第26話
あれだけあったバーベキューの材料は全てなくなり、三人の胃袋に収まっている。九割は女性陣。食休み中の勲、風呂に入っている真白。風呂の方から「はぁびばのん~」と聞こえてくる。隣では佑奈が仏壇に供えてあったまんじゅうをほおばりながらテレビを見ている。「別腹って何個あるんだろう…?」なんてことを思いながら横目で佑奈を見ている勲。
「真白がお風呂から出たら花火しましょうか」
「そうしましょうか。てか、もうちょっと待ってもらえますか。お腹が…」
「情けないですねぇ」あなた達が異常なんです。
「ふい~。いいお湯だった。佑奈入る?」暫くして真白が風呂から上がってくる。例のピケとやらを着ている。この地方では少し寒そう。
「おかえり。私は花火してからでいいや」
「じゃあダーリン。お湯使ったから少しお水足しておいたね。次入る人の時追い炊きしておいて」
「わかりました。さて、花火の準備しますか。真白さん、それだとちょっと寒いかもしれないので、上一枚あったほうがいいですよ」
「うに」髪を拭きながら答える真白。
「じゃあちょっと準備してきますので、待っててください」一人立ち上がり庭へと向かう。
バケツに水を溜め、以前盆の時期に来て済ませてはいるが、もう一度送り火用の残った松の木を持ち出し金盥のような容器に松の木をくべ火をつける。ミランダが買ってきた花火を持ってきて準備完了。
「準備できましたよー」
「はーい」
玄関から回って庭へと来る二人。勲の言う通り、北国の夏が過ぎるのは早く既に夜は少し冷える。十月まで30度を超えるような東京とはわけが違い、夜は10度台まで下がる。「上に一枚」と言うのは冗談でも何でもない。湯冷めしようものなら風邪をひく。
「うー、たしかに寒い」
「今日はまだ寒さ緩い方ですよ。雨なんか降ったらもう東京の秋くらいになっちゃいますからね」
「厳しい環境で育ったんですね」
「僕にしてみれば東京の方が厳しいですけどね、色々と便利な分、物価も高いしせわしないし、人も変な人多いし」
「あんなこともあったしねぇ…」もうそろそろ忘れてもいい頃。
「それでも、そこで生きなくちゃいけない時期があるんだなって、覚悟していったんですけどね。そのお陰で…」
「ん、何か言った?」聞き返される勲。
しかし「いえ、なーんにも」と隠してしまう。おそらくは「おかげで二人に会えた」と言いたかったのだろう。聞かれてしまっては平常心でいられない。
「さぁ、この夏最後の花火です。やりましょう」
「おー!!」
晩夏の夜に小さな緋色の花が一斉に咲く。ちょうど一年後、また咲くまで。




