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99.罪の意識、言えない気持ち

しばらく刹那視点になります。

時間を少し巻き戻して刹那が倒れて意識を失った次の日で、家を出て行く前日になります。

 ごめんなさい、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・・永遠・・・・


 永遠と無言で朝ご飯を食べ終えた私は「やることがあるから」と早々に切り上げて自室に戻った。


 嘘だ・・・やることなんてない。ただ私にはあの場に・・・永遠と一緒にいる空間に居残る勇気がなかっただけだ。


 私は、まだ永遠の匂いがほのかに残る布団に倒れ込むように寝転がり、「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」とまたひたすら謝罪の言葉を溢し続ける。


 意味のないことであるというのは自分でもわかっていたが装そうでもしなければ私は罪悪感で今にも押しつぶされてしまいそうだった。

 結局謝罪の言葉を並べているようで、それは真に永遠に対する謝罪の言葉ではなく自分を擁護するものでしかないということにますます私の気持ちは嫌になっていく。


 私も能力者だったのだ。


 そのことを自覚したのは昨日の夜、私の怪我を治療した永遠の手を握った際、見てしまったのだ・・・

 いや違う、経験してしまったのだ。


 永遠が私の怪我を治す時に、私が負った怪我の痛みの何倍にも増して永遠にも続くんじゃないかってぐらいの長時間で激しい、死んでしまったほうがマシとも言えるぐらいの激痛を永遠のようにだけど一瞬の間に経験したのを。

 そして永遠の思考の一部が私に流れ込んでくる。


『っはあ!、はぁ・・はぁ・・・・・相変わらず死ぬほど痛てぇ・・・手にはジンジンする感覚がまだ残ってるし・・・そんなことよりも刹那の安全を確認しなきゃ!・・・無事でいてくれ』


 つまり、永遠の能力はただ、人を治して、その次いでに身体強化がなされるわけじゃない。

 怪我した人の痛みを何倍にも圧縮されたものを経験することでやっと治療することができていたのだ。


 つまり、今私が経験したものを信じるならば永遠は私に嘘をついていたことになる。

 だけど、永遠が本当のことを言ってくれなかったのには悲しかったり、怒りたくもなった。


「永遠は私のこと信じてくれてないの?」って。だけど、それらの感情はすぐに別の物に変わっていく。


 私を心配した永遠が私の前にやって来て、声を掛ける。

 永遠の目から見える私の様子は間抜けにも固まっている。だけど永遠はそんな私に『大丈夫か!?』と声をかけてくれる。緊迫とした声音から本気で私のことを心配してくれているのがわかった。


『うん、皿を滑らしちゃって割れた破片で怪我をしたんだけど、一瞬だけ痛いと思って目を瞑ったらすぐに痛みが消えて・・・・って!』


とあたふたとしながら状況を説明する私、永遠は急かすことなく落ち着いて聞いてくれる。

 そして突然何かに気づいたような顔をして目の前にいる私は、


『だから!むやみに能力使っちゃだめ!って言ったでしょ!』


何を言ってるの?私・・・


『だって・・・』


『だってじゃない!・・・・・永遠に何かあったらって思うと心配なの』


心配してくれてるのは永遠の方だよね・・・


『・・・』


『本当に、本当に・・・何もない?・・・もし辛いことがあるんだったら・・・ちゃんと知りたいよ』


 何なのこの女は・・・永遠に辛い思いをさせてるのはお前のくせに、何を知ったかぶったかのような顔でそんな痛々しい顔をしてるの?


この女、つまり私は・・・


 そして私はようやく気づいた・・・私が、夏山刹那が、他の何者よりも永遠を傷つけ辛い目に遭わせていたということに。


痛い、苦しい、辛い、胸が張り裂けそうで、嫌だ、嫌い、こんな私が・・・ごめんなさい・・・


 私には罪悪感でいっぱいだった。そして現実に戻った私は耐えきれなくなる気持ちを減らすようにと、

永遠に謝り続けた。

 そんな私を見て終始困惑していたが。なんのことで謝られているのか一切見当がついていなであろう永遠は理由を私に尋ねてきた。


 言おう、謝らなきゃ、私が永遠を苦しめてた。って。


 だけど、私は言えなかった・・・・永遠の経験から知ったことを言葉にしようとしたら、激しい頭痛が襲ってきて、必死に抗おうとしたけども何度も金属製のハンマーで思いっきり叩かれてるんじゃないかと思うくらいだった。

 意識が吹っ飛びそうだったけど、それでも「ごめんなさい」と伝えるために、最初の頭文字である『ご』をカスカスな声で発せた瞬間、私の頭にはどこからか飛んできたナイフが貫通したんじゃないかというくらいの貫く痛みを機に私の視界は真っ暗になり意識を手放してしまった。


 その後も夢を見た、いや違う、永遠がこれまで経験してきたであろう人生を。


 私との出会い、小学校でたくさん遊んだこと、家族との死別、塞ぎ込んでしまい自分を嫌う永遠、永遠の決意と想い、中学での少し寂しそうな生活、それでも私にはいつも優しく好きと想ってくれている永遠。


 すごく嬉しかった。永遠が私のことをこんなにも想ってくれていたことに・・・。


 だけど、そんな幸せな気持ちはすぐに砕け散った。

私の不注意が原因で起こった交通事故、私の怪我の悲惨さ、誰が見ても助かるはずがないそう結論づけさせるほどの。


 そして初めて使用したであろう能力の代償。

 痛かった、さっきまでの痛みとは次元の違うレベルだった。もはやそれは痛みと形容するには弱すぎて、ぬるすぎて死んでしまったほうが楽という言葉なんかでは言い表せられないほどだった。


 授業後の出来事、永遠の能力の自覚とその使用の代償、永遠が私のために能力を使う度私にも激しい痛みが襲ってくるのと同時に私の心はズタズタに引き裂かれていく。


 それらに耐えきれなくなった私は逃げるようにして現実で目を覚ました。気づけば私は布団の上で永遠が側で手を握りながら寝落ちしていた。


 私を心配して近くにいてくれる永遠の優しさを嬉しく思いつつも逆に私の心に深く傷を広げていく。

私は、永遠の頬をそっと撫でて、体を起こし永遠を私の布団で寝かせてあげた。

 上手く持ち上げられなくてちょっと永遠の体をベッドにぶつけてしまったのはここだけの内緒だ。


 そして朝ご飯を済ませて今に至るというわけである。


 私の能力というのは、どうやら相手の経験を直接追体験することで知ることができる力のようだ。

しかも、そこで知ったことを口にしようとすると意識がなくなるほどの頭痛が襲ってきて私自身では伝えることができないらしい。


 思い返せば、少し前にもこんなことがあった。その時は頭痛はしなかったし、どこかぼんやりとしていて曖昧なものでしかなかったが。

 永遠からの誕生日プレゼントのときも、茶碗蒸しの件のついてもだ。夏休み辺りからその片鱗を見せていたことになる。

 思い返せば最近の沙月の家族についても自然と大丈夫なイメージが思い浮かんだのもこの力のおかげなのかもしれない。


私が永遠を傷つけた


私はそんなことすら自覚してなかった


私は永遠の側にはいられない


私には永遠の隣にいる資格なんてなかった


・・・

・・


拳を握りしめる。私は、覚悟を決めた。


 そして当日に全てのやることを済ませた。色々な人から理解できない怒りやら戸惑いをぶつけられまくったがすべてを黙らせた。


 嘘にまみれた言葉で・・・本当のことを言いたいはずなのに自分の口から出てくるのは嘘の言葉ばかり、それしか言えない私は惨めだなぁと自らを乾いた声で嘲け笑うことしか、もはやできることはなかった。


 そして準備を終えてもう最後になるであろう今朝の永遠の匂いがほのかに残る布団の中で眠った・・・・当然寝られるはずもなく一晩中泣き続けた。


 泣き声が永遠の部屋に聞こえないように暑苦しい布団の中で水分が体からなくなるんじゃないかってほど泣き尽くした。気づけば日は昇りすっかり明るくなってしまっていた翌朝、重たい荷物を持って玄関に行って靴を履いた。


行かなきゃ


 だけど、私の足は玄関から動くことができなかった。頭では動けと命令しているのに体も心も実に素直だった。


 そうこうしている内に永遠が起きてきて私の様子に気づいてしまった。振り返って見た永遠の顔は驚いていて、でもすごく悲しそうな顔だった。

 そりゃあそうだろう、だって私は制服なのに大きなバッグを複数持ち、明らかにただの登校ではないことなんか一目瞭然である。


 私はなんとか笑顔を作って、震える口を必死に動かして、心が痛いのを我慢しながら言葉を紡いだ。


「私、今日でこの家から出てくね・・・永遠と付き合うのも・・・今日でおしまい」

読んでいただきありがとうございます。

面白い?続きが気になるかも?と思った方は評価やブックマークを是非。

今後もよろしくお願いします!


刹那も能力をもっていました。

相手の過去を追体験できる能力です。

ですが知ったことは今の時点では話せません。能力のこともです。

しかし、刹那が何よりも許せないことは・・・

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