死と文通
彼は思っていたよりも幼かった。あることをきっかけに、僕はある男性と文通をする仲になった。その男性が手紙の中で、一度僕に会って話をしたい、と書いたので僕はその人と会うことにした。僕は少し遠出をして、示し合わせた場所に時間通り待ち合わせを果たした。
「僕、君のこともっと大人かと思ってたよ」
「なんでですか?」
「文字が綺麗で、文体も大人びてたから」
近くにあったカフェに入るなり僕が言うと、彼は本当に嬉しそうに笑った。
「ぼく、あなたはもっとガサツな人だと思ってたんです」
「え?どうしてまた」
「言葉選びが荒かったから。でもただの不器用な人みたいですね」
そう言って、彼は形のいい目を細めて楽しそうに微笑んだ。随分と色白で、華奢な彼は年齢よりずっと落ち着いた態度だった。きっと彼は高校生くらいの年齢であろう。僕が高校生だったときは、もっと騒がしかったように思う。
「ぼく、そろそろ病気が悪化してしぬんですって」
随分と突然な話に、僕はただ驚くほかなかった。そんな重たい話をするには、僕達はまだ会って時間も全然経っていなかったし、彼の話し口では他人事すぎる気がした。彼が年齢よりもずっと大人びているのは、死を受け入れているからなのだろうか。
「ぼく、きみがしんだらいやだなあ」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
さみしげに微笑んだ彼は、とても美しく儚げであった。
それからほどなくして、僕と彼との文通はおわった。彼からの返事がぱったりとなくなったのだ。会ったのはただ一度きりだったけれど、、僕はなんとなく、彼が未だ僕が辿り着けないような遠いところに行ってしまったのだろうと思う。