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8/12

裁判所と呼ばれる家で④ 7/2019に向けた、ある年の10月より

5メートルほど進むと、廊下は左に折れ、折れてまたすぐに右へと曲がった。

迷子になるほどではないけれど、親切ではない造りの家だなと思った。

廊下には、部屋番号の書かれたドアが並んだ。

ホテルには見えない。

事務所? 下宿? 病室? それとも牢獄?

とにかく廊下は曲がり角が多いから、鉢植え搬入の際は気を付けないと。

塗りの壁を汚したら大変だ。


部屋と部屋の間、柱と柱の間にガラス戸が現れた。

戸が半分放たれていて、ペンキの禿げた白いガーデンチェアが

ドアキーパーにされていた。

扉に近づき、ガラスを軽くノックした。


「お世話になります、ご注文のお花をお届けしま、」


異様な空気に言葉をとめた。

ガラス戸の奥に、白い塊が揺れた。

温室には色がなく、

曇り空の奥に潜む太陽と密談したかのような、

秘められ、集積された温かさに室内は満たされている。

そして、廃れていた。


鉢植えという鉢植えは枯れ、

どうにか生存しているのは、ふてくされて硬くなったアロエ鉢のみだった。


白い塊はモゾっと蠢いて、僕の方に向きながら立ち上がった。


女の人だった。

顔が腫れて、病気なのかケガなのか、まぶたが少しめくれていた。

白いワンピースの、女のひと。

年齢は30歳くらい。


「いつも社長に来てもらってるんだけど。」


暗くて低い声だった。

インターホン越しに聞いた声の主には違いないが、

怒っている、ように響いた。


「すみません、すぐ搬入しますんで」


僕は踵を返し、社用車へ戻った。


まだ続きます。

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