第六話です。
ケース2:しおたひな(2/2)
ぼく「フヒヒッwひなちゃんは『ぷいきゅあ』のだれが好き~?w」
ひな「おねえちゃん・・・」ギュッ
田中「ひなちゃんが怖がってます。」
ぼく「えぇ・・・」
ママ「^^」ニコニコ
ぼく「席外しますね・・・」
ぼくはマンションの近くの公園でため息をつく。別に仕事がうまくいかないわけでもない、12歳の女の子に言われない軽蔑を向けられる辛さ、刺さるものがある。すると背後から男の声に心配された。
???「浮かない顔してどーしたあ??」ガハハww
ぼく「いや、悪意のない悪のほうが刺さるものだなと思いまして・・・」
???「ぶわっはwwあくのでない煮込み料理はないってもんよwww」ガハハwww
ぼく「んあ?なんだ佐藤かwまた肉を買いに来たのか?」
佐藤「そんなとこだなーwwなんか悩みあるなら言えよw聞いてやんよおww」ガハww
ぼく「いや、子供に好かれる方法がわからんくてな・・・w」
佐藤「そんなもんわらっときゃwwwなんとかなるぜいwww」ガハガハwww
こいつは、自分がイケメンだからそれで許されているのを理解していないのだろうか。仕事を忘れ、いろいろ話し込んでしまった。
ぼく「佐藤はなんでそんないいやつなんだ・・・?」
佐藤「はっwwぼくにだけだよwww」ガハハww
ぼく「うぇ?それってどういう・・・///」
佐藤「覚えてないのか?wぼくは昔おれに数学教えてくれたじゃんかよwww」ガハハww
ぼく「えと、中学の話だよね・・・?それ」
佐藤「そうだぞw物覚えの悪い俺にお前は何度も教えてくれた、いまでも感謝しているぜw」ガハww
ぼく「フヒッwおおげさすぎじゃんw」
まさか佐藤が中学校の本人もよく覚えていないようなことで、恩返しするような義理堅い奴だとは思わなかった。すると佐藤は急にまじめな顔になり語り始める。
佐藤「おおげさなんかじゃあないさ、あのあと俺は県内でも有数の進学校に進学できた」ガハハ
佐藤「旧帝大にも入学できた。中学の時お前が大嫌いな数学を教えてくれなかったらこの人生はなかったさ」ガハ
ぼく「え、そうだったのかよ」
佐藤「今でも覚えてるぜ。お前が言ってたこと『解はわからないままだからわからない』ってな」ガハハ
ぼく「うわぁ・・・」
過去の自分への恥ずかしさと後悔で例の発作が起こる。汗が止まらない。心臓が3倍速で波打つ。
そんなぼくを気にも留めず佐藤は追い打ちをかける。
佐藤「こんなことも言ってたな、『近道すれば狂いだす。一つ一つコツコツと答えに近づける』なんて」ガハハ
ぼく「あああ!もうやめてくれええ!!」
佐藤「ははw恥ずかしがるなよw俺はニ〇チェやシェ〇クスピアなんかより中学の同級生に2回も人生を救われたんだから」ガハハ
ぼく「も、もういい!し、仕事に戻るからっ!」
佐藤「ああwww悪いな長話しちまってwww」ガハハwww
羞恥と後悔でいたたまれなくなったぼくは、逃げるようにその公園を後にした。腕時計を見るとひなちゃんのプログラムの時間はとっくに過ぎていた。
田中「どこいってたんですか。もう対話訓練終わってますよ。」
ぼく「ご、ごめんなさい・・・」
田中「早く乗ってください」
ぼく「はい・・・」
ぼく「ただいまー」
クロ「にゃーん」
クロにご飯をやり、ニートスレを巡回してベッドに入る。ふと今日のことを思い出す。羞恥心にかられない範囲で、だ。言っちゃ悪いが、佐藤が旧帝大に入れるほどの頭があるとは思わなかった。
人生はどこで好転するのかわからないってことか。
ぼく「なんでファミレスの店長なんだ?」
別にファミレスの従業員を否定するわけでもないが、そんなにいい大学を出たやつならもっともらしい仕事がありそうなものだが、とふと考えてしまう。まあ今日は寝よう明日もあるしな。
ぼく「ウヒヒッwwおいたんと『ぷいきゅあ』応援しようねっww」
ひな「おねえちゃん、おじさんこわい・・・」ギュッ
田中「ぼくさん、ひなちゃんが怖がってます。」
ぼく「」
ママ「^^」ニコニコ
ぼく「席、はずします」
もう6回目の訪問だがなつかれない。この顔面では女性はおろか子供にすら好かれないということを理解した。マンション近くの公園でひまをつぶす。ひなちゃんのプログラムではぼくは不要らしい。
佐藤「おwwやっぱぼくじゃないかww」ガハハww
ぼく「あ、佐藤・・・」
佐藤「先週と同じ雰囲気かもしてるなあwwww」ガハガハwww
ぼく「いや、もう慣れっこさ・・・」
佐藤「元気出せよwww」ガハハノハwww
スーパー(というより商店だが)の向かいのこの公園は佐藤とのエンカウント率が高い。嫌なことではないのだが。
ぼく「佐藤はなんでファミレス店長なんかやってんだ?」
佐藤「んえ??話してなかったっけwww」ガハハww
佐藤「最初は意外とうまくいってたんだ・・・ww」ガハハw
かなり失礼極まりない質問だったが佐藤は笑いながら語ってくれた。
どうやら某旧帝大学を卒業後、即結婚、調子に乗って起業し、それがおじゃんになって借金をこさえて嫁と子供に逃げられたのだとか。目の回るような出来事だったはずだろう。佐藤はへらへらと冗談交じりに話してくれた。
佐藤「大学を卒業するころにゃあwお前が教えてくれたことも忘れちまったんよw」ガハw
佐藤「近道、しちまったのかなぁ・・・w」ガハハ・・w
だが、佐藤の語り口調にはいつもの元気はなく、どこか寂しそうだった。
佐藤「そんで路頭に迷っていた俺はファミレスのバイトからコツコツ、やり始めたんよw」ガハハ・・w
佐藤「どんなに自分が情けなくなっても、遠い昔のお前の言葉に励まされてたってわけよw」ガハハw
その佐藤の何とも言えない表情を見て、ぼくは語らせてしまったことに少し罪悪感を感じてしまう。でも倒産したときの借金もあと少しで全額返せるそうだ。
佐藤「今じゃ、子供の養育費だって入れてるんだぜw」ガハハ!w
心なしかこの一言が一番強がっているように見えた。金には困っていない、というよりもできるなら修復したいのだろう。家族との関係を。
ぼく「子供とは・・・」
佐藤「十年近く会ってないなぁw顔も覚えてないだろうよww」ガハハww
ぼく「佐藤はそれでいいn・・・」
??「こんなところにいましたか。ぼくさん、さぼるのも大概にしてください。」
ぼく「あ!た、田中さん!?」
田中「ひなちゃんの時だけさぼりすぎですよ。」
佐藤「ッ!?」
ぼく「あっ、いだいいだい!」
田中「給料泥棒ですよ。」
何か佐藤に言ってやりたいところで田中さんに見つかってしまう。田中さんにぐいぐいと腕を引かれ佐藤を見る。
いつもの笑顔で笑っていた。
でもぼくには、やはりどこか寂しそうに見えた。気休めでもいい。言ってやらなければ、なにか、恩人を救うんだ、などとおこがましい感情ではない。ただ何か言わねばならないような気がしたのだ。
佐藤「・・・ぼくwお前の相方w美人じゃないかww」ガハハww
記憶なんて定かではない、ただ中学の時と同じ表情をしている気がするんだ。どこかやるせなくて、諦めてしまっているような・・・。
そうこうしているうちに佐藤との距離は広がっていく。なぜか湧き上がる焦りの中でぼくは佐藤に言葉をぶつける。
ぼく「佐藤!わからないままじゃわからないっ!解は・・・!一つ一つコツコツと紡いでいけばいい!」
ぼく「・・・家族だってそうだとおもう!!」
田中さんに手を引かれる去り際、家庭なんて持ったことのないぼくは、中学時代をコピペしたような臭いセリフしか吐くことができなかった。そんな佐藤はいつものように笑っている。
だが、寂しそうだった表情はなんだか納得しているように見える。中学生が難問の解を導き出した時のように・・・きっと昔もあんな顔をしていたんだろうな、だといいな。
ピンポーン
??「ひ、ひさしぶり」ガハ・・・w
??「!?・・・ひさしぶりね」ニコッ
??「ママ、だれ・・・?」ギュッ
??「大きくなったな・・・ひな」ガハハ・・
つづきます。




