こんな出会いって、本当に有るんだな?
最終話です。
ラストに驚いてください(笑)
なんちゃって?
最終話なので、区切れませんでした。
長文(2倍)ですが、よろしくお願いします。
ブクマ登録&評価点、4話の誤字報告、
ありがとうございました。
嬉しいです。
助かります。
では、どうぞ。
ピロリン♪
早めの夕食を食べ、くつろいでいたら、テーブルの上に置いていた、スマホに連絡が入った音が鳴った。
スマホの画面を立ち上げ、相手を確認する。
茉莉花だった。
今日アイツは、高校になって友達になったクラスメイトと、昨日から2日間遊びまわると言って喜んでいた。
……ウチの家系の目立つ顔立ちの上、制服の着崩し自由な学校を満喫し、、派手に、ギャルぽっい格好で登校しているのを見かけた事があるが、中身が普通なヤツだと、知るヤツはあまりいない。
話せばわかるんだが……。
それでも、入学初日から友達が出来たと聞いて安心したモノだ。
聞けば、気になった子がいたとかで、自分から声をかけたって、言っていた。
その時、ちょっと暴走したとも言っていたけど……止め役の子も出来たらしい。
メールの内容を見て見ると。
『明日昼休みか、放課後、友達に会って欲しい。』
俺が、アイツの友達に会う?
ポチポチっと。
『何で?』
ピロリン♪
『紹介したいから』
アイツ、何を考えているんだ?
ピロリン♪
『いいから、時間空けてよ。』
……こうなったら、アイツ引かないな。
はぁ、仕方がない。
アイツも、俺の事情知ってて、こう連絡してるんだ。
何か、有るんだろう。
ポチポチっと。
『わかったよ。』
ピロリン♪
『よろしく~!
で、どっち?』
何が?
……ああ、昼休みか、放課後か。
ポチポチっと。
『どっちでも。』
ピロリン♪
『んじゃ、放課後、屋上で。
ぜったい、来てね!』
ポチポチっと。
『わかった。
遊ぶは良いけど、遅くなるなよ。』
ピロリン♪
『わかった~。』
……1年か、楽しんでるみたいだな?
そういえば、あの時の子、受験受かったかな?
階段で落ちそうになった、あの時の事を、深也は顔を真っ赤にし、助けて抱きしめた状況を明確に思い出してしまった。
……あの子、可愛かったな。
間近で見た顔。
抱きしめた時に、感じた石けんの香り。
って、変態か、俺は?
久々に、いとこの茉莉花以外の、女の子の顔。
人に近づく、近づかれるのは、まだ怖いが……あの時は、仕方がないとはいえ、とっさの出来事だったからな。
まあ、もう会う事もないだろう。
俺も、もう忘れよう。
◇◆◇
次の日、教室に入り席に着いて、持って帰っていた教科書など、机に入れていると、白上琢磨のが来た。
「し~んちゃーん、おっはよー。」
……相変わらず元気だな、コイツ?
「ああ、朝練はどうした?」
「今日は、簡単な筋トレと、ランニング。
ソッコーで、終わらせてきた!」
「馬鹿か?
お前は人一倍にやれよ。
ただでさえ、お前、筋肉少ないのに。
それに、お前みたいに、特待生で入った1年とかもいるんだろう?
ちゃんと指導してやれよ。」
琢磨は、口をとがらせ反論する。
「えー、朝から疲れるじゃん?
無理すると、ケガするし。」
「相手にぶつかれた時とか、ケガしない様にする為の、筋トレだろうがっ!
お前は身長も有るし、足も長いから、バランスが悪いんだよ、もっとやれ!」
「えっ?
足長いって、誉めてくれてる?」
琢磨は、嬉しそうに聞いてくる。
「そこじゃねぇよ?
それに誉めてねぇよ!
背が高くて足が長いと、重心が高くなるから、相手に下から当たられたら、体制を崩すと言ってるんだ。」
「そうだ!
山藤、もっと言ってやってくれ!」
琢磨に詳しく言ってやると、琢磨の後ろから、琢磨より少し身長が高く、ラグビー選手みたいなガッシリとした体格が練習着をまとった人物が立っていた。
「先輩?」
「……キャプテン」
そう、この人物は、三年であり、この学校のサッカー部のキャプテンを努めている、宝田保《たからだ たもつ》という。
俺が、まだ小学生で町のサッカーチームに所属していた時のチームメイトの、先輩だった。
もちろん、俺の当事の事も知っている。
中学は別になったが、また高校から一緒になったと、琢磨から聞いていた。
「先輩、久しぶりですね?」
「ああ、久しぶりだ……琢磨から、一緒に入学していたとは、聞いていたんだが、ちょっと、躊躇してしまってな。
だが、よく考えたら、琢磨が常に側にいたなら、変わらなかったな?」
「そうですね。」
「元気そうで何よりだ!」
「ありがとうございます。
ところで、先輩は何故、ここに?」
「おう、そうだった。
山藤と会って、すっかり忘れていた。」
先輩は、額を手で叩き、あーっ、となげく。
「先輩、前みたいに名前で呼んでくれればいいですよ?」
「……そうか?
まあ、わかっていると思うが、コイツを怒りに来たんだ。」
「やっぱり?」
「いや、キャプテン?
俺、ちゃんとノルマ終わらせて、来たんですけど?」
琢磨は首をひねる。
「アホか!
誰が、ノルマ終わらせれば、朝練終わりって言ったよ?
お前みたいに、自由にしてたら、部活の意味ないわ!
それだったら、ただの自主練だろうが?
それに、お前、2年のサッカー特待生だろ!
お前が、そんな事をしてたら、1年が、『サッカー上手かったら、自由にしていい』と思うだろうが!」
そりゃ、そうだ。
「それに、金曜の放課後練習の時も、レギュラーは外でランニングの筈が、お前、途中でいなくなっただろ?
食堂で、1年の女子と話しているという、情報もあがっているぞ!」
「いや、あれは……水分補給のドリンク忘れて、食堂の自販機に買いに行ったんですよ?
そしたら、しんちゃんのいとこのマリちゃんと友達がいて……俺の事を言っていたから、話にいったんですぅ。」
「変な語尾つけるな?
気持ち悪い……って、マリちゃん?
ああ、あの子か!
ウチに、来てたんだな?」
「あれ?
先輩、茉莉花の事、知ってましたっけ?」
先輩、会った事ないはずだが?
「ああ、小学の時、琢磨が、マリちゃん、マリちゃんと、常にうるさかったしな?
それに、試合の時、家族総出で応援来てただろ?
その時、見たな。」
「あー、なるほど。」
「えー?
俺、そんなに、言ってないでしょ?」
琢磨が抗議するけど。
「いや、言ってたぞ。」
「言ってただろ」
2人で、否定する。
「えー?」
「まあ、いいや。
んで、茉莉花は何て言ってたんだ?」
「そうそう、ひどいんだよ?
しんちゃんの、金魚のふんだって!」
「当たっているな。」
「的確だ。」
「2人とも、ひどいでしょ?」
「まあ、そんな事はどうでもいい。
お前の処置をどうするか、だ。」
先輩は、俺をチラリと見て、考えている。
「なあ、深也?
お前、身体鍛えているのか?
結構、いい筋肉がついてる様に、服を着ていても、わかるんだが?」
「あ、わかります?
運動不足はイヤなんで、身体は鍛えてます。
悪いのは、両膝なんで。
両膝も、リハビリ変りに、ボールを蹴ったり、リフティングしたりしてますし、あと、体力作りにゆっくりとジョグと、競歩なみのスピードで走ってます。
やっと、ここまで出来る様になったんですよ。」
「それか、頑張ったんだな……それなのに、コイツは?」
先輩は、琢磨をにらむ。
「しかし、そうか?」
そう言って、先輩はブツブツと悩んでいる。
聞こえるのは、遠慮せず、会いにきたら良かったとか、いや、今だからか?とか言っている。
「深也、頼みがある。」
「何ですか?」
「深也、サッカー部のコーチになってくれないか?」
「コーチ、ですか?」
「ああ、1年の技術面の底上げ、ならびに、琢磨の相手を頼みたい。」
「いや、俺、早く全力で走れないですよ?」
「ああ、走らなくていい。
ボールの扱いや、1年の練習の注意点とか見てやって欲しいんだ。
俺や、監督も見ているが、全部見れないしな……出来れば、そういったところもお願いしたい。」
「はあ、なるほど……うーん、そうだ!
先輩、サッカー部には、バーベルとか、運動機具、結構ありますよね?」
「ああ、有るが?」
「それ、コーチになれば使っても?」
「もちろん構わないが……別に、断って使ってくれても、文句は、って、お前はそういうの遠慮するよな?」
「ええ、そうですね、よくおわかりで。
ウチにも、ダンベルとかは有るんですけどね……そろそろ、もう少し、負荷が欲しくて。
でも、場所とるし。」
「なるほどな……もちろん、使ってくれていいぞ。」
「じゃあ、やってみてもいいですけど……みんな納得します?」
「ああ、この後、みんなに説明して、納得してもらう。
携帯で連絡といっても、今は持って来てないな……昼休みは、学食か?」
「ええ、そうです。」
「んじゃ、今日は一緒に食わないか?」
「いいですよ。」
「じゃあ、今日、昼は学食で……もし、良かったら、今日の放課後からコーチ頼めるか?」
「あー、すみません。
放課後は、何か、茉莉花が、俺に友達紹介したいから、空けとけって言われてまして。」
「そうか、そりゃ、いきなりは無理だな……わかった、んじゃ、昼に!
琢磨も来いよ。」
「わかってますよ!」
先輩は、急いで部室に、着替えに戻った。
「なあ、しんちゃん?」
「なんだ?」
「良かったのか?」
「まあ、無理しなければ、大丈夫だろ。」
「そっか……それより、放課後、マリちゃんの友達に会うの?」
「らしいな。」
「ふ~ん、あの子か~。」
「知っているのか?」
「……金曜日に、会ったから。」
なんか、テンション低いな?
「どうした?」
「んー、別にー。
それ、俺も行っていい?」
「お前、部活!」
「終わったら、ソッコーで倍やるよ。」
「はぁ、んじゃ、昼に先輩にそう言え。」
「そうする。」
ちょうど、その時、チャイムがなり、担任が入って来た。
昼休みに、先輩と会い、監督と、部員から了承を得たらしい。
とりあえず、明日から定期的にコーチをする事になった。
◇◆◇
そして、放課後。
荷物をまとめ、カバンを持ち、琢磨とともに屋上に向かった。
ドアを開けると、すでに茉莉花達は待っていた。
……3人か。
よく見ると、その内の1人は、入試の時の女の子だった。
「あ、来た!
深也、こっちだよ!」
茉莉花が、そう言って両腕を振って、アピールする。
いや、お前達しかいないし、わかってるよ。
「待ったか?」
「そこまで?
で、この子が、茜あかりちゃん!
それと、愛川相子ちゃん!
同じクラスで、仲良くなったの。」
「よろしく。
俺は、山藤深也。
それで……君は、入試の時の子、だよね?」
「はい、あの時は、ありがとうございました。
先輩のおかげで、緊張もせず、合格しました。」
女の子……茜さんは、頭を下げる。
「いや、俺は、何もしていないよ?
君が、頑張ったから受かったんだよ。
合格、おめでとう。」
「ありがとうございます。
でも、私が教室に入る時、応援してくれました。
あの時、私、焦っていて、先輩の事、忘れていたんです。
先輩の声で、冷静になり、試験に向かえました。
あの声を、聞かなかったら、先輩に礼も言えなかったですし、逆に、それで、更に焦っていたと思うんです。
だから、ずっと先輩を探していたんですけど、見つからなくて、茉莉花ちゃん達に話したら、茉莉花ちゃん、いとこのお兄さんだって……驚きました。
でも、もう一度、会えてよかったです。」
もう一度、茜さんは、深く頭を下げた。
「気にしなくて、よかったのに……うん、お礼、ちゃんと頂きました。」
真面目だなぁ。
「いえ……あの、私、先輩の事……小学生の時の事、茉莉花ちゃんから聞きました。
すみません。」
茜さん、また頭を下げた。
本当、入試の時もそうだったけど、よく下げるな?
「いや、茉莉花が話したんだろ?
別に、茜さんが悪い訳ないよ」
「昨日、茉莉花ちゃんが、先輩に連絡して、会ってくれるって聞いて……それから私、ずっと先輩の事、考えていました。」
茜さんは、目をつむり、胸元で両手を組み、なにかを言いよどんだ。
「うん?」
「あの時の先輩の事、茉莉花ちゃんから聞いた先輩の事……先輩の事、考えれば考えるほど、私……先輩の事が頭に浮かんで……私、私……。」
「そっか……ありがとう。
でも、ごめん。」
茜さんが、目を開く。
「俺、君の事、キライじゃないよ。
キライじゃないけど……やっぱり、怖くてね。
君だけじゃ、ない。
君だけじゃないんだよ。
女の子全般が、怖いんだ……だから、ごめん。」
茜さんが、涙を流している。
本当に、ごめん。
「先輩、少しいいかしら?」
今まで、紹介されても、黙礼しかしなかった、もう1人の茉莉花の友達、愛川さんが口を開き、質問をしてきた。
「ずっと見ていましたけど、先輩、逃げてますよね?」
「突然だね……何からだ?」
「わかっているでしょうに……もちろん、小学生の時の事件からですわ!
トラウマになったのはわかります。
私も、茉莉花さんから聞いています。
男性に対しては、ずいぶんとマシになってきたと。
でも、女性に対しは、変わらずとも。
だけど、私は、それに対し、逃げていると思います。」
「待って?
さっきから聞いていたら、しんちゃん……深也は、別に逃げていない。
それどころか、きちんと説明して、断りもいれている。
その子に、向き合っているじゃないか?」
琢磨は、愛川さんの言葉をさえぎり、俺のフォローをしてくれる。
愛川さんは、そんな琢磨を、チラリと見て、もう一度、俺を見る。
「先輩は、この子が、どんな思いで告白をしたか知っていますか?」
「……おい、無視するなよ?」
琢磨は、愛川さんに詰めよる。
「さっきから、うるさいですわね?
あなたは、関係無いと思いますけど?
頼んでも、呼ばれてもいないのに、勝手についてくるなんて……本当に、金魚のふんですわね?」
「なっ?」
愛川さんの暴言に、琢磨は言葉がつまる。
「あなた、先輩の後をついて、先輩を守っているつもりでしょうけど、あなたの行為は、先輩の変化を止めています。
『事件の時、助けてやれなかった』?
『今度は、俺がしんちゃんを守るんだ』?
『俺は、しんちゃんを守るなら、嫌われてもいい』?
ふざけないで欲しいですね?
そんな事、一度でも、先輩に頼まれたのですか?
先輩は優しいから、あなたに何も言わないでしょう。
ですが、先輩の事情に、あなたが出しゃばる必要など、1つも無いですわ!」
何だ?
この子、今まで見てきた様な事を言う?
いつも、俺が、琢磨に思っていた事だ。
違うといった事もある。
だけど、琢磨は聞き入れてくれなかった。
いつしか、俺は、説得を諦めた。
そりゃあ、いてくれて、助かった時も有るさ。
でも、あの時から、琢磨は少しおかしくなった。
まるで許しを得る為の行為。
まるで友達としている為の行為。
だから、いつも俺の側にいる。
昔みたいに、対等な友達で、ライバルな琢磨に戻って欲しい。
やっぱり……俺は逃げていたのか?
「さっきから、好き放題言って……お前に、何がっ「もういいっ!」……しんちゃん?」
「もういい、琢磨。
彼女の言う通りだ……お前は、俺を助けてくれている。」
琢磨は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「助かった時もある。
あるが……ほとんど、嬉しくなかったよ?
誰かが、俺を馬鹿にしようとした時、お前がソイツに突っかかっていき、お前が怪我をした。
俺が、喜んだか?
俺が上手く歩けなくて、転けた時、お前に起き上がらせてくれと頼んだか?
全部、全部、俺が、自分でやらなくてはいけない事なんだよ!
お前が、責任を負う必要なんてないんだよ!
友達で、ライバルであった……昔のお前に戻ってくれよ?
なあ、琢磨?」
俺は、涙を流す。
「しん、ちゃん……俺、俺は間違っていたのか?」
俺の声が届いたのか、琢磨も涙を流して、俺に問う。
「ああ、俺も、お前も間違っていた……間違っていたんだ。」
「そうか……。」
俺達が、落ち着くまで、みんな待ってくれた。
「先輩、続きですけど、話していいですか?」
愛川さんは、俺を見て、ためらいがちに尋ねる。
「ああ、ごめん……大丈夫だ。」
愛川さんは、俺の言葉にうなずく。
「では……まずは、先ほどは、ぶしつけがましい事を言って申し訳ございません。
ですが、先輩が何かを言いおよんでいるのが、わかりましたので、ちょっとつつかせて頂きました。
少しは、先輩の足しになればと……。」
「ああ、ありがとう。
言いたい事、やっと言えたと思うよ。」
「それは、よかったですわ。
まあ、それとは別に、私が言いたかった事は、茜さん……あかりさんですが。
率直に言いますと、彼女。
中学の3年間のほとんどを、ひどいイシメを受けてますの。
その事を、あかりさんから聞き、私も独自にある調査機関に、あかりさんの事を調べて頂きました。」
「ちょっと、待って……相子ちゃん?
そんな事してたの?
あかりちゃんは、知っていたの?」
茉莉花が、聞いていなかったのか、問い質す。
逆に、茜さんは冷静だ。
「うん……後から、聞いたよ。
相子ちゃん、すごく謝った。
『疑った訳ではない。
誰が、何の為に、これからもあかりさんをつけ回すのか、調べたかった』らしいよ?
まあ、いろいろ、調べられたらしいから、少し恥ずかしいけど、私、気にしてないよ?
うん、私、相子ちゃん、好きだし。
あ、もちろん、茉莉花も、ね!」
どうやら、本当に気にしてないみたいだ。
2人に、優しい笑顔をしている。
「ん、んんっ!
そ、それでですけど、その様な、あかりさんですけど、少し対人恐怖症を患っています。
でも、入学初日から、さすがに自分から声をかけれなかったみたいです……でも、それは、私や、茉莉花さんもですけど……頑張って声をかけた私や、茉莉花さんに対して、一生懸命につき合ってくれました。
彼女は人生から逃げなかった……いえ、逆に、逃げたのかもしれませんが、新たな場所で、新たな人生を、新たな友達を作りたいと思い、遠い他県から受験しに来たんです。
先輩、その様な彼女となら、頑張れるのでは?」
愛川さんは、真摯に俺を見つめる。
「せ、先輩……無理しなくても。」
茜さんも、別につき合わなくてもいいと、俺を心配してくれている。
茉莉花は……俺を、じっ、と見ている。
琢磨は、俺を心配しながら、俺の決断を信用している。
琢磨も、憑き物がとれたみたいだ。
よかった。
俺は……。
「確かに、俺は逃げていたのかも知れない。
トラウマを理由に、トラウマに便乗して、けっして琢磨だけの責任じゃない。
単に、俺が逃げていたんだ。
茜さん、聞いてくれ。
俺は、あの時……受験の日、茜さんを階段で助けて、抱きしめた時、君を見て、一目惚れしていたんだ。
でも、忘れようとした。
何度も……熱を出した時、ふと新1年生を見た時、そして、昨日、茉莉花から連絡を受けた時、君の事を思い出した。
でも、忘れようとした。
でも、もう、逃げない。
茜さん、好きです。
何度も思い出すほど、好きです。
面倒くさい、俺ですが……俺とつき合ってください。」
茜さんに向き合い、右手を差し出し、頭を下げた。
「……はい、面倒くさい、私ですが、つき合ってください。
……深也先輩。」
俺の右手を、そっと摘まみ、茜さんは涙を流す。
今度は、嬉し涙で。
◇◆◇
屋上のドアが開き、宝田保が現れた。
「すまん、琢磨が部活に来ないので、探しに来た……んだか?
いったい、何があったんだ?」
宝田が見た光景。
深也と、1年の女子が手をつなき、嬉しそうに笑いながら、涙を流している。
そして、それを見ている琢磨と、久しぶりに見た深也のいとこ、茉莉花、後、見知らぬ1年の女子。
琢磨は、いかにも泣きましたという赤い目で、
茉莉花は、ハンカチで目元を押さえながら、もう1人の女子もとても嬉しそうに微笑んでいる。
いったい、何があったんだ?
とりあえず、琢磨達の方に向かい、訳を聞く。
深也と、手をつないでいる女子……茜あかりという1年が、つき合う事になった。
俺は、深也が女子とつき合う事に驚いた。
深也のトラウマは、根深いモノだった。
理由は知らないが、あの茜あかりという1年、すごいと思った。
しかし、隣にいる1年の女子。
黒く長いストレートの髪に、整った綺羅な顔、スラッとした体型に、上品な仕草。
お嬢様、なのか?
とても、好みだ。
俺は、この様な体格で、昔なら硬派、今なら漢と、まわりから、よく言われるが、そんな訳はなく。
俺は、こう見えて、漫画好きだし、ラノベも読む。
姉から、少女漫画を借り読んでいる。
そんな俺が、好むキャラクターは、言う事はキツイ事を言う時もあるが、友達には、とても優しく、気を使うお嬢様だった。
だから、見かけだけでも、好みのタイプで、少し話した彼女はど真ん中だ。
声、かけてもいいだろうか?
……良し!
「あの、君?
もしよければ、君の名前を教えてもらえないだろうか?」
彼女が驚いた顔で、こちらを向く。
琢磨と、茉莉花ちゃんも、驚いた顔で向く。
「い、いや、突然で、すまない。
まず、俺から名乗るべきだった。
俺は、3年の宝田保だ。
そこにいる、白上琢磨も所属している。
サッカー部の主将……キャプテンをしている。
それでだな?
いきなりで、すまないが、君に一目惚れをした。
もし、君がよければ、俺とつき合って欲しい。
どうだろうか?」
彼女は息を飲み、俺を、じっ、と見ている。
何かを、見定めている?
やっぱり、突然すぎて、駄目だろうか?
俺も、彼女も、お互い、知らなさすぎる。
「す、すまない。
いきなりすぎて、引いてしまうよな?
忘れてくれ。」
俺は、座り込んでいる琢磨を捕まえ、この場を去ろうとした。
その俺の服をつかみ、引き留めようとする手……彼女がいた。
「あ、あの?
先ほどの言葉、本当でしょうか?」
「えーと、一目惚れの事だろうか?
それとも、俺とつき合って欲しいの事だろうか?」
「両方、です。」
彼女は、顔を赤くし答える。
「私は、愛川相子です。
今年、この高校に入学しました。
あの……今の言葉、本当ですよね?」
「ああ、本気だ!」
「えっと、よろしくお願いいたします。」
愛川相子さん……なんと、可憐なんだ?
「うおっ!
やった……君の事を、相子さんと呼んでもいいだろうか?」
俺も、すでに顔は真っ赤だろう。
「はい」
相子さんは、真っ赤な顔で、微笑んでくれた。
「「うそーーー?」」
側にいた琢磨と茉莉花ちゃんは、驚きの顔で、大声で叫んだ。
その声で、2人の世界にいた、深也と、茜さんは驚いて正気に戻り、いつの間にかいた、俺を見た。
「先輩?」
深也が、俺を呼ぶ。
「おう、いや、琢磨が遅いのでな?
見に来たんだ、それでだな?
彼女に出会ったんだ。」
俺は、相子さんを見た。
相子さんは、俺を見た。
「実は、今、彼女、相子さんに一目惚れしてな?
……告白した。
つき合う事になった。」
「はあ?」
深也もまた驚き叫んだ。
「本当?
相子ちゃん?」
茜さんが、相子さんに尋ねる。
「ええ。」
相子さんが、照れながら、うなずく。
「わあー!
おめでとう、相子さん!」
茜さん、相子さんを、讃えている。
いい子だ。
「ち、ちょっと、キャプテン?
あんた、何をやっているんだ?」
琢磨が、正気に戻り、俺に突っかかる。
「先輩、おめでとうございます。」
深也も、俺と、相子さんを祝福してくれる。
「いやー、こんな出会いって、本当に有るんだな?」
俺は、照れ隠しで、そんな事を言った。
4人で、ワイワイやっていると。
「なあ、マリちゃん?」
「……何よ?」
「俺達も、つき合う?」
「はあ?
んな事、あるか!」
「……だよね?」
という、琢磨と、茉莉花ちゃんのやり取りが見れた。
以上で、この話を終わらせて頂きます。
最後まで、呼んで頂き、ありがとうございました。
途中までは、まさかの、キャプテンがタイトル決めとは、思わなかっと思います。
突然に、書きたくなった現実恋愛ですが、皆さまに、どう思われたのでしょうか?
ちゃんと、出来ているでしょうか?
心配です。
最後に、この話は終わりになりますが、
この他にも、長編(現在65話まで)を書いています。
タイトル
『闇属性の為、産まれてすぐに捨てられたらしい…』
というのも書いています。
もし、気になった方は、小説探索で、
『闇属性の』と打って、探索していただければ、
多分、1番目にタイトルが出ると思います。
練習用の作品のつもりなので、重苦しい書き方だと思いますが、よろしくお願いします。
マス シゲナ