第百六話 本の読み方がわかりません……
お読みくださり、ありがとうございます。
図書館で借りた本の返却期限が来た。
まだ読み終わってなかったので。
貸出延長の申し込みをしよう。
ネットでポチッとするだけで。
借出期限が2週間延長される。
便利な世の中になったものよ。
ところが、この仕組み。
誰かが、予約を入れると。
延長不可になる。
誰も読みたい人がいなかったら。
延長できるけど。
誰か読みたい人がいて。
リクエストが入ってると。
期限内に返さなきゃならない。
読みかけの本に。
予約が入ってる。
なんてこったい。
急いで読み終わって。
期限内に返却したけど。
あの本を読む人間が。
自分以外にもいるということが。
ちょっとうれしい。
「パムクの文学講義」は。
ノーベル文学賞受賞作家が、ハーバード大で講義したもの。
頭のいい人が、どんな風に本を読んでいるか。
垣間見ることができる。
パムク氏絶賛の。
トルストイの「アンナ・カレーニナ」は。
夫と幼い子供を捨てて、若い男に走った女の話。
アンナは不幸になるが。
ちっとも可哀想に思えん。
それはさておき。
パムク氏の「いいね!」のポイントが。
自分と違いすぎて。
別の本じゃなかろうか、と疑うレベルだ。
同じ本を、読んだんですよね!?
パムク氏の読み方が正解なら。
自分は、リンゴの皮だけむいて。
中身を齧ってないようなカンジだ。
字が読めるからといって。
本が読めるわけじゃないのだな……
すまんかったのう、アンナ。
でも、君とは仲良くできない。
若くて。
美人で。
教養があって。
魅力的でも。
自制心がないのは、ちょっと……
「真実の愛」に出会ってしまったから。
しょうがないかもしれんが。
そういえば。
モテ人生を歩んだとある女性作家。
借金トラブルで逃げ回っていた頃。
ご近所で麻雀やってる音を聞いて。
男と別れたことよりも。
潜伏中で麻雀ができなかったあの時が。
なにより辛かったと、述懐しておった。
八十過ぎても、雀卓を囲み。
しばしば徹マンし。
九十八まで生きた。
愛や恋に囚われる女よりも。
とらえどころのない女の方が。
楽しそうだ。
「俺と麻雀、どっちが大事?」と聞かれたら。
「麻雀」と、彼女なら即答しそうだ。
男より麻雀。
それもまたよし。




