11.自転車と懐かしさと・・・
今回は最後の方にほんの少しだけ酷な描写があります。苦手な方はお気を付けください。
あの、事故から約一週間が経った。
事故に遭った衣類も戻ってきたり、高校2年生としての新たな学校生活が始まった。
今日は金曜日で、今は夕方であり学校の帰り道に刹那から頼まれた買い物に行ったその帰りである。
いつもだったら刹那と一緒に帰るのだが、刹那は吹奏楽部の次期部長候補であり、先輩から次に向けての話があるみたいである。
俺も同じ吹奏楽部なのだがそんな幹部みたいな役職に就くつもりはないので、帰ろうとしたのだが刹那に残って俺も話を聞いていってと言われてしまった。
先輩もいいと言ってたが、引き継ぎの話がメインだろうと思い、身を引くことにした。
刹那はなんか不機嫌になり、先輩は俺と刹那のやり取りを終始ニヤニヤしてみていたが。
「重たい・・・」
もともと2人で買う予定だったのでかなりの量になってしまい、腕が辛くなってきた。
俺の運動能力は平均より少し下ぐらいだ。
だから、いくら吹奏楽部員で重たい楽器達を運んでいるとはいえ、しんどいものはしんどい。
「ちょっと一休みしようかな」
近くの公園に入り、ベンチに座った。一応荷物はちゃんと両手で捕まえておきながら。
すると、近くで小さい女の子とその母親だと思われる2人がおり、女の子の自転車練習をしていた。
その光景に懐かしさを覚えた。
小1の頃のこの時期自転車の練習をしていて、母さんは俺が自転車に怖がるのを優しく励まし、乗れるようになるまでずっと付き合ってくれた。
父さんは仕事で日中はいなかったが、俺が自転車に乗れるようになったと報告すると、自分のことのように喜んでくれた。
そんな両親に俺は何もできなかった・・・してこなかった・・今ですら・・・・・。
ガシャンと大きな音がした。俺は音のしたほうに目を向けた。
すると、女の子が自転車のバランスを崩して倒れてしまったようだ。
女の子は右手の肘から手の平までを擦りむいたようで、擦りむいたところからは血が出ており、
女の子は声を上げて泣いている。
母親も優しく声をかけ、応急処置をしようとしているが、擦りむいた範囲が広すぎて、手持ちのハンカチだけではどうにもならなかった。
女の子の怪我はたいした程ではないが、見ているこちらもゾッとするぐらいだ。
そしてなによりこの怪我が女の子の自転車へのトラウマになってしまいそうでかわいそうである。
トラウマが一度できると、克服しなければならないことは理解しているが、怖くて乗り越えられない。
そして、そんな自分が嫌になる・・・・。
女の子の怪我が今すぐにでも治ればいいのになぁ。と非現実なことを願った。
そんな次の瞬間、急に俺の右腕が何千回とナイフでさされて抜かれたような痛みが襲ってきた。
自分の肘より下に集中し右腕がもがれそうだ。
なんで?とかを考える余裕はなく、ただ拳を固く握りしめた。
ただひたすらそんな痛みと闘い続けて・・・
やがて痛みが治まったので、右腕を確認する。
あれ?なんともなっていない。ナイフで貫かれたどころか、切り傷ひとつすらなかった。
体感では10分ぐらいは右腕が持って行かれるほどの感覚がしたのだが?
周囲を見るが何も変化がない。時計も見たが、10秒ほどしか経っていなかった。
「はっ、女の子は?」
先程の状況を思い出し、2人がいた場所に目を向ける。
そこには驚いた光景が広がっていた。
先程まで擦りむいていたはずの女の子の右手にはそんな跡が一切残っていなかったのだ。
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