祝日
「先輩!明日は、クリスマスですよ!」
『だからどうした?』
「あっ、その前に読者の皆さんに私たちを紹介した方が……」
『やめろ、メタるな』
「はーい、じゃあ、先輩、改めて、明日はクリスマスですよ(棒)」
『(棒)を発音するんじゃない、それは棒読みしろという意味だ。では、改めて、だからどうした?』
「えっ、先輩!クリスマスですよ、嬉しいですよね?」
『何故だ。幸福になることを強制される日が何故嬉しいんだ』
「いや、幸福を強制されるのっていいことでは?」
『はっ、これだから、愚民は』
「なんて顔してるんですか、主人公のしていい顔じゃないですよ。まぁ、そんな新たな一面が見られて私は幸せですけどね」
『待て、そもそもお前、男だろ』
「いやいや、それを言うなら先輩こそ女でしょ」
『そうだったか?』
「先輩、そんなに胸部装甲があるのに何言ってるんですか」
『すまんな、恋愛する気がないから、性別を忘れていた』
「いや今、私の性別指摘しましたよね?他人の性別めっちゃ気にしてますよね?」
『まぁ、良いじゃないか。話を戻そう。幸せなんてそこらへんに落ちているモノをどうして強制されなければならないんだ?』
「えっ、落ちてないですよ。だからみんな必死に探して……」
『はっ、これだから愚民は』
「先輩、顔顔」
『ええい!グニグニするな!……ゴホンッ、落ちているだろう。例えば、挨拶をする。おはよう』
「はい、おはようございます」
『すると、このように返答がある。幸せだろう?』
「えぇ!普通のことですよね!?」
『その普通が幸せなんだろうが。健常者は障害者を見て、不幸そうという感想を抱くのは普通ではないからだろう。つまり、普通は幸せである』
「あっ、確かに。いやいやいや、それでも主観的には普通以外のなにものでもないですよ」
『それは、人間の我儘だろう。有限の世界に生きておいて、無限の幸福を欲しがるのが間違いだ。仏教も言ってるだろ、諦めろって』
「いや、なんか違います。私、仏教思想詳しくないけど、たぶん違います!」
『そうか?だが、届かないモノを求めるくらいなら、その場にあるモノで満足する価値観を養うべきだろう。クリスマスだからと理由づけしなければ、幸福になれないものなど死んでしまえ!』
「先輩、顔がやばいですよ。私怨ですか?私怨ですよね?」
『違うから、グニグニやめろ。つまりだな、特別な日なんて存在しないんだ。すべては普通の日であり、故に幸福なのだ』
「いや、それクリスマス祝わない理由になってない」
『なっているだろう。特別な日があると錯覚しているから、普通の日に幸福を拾おうとしないで、不幸だ不幸だと無責任に嘆いているんだろう』
「むむ、確かに。取り敢えず、先輩」
『なんだ?』
「そんなことより、プレゼント下さい」
『自分で買え』
「そ、そんなー」
『繰り返すが、お前、男だよな?』
「わー、先輩が性差別するよー、えーん!」
皆さんは祝日を素直に祝いますか?