山藤 茉莉花
1話目から、評価点を入れて頂き、ありがとうございます。
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読んで頂き、ありがとうございます。
私、山藤茉莉花は、現在中学3年生。
今日は、公立鷹ノ坂高等学校で、入試試験を受けた。
この学校を受けた理由は、家から近いのと、1つ年上のいとこがいる事で決め受験した。
県内でも、公立だが進学校として有名な高校だったので、結構難しかった。
まあ、いとこの深也に勉強を見てもらっていたし、大丈夫だろうけど。
……大丈夫だよね?
受験も終わり、少し家で休憩して、7時過ぎに深也の家に向かったら、深也の家から、深也の金魚のフンの白上琢磨が出てきた。
「なんだ、アンタ、来てたの?」
「おー、マリちゃんじゃん?
久しぶりー、今日、うちの高校に受験だったよね?
どうだったー?
まあ、マリちゃん、頭良いから大丈夫か。
ところで、深也にご飯作りにきたの?」
「……そうだけど、アンタがマリちゃんって呼ぶな!」
「別にいいじゃん!
昔から、そう呼んでいるのに……何、恥ずかしいの?」
琢磨は、からかう様に口元に手を当て言ってくる。
実際、口では勝てないから昔からコイツが嫌いだ。
深也に言わせたら、似た者同士だって言うけど、心外だ!
「うるさい、中に入るからソコをどけよ。」
「今日は駄目だよ。
深也、今熱出して寝てるから。」
「え?
大変じゃん!
伯父達いないから、深也1人じゃん!
看病しなきゃ。」
そんな焦る私を見て、琢磨は笑う。
「大丈夫。
俺、見てたし、さっき目が覚めて、だいぶ良さそうだったし、軽く食べさせて、薬も飲ませたから、今頃寝てるんじゃない?」
「本当?
って、何食べさせたの?」
「バナナ輪切りにしたのと、リンゴ皮剥いて細かくしたのを、ヨーグルトで混ぜて、蜂蜜かけた。」
「何それ、主婦か?
……薬、飲んだんだよね?」
「飲んだ、飲んだ。
あの調子なら、この後、朝までぐっすりだと思うよ?」
「そっか、じゃあ、帰るか。」
私は、振りかえって家に帰る事にした。
「あれ?
信じるの?」
琢磨は、そんな私に対して、目を丸くし尋ねる。
「……アンタが、深也に対して変な事はしないって知っているから。
そんなアンタが、そう言うんだ。
間違いないでしょ?」
そう言って、私は本当に家に帰った。
「……何だ、つまんないの?
俺、結構、好印象じゃん?」
そんな事を言っている、琢磨の声を聞きながら。
次の日、朝一で深也の家に行き、昨日、琢磨が言っていた通り、深也は元気そうで、学校に行く用意をしていた。
ちなみに、私は、すでに自由登校で、学校は休んでいる。
高校は、無事に鷹ノ坂高等学校を受かり、春から高校生だ。
両親は勿論、深也と琢磨からも祝ってもらい嬉しかった。
今日は、入学式だ。
今日から、高校生だ。
登校中、結構見られていた。
まあ、私の格好がアレだからだろう。
私が、可愛いと思った格好をしていたら、いわゆるギャル風になっていた。
喋り方も、それっぽいからね?
中身は、普通だよ……たぶん?
まあ、気にせず行こう!
私は、私だ!
入学おめでとうって書かれている門を越え、クラスが書かれている大きな紙が張ってある板を見て、A~Eまでの5クラスあるうち、クラスはAだった。
さっそく、教室が書かれている通りの場所に向かい、下駄箱で靴を持ってきた上履きに変え、教室に向かった。
教室に入ると、中にいるみんなに一斉に見られた。
その後は、再び目線を外し、知り合ったばかり同士か、同中かどうか、わかんないけど、話を再開しはじめた。
……ちょっと、ムカつくかも?
黒板に席は出席番号順に座って下さいと書かれているので、山藤だから一番最後だ。
後ろの出口に一番近いところだったので、そこに座った。
……話相手がいない。
ちょっと寂しい。
しばらくして、先生が来て自己紹介した。
担任の先生だった。
体育館で行われる入学式に行くため、みんな廊下に並んだ。
入学式は、速やかに終わった。
校長の話も普通な長さで、あっという間だった。
教室に戻り、『あ』から順番に自己紹介が始まった。
『あ』の女の子、1番の愛川相子、2番の茜あかりの2人が、私にとって印象的だった。
愛川相子ちゃんは、お嬢様って感じの綺麗系?な見た目。
腰まである真っ直ぐな黒い髪。
整った顔立ち。
上品で美人だなー。
茜あかりちゃんは可愛い。
少しウェーブした肩まである少し茶色い髪。
アレは間違いなく天然!
目もパッチリ、プルンとした唇、鼻も小さく、ほとんどノーメイク。
ぜひ、友達になりたい!
なれるかな?
後は、先生から簡単な話を聞き、くじ引きによる席替えが始まった。
今度の席は、ラッキー!
隣に、2番の茜あかりちゃんだ!
席替えが終わったら、今日は解散。
話すなら、今だ!
当然、挨拶した。
「あのさ、さっき順番に自己紹介したけど、あらためて、私、山藤茉莉花。
よろしく!」
ニコッと笑ったつもりだけど、大丈夫だよね?
あかりちゃん、目を丸くしているけど……失敗?
「えっと、私、茜あかりです。
よろしくね」
「よろしくー!
私、こんな格好してるけど、中身、普通だし、怖がらないでね?
好きな格好選らんだらコレだし!
私、この学校、服装規定ゆるくて嬉しいんだー。
中学の時、結構色々言われたし、あ、私、別にグレてないし、不良でもないよ!
本当だよ!」
「あ、あの」
「あ、私の事、茉莉花って呼んで?
山藤さんとか、茉莉花さんとか、普段から敬語な喋り方なら仕方がないけど、違うなら、茉莉花って呼んで欲しいな?
あ、茜ちゃんの事、茜ちゃん?
あかりちゃん?
それとも、あかあか?
なんて呼べばいいかな?」
「あ、あの、ちょっと待って?」
「山藤さん、ちょっと落ち着きなさい。茜さんが困っているでしょ?」
そう言われて、私は冷静になり、注意してくれた方に顔を向けると、もう1人、気になった1番の愛川相子ちゃんだった。
「あ……あー?
やっちゃったー。」
私は、暴走した事に気づき、机に突っ伏した。
「あの……茉莉花ちゃん?」
その声を聞き、私は勢いよく上体を上げ、あかりちゃんの手を握りしめた。
「今、なんて?」
「え、えっ?
茉莉花、ちゃん?」
「うわー、ありがとー、うれしー。
あかりちゃん、マジ天使!
って、痛い。」
と、ここで私の頭に衝撃があった。
結構、痛い。
「いい加減、私を見て欲しいかしら?
茜さんも、ハッキリと言ったほうがいいわよ?
こういう子は!」
「あはは。」
「で、あなたは落ち着いたかしら?」
「うん、ごめん……あいあい。」
「いきなり、なに?
あだ名なの?
しかも、あいあい?
……ちなみに、どこからそう呼んだのかしら?」
「愛川のあいに、相子の相があいで、あいあい。」
「なるほど……悪いけど、普通に呼んでもらえるかしら?
私の名前、しっかり覚えてくれているのは嬉しいですけど。」
「んじゃ、相子ちゃん?」
「……まあ、それでいいですわ。」
相子ちゃんは、顔を少し赤くしてそう言ってくれた。
「あ、じゃあ、私も相子ちゃんって呼びたい。」
あかりちゃんも、続いて乗ってきた。
「ええ、構いませんわ、さきほども挨拶しましたが、改めてよろしく。
茜さん。
それと、山藤さん。
私は普段からこういう話し方ですので。」
「うん、わかってる。
……でも、いつかは、茉莉花って呼んで欲しいな。」
私はじっと相子ちゃんを見つめる。
「……努力して、みますわ。」
その視線に負け、相子ちゃんはソッポ向いた。
……ツンデレ、可愛い。
こうして、私は2人と仲良くなれた。
やったー!
次の日からも、3人で休み時間は話したり、お昼ご飯食べたり、楽しい。
入学してから5日経った。
今日も、深也は先に行ったみたいだ。
深也の登校が早い、何時に出ているのかな?
私1人で登校中に、校門の前で誰かを探している風に見えるあかりちゃんを見つけた。
「あかりちゃん、おはよー」
「え?
あ、おはよー、茉莉花ちゃん」
その声に気づいたみたいで、私に気づき挨拶してくれた。
どうやら、私を探してたんじゃなかったみたい。
「誰か探してるの?」
その言葉、驚くあかりちゃん。
やっぱり、可愛い。
「えー、と、うん、そうなんだ。」
照れてるあかりちゃん、マジ可愛い。
「えー、誰、誰?
私に、教えてー?」
「あはは、ここじゃ……ちょっと」
あ、これ、マジだ。
軽い気持ちで聞いたらダメね。
相子ちゃん、また私やっちゃったみたいです。
「わかった。
今日の放課後でも、誰もいないところで……相子ちゃんは、必要?」
私の雰囲気が変わったのを驚いたみたいだけど、頷いてくれた。
放課後、しっかり話を聞こう。
放課後、人数の減った教室で3人で向き合った。
朝、相子ちゃんにこの事を話したら、やっぱり怒られた。
「あのね……私、男の先輩を探しているの」
私と相子ちゃんは、その言葉に意外と思い顔を見合わせた。
「ふんふん、それで?
その先輩の事、好きになっちゃった?」
私は、あかりちゃんが話やすくするために、軽く聞く体制をとった。
「ううん、そうじゃなくて……入学試験の時、実は私、遅刻したの。」
「遅刻した理由は……いいえ、今はいいわね?
とりあえず間に合ったのね?」
「うん、なんとかになるのかな?
全力で走って受付けについたんだけど、始まって10分まではセーフみたいで、受付けしてもらえたの。」
「わかった!
受付けしていた先輩の事が気になったとか?」
私の推理はどう?
「山藤さん。
あの時、受付け担当の先輩は、みな女性でしたわ」
「……あ、そうだったかも?」
あれ?
私、なにか忘れてるような?
「その後、教室の案内に、先生が看板を持った先輩に声をかけて、案内してもらったの」
「……そんな先輩、いたかな?」
私、見てないな……そういえば、深也も手伝いにいってたんだよね?
風邪ひいてたから、私が来るまえに帰ったのかな?
「その先輩、風邪気味だったらしくてね。
私、案内終わったら帰ったていいよって先生に言われてた。」
「それは重要な手掛かりですわね。」
へぇー、他にも風邪ひいていた人いたんだ。
「それで、案内してもらったんだけど、その先輩、足が長くて、歩幅が広くて、結構歩くの早かったの。
でも、直ぐ私が早足で追いかけているのに気づいて、ペースを私に合わせてくれたの。」
「中々の紳士ですわね。」
相子ちゃんは、感心する様に頷いている。
「その時、咳を混ぜなからでも、謝ってくれて、私、遅刻してたから、早歩きでもいいですって、言ったんだけど、焦ってつまずいて怪我しても大変だし、私のペースで行こうって。」
「その気遣い素晴らしいですわ!
何者かしら……私も気になりますわね。」
本当に優しい……深也みたい。
「階段も土足で歩けるようにしているけど、所々で浮いているから気をつけてねって言ってくれたんだけど、私、2階直前につまずいちゃって、バランス崩して後ろに落ちそうになったの。」
「それで?」
私も、話に夢中になり、続きを聞き出した。
「私の驚いた声に、先輩、反応して、腕を掴んで2階に引っ張って助けてくれた。」
あかりちゃんは、その時の状況を思い出したのか、顔を真っ赤にしてうつ向いた。
「気がついたら、私、先輩の胸の中に収まって抱きしめられてた。」
「おおう、それで?」
「どうしたのかしら?」
私達は、夢中だ!
女の子は、やっぱりこういうの好きだよね?
「お互い顔を見合せたんだけど、先輩、うわああーーって後ろに後退って顔を真っ赤にしてた。」
「か~っ!
その先輩、ヘタレか?」
「同感ですわ!
……でも、それが正解かも、ですわ。」
「どうして?」
「考えてみなさい。
試験会場の教室は、2階ですわよ。
しかも、試験中、大きな声で騒いでいたら、先生が出て来るんじゃないかしら?」
「あ、そういえば、試験始まってしばらくで、うるさい声聞こえたかも?」
そういえば、聞きなれた声だったような?
「うん、出てきたよ。
怒られたし、でも、先輩つまずいたのは自分だって言って、先生に理由言ってくれたの。」
「理由?」
「階段のマットか浮いてたって。」
「ああ。」
なるほど
「だから、そこまで怒られる事なくて、逆に先生に心配されたぐらい。」
「それで、茜さん、試験受けられたんですよね?」
「うん、そこで先生、私に気づいて、先輩が受付けで渡されていた、遅刻者受験資格書って紙を先生に渡して、教室に入れてもらえたの。」
「良かったですわ。」
「本当だね、その先輩、ナイスフォローだね。」
「私、急いで教室に入ろうとしたの。
その時、私、先輩の事忘れてたの。」
あかりちゃんが、少し悲しそうに顔をしかめてる。
「でもね!
通り過ぎた私に小さな声で、『大丈夫、落ち着いて』って言ってくれた。
私、焦っていた事に驚いて立ちとまって、先輩の方に向いたの。
先輩、笑顔で……風邪マスクしていたし、髪の毛が長くて目元もよく見えないけど、あれは絶対笑顔だった。
最後に『頑張って』って言ってくれたし、間違いないと思うの!」
あかりちゃんが、拳握って力説している。
……あかりちゃん、めちゃくちゃ可愛い。
あれ?
髪の毛長くて、目元が隠れている?
あれ?
当時、風邪ひいていて、咳をしてマスクしてた?
「あの時の、先輩の言葉がなくて、教室に入って、先輩の事思い出したら、絶対、忘れてた事に後悔して、受かってなかったと思う。」
「……ねぇ?
茜さん、あなた、その先輩に名前聞いてないのかしら?」
「……聞いてないの。
あ、でも、受付けしてた時、先輩、山くんとか、しんくんとか、呼ばれてたような気が?」
まさか?
まさか、まさか、まさか?
「山藤さん?
どうかしたのかしら?
変な顔、しているわよ。」
「私……その先輩、心当たりあるかも」
「あら?」
「本当、茉莉花ちゃん?」
「当時、入試の手伝いをしていて、風邪をひいていた男の先輩で、山ちゃんとか、しんくんとか呼ばれていて、長い髪の毛で目元を隠す?
ねぇ、あかりちゃん、もつ1つ聞いてもいいかな?」
「なにを?」
「身長は、どれくらい?
細いけど、結構、筋肉質とか?」
「1つじゃないわね。」
「身長……170センチくらい?
もうちょっと、あったかな?
筋肉質……そうかも、結構、しっかりしてて、力強かったもん」
「……じゃあ、ほぼ間違いないかも?
その先輩、山藤深也……私のいとこの兄ちゃんかも?」
「……いとこ?」
「うそ?」
「だって、アイツ、あの日、ご飯作りに行ったら、熱出してたらしいし?
入試の手伝いどころか、よく先生に手伝いを頼まれるらしいし、髪の毛で目元隠しているし、でも、私、あの日、受付けで姿見てないんですけど?
これって、どういう事?
って、痛い」
「落ち着きなさい」
数日ぶりの相子ちゃんのチョップは痛い。
「あなた……パニックになると口がよくまわるのね?
茜さん、こういう時はこうすればとまるみたいよ。」
……相子ちゃん、私、昔の機械じゃないよ?