下だと?わからせる必要があるみたいだなあ!」
と怒鳴られた瞬間、
「うっ、はっ・・・・」
腹部に強烈な痛みを感じた。私はその痛みでようやく理解した。この男に殴られたのだと。
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