第九十四話 再燃しそう……
お読みくださり、ありがとうございます。
どら焼きにハマっていたことがある。
過去形で語っているが。
今でも、けっこう好きだ。
東京の名店のどら焼きを食べてみたくて。
平日に休暇を取って、東京まで買いに行った。
土日は休みという強気な商売をしている和菓子屋さんだった。
念願のどら焼きを買って食べたが。
味は、フツーだった……
以来、どら焼きを買いに東京に行くことはなくなった。
それでも、浅草に行くと、亀十のどら焼きを買ってしまう。
粒あんのスタンダードなどら焼きも。
生クリームとか、変わり種のも平等に好きだ。
だが、バター入りと名乗りながら。
材料がマーガリンなのは、許せぬ。
山形市の老舗、榮玉堂のどら焼きをいただいた。
モンブランどら焼きが有名だと聞いていたが。
今まで食べたことはなかった。
いただいたのは、宇治抹茶どら焼き。
粒あんに抹茶生クリームが入っている。
食べ終わったとたんに、思った。
買いに行かねば。
一瞬のうちに、脳内で旅行計画が出来上がる。
今の山形(真夏)なら。
山形美術館に寄って。
冷やしラーメンか冷たい肉そばを食べて。
佐藤屋さんのお菓子も買っておきたい。
榮玉堂は、店頭販売のみなのだ。
山形市に本店が。
宮城県泉区にカフェがある。
宮城のどら焼きといえば。
「あんこや」さん。
四角いどら焼きで。
粒あんがぎっちり詰まっている。
しかし、宮城で優先すべきなのは。
あんこじゃない。
仙台駅に着いたら、ずんだシェイクを買おう。
村上屋餅店のずんだ餅も外せんな……
ずんだは好みが分かれるので。
苦手な人は、パスしてもかまわん。
萩の月か、支倉焼を買うが良い。
いかん。
またもや脳内で旅行計画が浮かんでくる。
どら焼きのための旅行はしないと誓ったはずなのに……
訂正しよう。
美味しいかどうかわからないどら焼きのために旅をするのは、ナシだ。
確実に美味しいとわかってるどら焼きのために旅をするのは、アリだ。
地元にも、すんごく美味しいどら焼きが存在する。
ただ、山奥にあるだけ。
往復二時間かけて、100円のどら焼きを買いに行くのって。
旅行に行くより、かえって難しい……




