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戦国生産無双伝!  作者: 大野半兵衛
結婚とミズホ統一
21/68

021_都落ち

 


 ロイド歴3884年1月


 京の都にイシキ家が進軍したとタナカ衆から報告があった。そのことを察知したタナカ衆が母上の実家であるカモン家と、アズ姫の実家であるホウオウ家にお知らせし、共に無事京の都を出ることができたと報告を受けた。

 カモン家はアズマ家を頼ってこっちに向かっているとも聞いたが、ホウオウ家は王を連れて北上したとも報告があった。

 恐らくホウオウの舅殿はアサクマ家を頼るつもりだろう。アサクマ家は三ヶ国を治める大貴族だし、王の妃の1人はアサクマ家出身だからだ。

「さて、アズ姫に何と言おうか……」


 思わず呟いてしまったが、タナカ衆の頭領であるダイトウ・タナカは何も聞いていないと言う感じでスルーしてくれた。


「引き続きカモンの伯父上とホウオウの舅殿の動向、それにイシキとミナミの動向を注視してくれ。必要であればカザマ衆を動かす。人手は足りているか?」

「問題ありません。我らタナカ衆のみでこと足りまする」

「ならば良し。それと、すまぬが伯父上と舅殿に銭を届けてくれ。急なことで手持ちが寂しかろう」

「はっ!」


 カモンの伯父上には100カン、ホウオウの舅殿には500カンを用意してダイトウ・タナカに持たせた。

 伯父上は近々このミズホに来られるだろうから100カンもあれば問題ないと思うが、舅殿はアサクマ家を頼るようだし、何より王がご同道しているので、何かと物入りだろうから500カンを用意した。

 しかし舅殿は雪深き北へ向かうとはチャレンジャーだな。王が寒いとか我儘言わなければいいのだが。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ロイド歴3884年2月


 ホウオウの舅殿からお礼の手紙と品が届いた。ダイトウ・タナカに持たせた銭がありがたかったと感謝の手紙だ。俺が思ったように何の準備もせず京を飛び出したから手持ちが寂しかったそうで、大変助かったと書いてある。

 そしてお礼の品が俺にとっては喉から手が出るほど欲しかった物で、俺はそれを見た時飛び上がって喜んだ。

 どうやら舅殿はアズ姫から俺がこれをほしがっていると聞いていたようでこの品をお礼としてタナカ衆に持たせたようだ。

 舅殿から頂いたお礼の品の中には前世の日本に似た図が描かれていた。つまり『ワ国の地図』だ。


 しかし日本によく似た風土だと思っていたが、本当に日本だったとは。予想はしていたがここまで地図が似ているとは思っていなかった。

 俺が舅殿から頂いた地図は前世の地図のように地形や道路などの情報の記載はない。大まかな形と細かく区切られた国の名が記されているだけの、昔の縮尺など無視された地図と同じように本州、四国、九州がしっかりと記載されていて、蝦夷地(北海道)のことは記載がないものだ。それでもこれは俺にとって非常に重要な情報なのだ。

 この地図から想像するに西にはユーラシア大陸があり、はるか西にはヨーロッパ、さらに西にはアメリカ大陸があるのではと、心が躍る。

 まぁ、今から外国のことを考えても埒が明かないので、自分の足元を固めるのが先決だ。


 地図によるとミズホの国は京の都のあるヤマミヤの国(山城)からアワウミの国(近江)を挟んで隣になる。つまり前世で言う美濃の国だ。斎藤道三が治めていた美濃の国である。

 ミズホの国をアズマ家と三分割しているクニシマ家とマシマ家との位置関係からすると現在アズマ家が治めている地域は西部なので岐阜市より西側の西濃地域の三分の二程度だと思われる。

 最大勢力のマシマ家が岐阜市を含めた西濃地域の三分の一と中濃全域、さらには東農の一部を支配していて、クニシマ家は東濃の七割程度を治めていると思われる。


 美濃の国と言えば岐阜市にある稲葉山城、この世界では金華城だ。難攻不落の堅城と言われたが後に羽柴秀吉に仕えた竹中半兵衛がたった十数人で落とした話はよく知られているだろう。

 そんなことよりもだ、この地図によって俺の進むべき道が明確になった。

 織田信長が尾張の津島の港から得られた莫大な富によって、傭兵を雇い尾張・美濃・伊勢・近江と勢力を広げ天下を統一する寸前まで行った。やっぱ港が有ると無いとでは全然違うのだ。

 尾張方面に行くと太平洋側に出て紀伊半島を回って堺、そして瀬戸内海を通り博多に出てから大陸と貿易となる。それに対し日本海側なら直接大陸と交易ができる可能性があるのがこの地図で分かった。


 確か前世の記憶では明(中国)は貿易を許可していたのが大内氏だったし大内氏が滅ぶと交易を絶ったなんて聞いた記憶がある。ただ抜け道もあり確か倭寇によって貿易が出来ていたはずだが、明はそれを禁止したはずで……。イカン、イカン、これはあくまでも日本の戦国時代のことで、この世界に当てはまるかは分からない。

 夢は広がるが、今はミズホに集中しよう。


 キシンはミズホの国を再統一したいと言っている。ミズホ一国を治めておくのはいいことだろう。地盤があると無いとでは安心感が違うし。

 キシンには早々にミズホを治めてもらって、海のある終わりや若狭も取ってもらおう。もしキシンにミズホ以上の欲がないのであれば俺が独自に取りに行くか……いや、身一つで日本海に出て俺のスキルで船を創って大陸に渡るってこともありか?

 取り敢えず、キシンがミズホ以外を望むように誘導するとしよう。

 ……あれ? 俺って何で大陸に拘っていたんだ?


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ロイド歴3884年2月


 カモン家の一行が大平城に到着された。当主のフダイ・カモン伯父上は長旅でお疲れのようだ。


「初めまして、麿(まろ)がフダイ・カモンでおじゃる」


 おおおおおお、おじゃるマロ、だっ!

 顔を見た時、マロ眉していたからまさかとは思っていたが本当に生息していたんだ、おじゃるマロ!

 俺は希少な生き物を見る目で伯父上を見つめる。……ことはできなかった。あのマロ眉を直視すると笑えてくるのだ。伯父上の顔を見て笑ってはさすがに失礼だ。


「キシン・アズマで御座います。これは嫡子ソウシンで御座います」

「おお、ソウシン殿か。此度は助かったでおじゃる。ソウシン殿が用立ててくれねば野垂れ死にでおじゃった」


 笑うな、笑うな、笑っちゃダメだ。


「伯父上様に置かれましては無事のご到着、祝着至極」

「ほほほほ、賢い子や。コウや、良い子を持ちましたな」

「はい」

「ほほほほ、アズマ家は安泰よのぅ」


 部屋に帰った俺は思いっきり笑った。それはもう横っ腹が痛くなるほど笑った。十仕家は御公家様設定のようだ。こうなるとホウオウの舅殿も……考えるのを止そう。笑い死ぬ。


 今回、イシキ家は京の都を手にしたが、ミナミ家が動いていてどうなるか分からない。ミナミ家の動きが遅いのは周辺国にも出兵を促しているからだろう。可能性は低いがキシンの所にも出兵要請があるかもしれないな。

 だが、この状況はいいかも知れない。キシンはどうやらミズホ以外には野心がないようなので、俺が海を目指すにはキシンをその気にさせるか、俺がキシンから離れるかの二択となる。

 だが、この状況を利用すれば欲がないキシンでも近江を抜けて若狭を手に入れるかもしれない。そうなるように俺が誘導すればいいのだ。俺が今以上に金儲けをして戦力を保持するのに海は必須の条件なんだ。


「ソウシン殿、頼みがあるのでおじゃる」

「何でしょう、伯父上」


 マロじゃなかった、伯父上が大平城に到着してより数日後、俺に会いに来て唐突に頼みがあると言った。


「麿の他にも十仕家が京を追われておじゃる。嘆かわしいのでおじゃるが、他の十仕家は麿のように頼る者がいない場合も多いのでおじゃる」

「他の十仕家に手を差し伸べろ、と?」

「然様でおじゃる」

「それは父上にお伺いしないと、なんともお答えが出来かねます」

「キシン殿に諮ってもらいたいのでおじゃる」


 十仕家は名家で家柄や権威はあるが領地や武力のない高位貴族だ。最近は官位による御威光も廃れかかっていて、十仕家と婚姻を望む領地持ちの有力貴族は少なくなっているそうだ。アズマ家のように十仕家との婚姻を今でも重ねている家は多くない。

 だから2家が路頭に迷っており伯父上に泣きついてきているらしい。だが、アズマ家がいくら裕福でも十仕家を保護する義理はないのだ。だから伯父上はキシンではなく扱い易そうな俺に頼んだのだろう。(したた)かだね。

 まぁいい。ここで多くの十仕家を取り込んでおけば後日役に立つこともあるだろう。


 十仕家の保護には流石のキシンも難色を示した。アズマ家は金銭的に裕福とはいっても十仕家を保護すればするだけ銭が飛んでいくのだから、キシンの懸念は尤もだ。だから最終的には俺が銭を出すことになった。


 

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