1.いきなりの事故
この春高校2年生になった主人公、冬海 永遠は、同級生で幼馴染の夏山 刹那と同居している。
刹那は誰もが認めるほど、かわいい美少女で、家でも学校でも明るくてとても優しい。
永遠はそんな刹那のことが好きだ。
ただ、そんな刹那と何気ない日々を過ごしていければよかった・・そう望んでいただけなのに。
ところが、とある出来事がきっかけで、永遠はある不思議な力を得てしまう。
それ以来2人の運命が動き出す。
一部、現実離れしたものを取り扱っていますが、2人の幼馴染が一緒にいたい。ただそれだけです。
「いってきまーす!ほら、行くよ」
「はいはい、了解」
俺は家の鍵を閉めて、外にいる彼女のもとへ向かい、今日も二人で学校へ登校する。
「それでさ、昨日仲良くなった子にね、『いつも一緒に登校してきたりしていて、冬海君は彼氏なの?』って聞かれてさ」
「それで、なんて答えたの?」
……気になる
「幼馴染で家も近いから、一緒に登校してるんだ。だからそういう関係じゃないよって答えといたよ」
「・・・ふーん、」
予想通りなのだが、少しがっかりする自分がいる。
「ん、どうしたの? あっ、ちょっと期待してた?」
「んなわけない、俺達は少し特殊かもしれんが、ただの幼馴染だ」
少しの間が空く。
「・・・・そうだね、私達幼馴染だもんね、それでさクラスの子が・・・」
刹那はまたクラスの話を始める。そんな他愛のない話をしながら学校へ向かう
自己紹介をしよう。
俺は、冬海 永遠。
そして、隣で今もベラベラと話し続けている彼女は、夏山 刹那。
俺達はA高校に通う高校2年生であり、昨日は始業式、新クラス発表があり、今日は高校2年生2日目である。
既にお気づきの方々も多いかもしれないが、俺は刹那に中学1年の時から片思いをしている。
刹那は誰から見ても納得するほど容姿端麗で、身長は165cmの俺と大体同じであるが、細身で大きいとは言えないものの、出るところにはしっかりと起伏がある。
顔立ちも凜としつつも、笑顔は子供っぽくて可愛く、黒髪で長髪だが、今はツインテールで結ばれており、
動くと揺れるさらさらな髪からは、使っているシャンプーの香りだろうか、ほのかに甘い匂いがする。
膝より少し上まで制服のスカートがあるが、そこから下は、長い純白な肌ががみえる。
そして、明るく、誰にでも優しい性格で、学校でも人気者であり、昨日も新クラス発表で慣れないクラスメイトとの交流だったが、彼女を中心に大きな輪ができていた。
おまけに成績優秀、運動もめちゃくちゃできる。
生活能力も高く、炊事、掃除をはじめ家事もそつなくこなす。
一言でまとめるなら、超ハイスペックな女の子。
また、俺は刹那とはある事情で他の誰よりとも過ごす時間が長く、俺だけしか見ることがないだろう一面を多く知っている。
そんな普段他の皆が見ることはないところもまた、すごくかわいいのだ。
なんだかんだ言ったが刹那は容姿、性格共に可愛く、俺はそんな刹那のことが好きなのである。
「永遠、おーい、永遠ってば、ねぇ聞いてる?」
おっといけない、刹那語りに夢中になりすぎたようだ。
「ちゃんと聞いてるよ。今まで誰かわからなかったけど、クラスの淡海さんが実はテストで毎回学年1位をとるほどの秀才なんだろ?」
「そう!聞いてたんならちゃんと反応してよね」
と刹那が少し頬をふくらませる。
「てか、こんなゆっくり話してていいのか?このペースだと遅刻するぞ」
「えっやばい、少し走るよ」
と駆け出す刹那。
やれやれと息をつき俺も続けて走り出そうと顔をあげたとき、カーブミラーに嫌な影が見えた。
大型トラックだ。
刹那は気づいてないのか、先に進もうとする。トラックも減速する気配はない。
「危ない!」
全速力で追いかける。
「あっ・・」
刹那も今気づいたようだが、体が固まってしまっている。
「刹那!」
日頃は全く動かさない自分の体を叱咤し、刹那のもとへ走る。
よし、この距離なら間に合う、俺はトラックに衝突するかもしれないが、刹那だけは助けられそうだ。
俺は・・・まぁいいだろう。刹那が生きてくれるならそれでいいか。
気づけば曲がり角まで辿り着けていた。
あともう少し、いける!
固まっている刹那を押し出す寸前、俺の体がなぜか前に倒れはじめた。
「えっ」
足下を見る。どうやら、足下にビニール袋があったみたいだ。
おいーーー。
俺の、のばした手は刹那を道路脇に押し出す威力にはならず、少し刹那に触れただけだった。
俺が少しだけ触れた手に刹那が気づいて首だけ動かして俺を見る。俺も刹那を見る。
互いに見つめ合う。
なぜだか、時間がとてもゆっくりに流れている気がした。
もうトラックに当たる寸前だ、全身が早くこの場から離れろと警告する。
しかし、俺達にはどうすることもできなかった。
刹那の顔を見つめ続ける・・・・くそっ、刹那。・・・・ごめん。
こうして、俺達2人は春の朝の暖かな日差しのもとで、トラックによって跳ね飛ばされるのであった。