第22話
朝食を済ませ、本日は変な遭遇もなく宿を後にする一行。今晩の宿は勲の父の実家でここからほど遠くない場所にある。この辺りの景勝地を巡り、夕食を実家で済ませるため早めの実家チェックインを予定している。
「真白、昨日の晩のこと覚えてますか?」念のため昨晩の事実確認。
「…、いや。何か思い出せそうな思い出させなさそうな…。夜中一瞬何か見たような見てないような…」
「特に何もなかったです」
「うん、下着も見つからなかったし」
瞬時に口裏を合わせる勲と佑奈。そのカバンの中には自分の回収下着はしっかり入っている。
「そっかぁ。じゃあ何だったんだろうね、動物かな?」当たりです。
「と、兎に角行きましょうか。さて、どこか行きたいところ探しましょう」
「あ、それで一つ提案」真白が挙手。
「なんです?」
「ダーリンのお爺ちゃんち行きたい。そこで田舎暮らし体験したい」
「賛成です。別に観光地いかなくても、一日くらいのんびりしてもいいかなって」
「え? いいんですか、それで」
「はい」
「うん」
二人の希望は一致。断る理由はどこにもない。という訳で、勲のじいちゃんちへゴーすることになる。
「わかりました。じゃあここからすぐですから、ちょっと叔母に連絡します。少し待っててくださいね」
「はーい」
近所に住む親戚に電話をする勲。無人の家の管理はずっと叔母がやっているため、予定が変わった旨伝え利用できる状態であるかを確認する。五分程度の会話の後勲が電話を切る。
「…。お待たせしました。いつでも大丈夫だそうです、鍵もあるそうですので」
「よっしゃ。じゃあ行くかー」
温泉宿を後にし車を走らせる。見送る仲居の後ろ、旅館の屋根の上には、三人は気づいていないが昨日のタヌキが鎮座している。頭の上に葉っぱの代わりに真白の下着。最近のタヌキはそうやって化けるんだ。
田舎の峠を超え、民家もまばらな国道を走り、数十分で実家へと辿り着く。途中コンビニを見つけ「こんなところにコンビニが!?」と驚きはするものの、とりあえずここも日本だと言うことでスルーしていく。
「ここってなんですか?」
「ああ、これは昔の診療所です。今はもう誰もいませんけど」
実家の向かいにある既に無人の診療所の駐車場に車を止める。都会なら考えられないが、ここは北国限界集落間近。どこに誰が車を止めようが、そう文句を言われることもない。実家自体に駐車場はあるものの、止めづらく毎度こちらを利用しているのは勲の父も同様。
「いいところですけど、寂しいですね。人がいなくなるのは」
「日本の田舎はどこもそうですよ。仕事があれば僕もここで暮らしたいんですけど、無理な相談かな」
トランクから荷物を運び出し家へと向かう。
「わー、大きい。さすが田舎、平屋でデカイ!」
「十人くらいなら余裕で泊まれますね。今晩は庭でバーベキューしましょう。後で買い出しに行きましょう」
「やったー」
郵便受けに入れたと言われた鍵を確認する。しかしそこに鍵はない。
「あれ、おかしいな。ここに入れたって…」何度も確認するが鍵はない。
「鍵ないんですか?」
「えぇ、おかしいなぁ…」
真白がドアノブを捻る。すると何の抵抗もなく開いてしまう玄関の扉。
「ダーリン、開いてるよ?」
「え? 鍵閉め忘れたのかな。でもよかった入れないと思った」
真白からドアノブを譲り受け家の中へと進む。「おじゃましまーす」と「ただいま」の掛け声とともに靴を脱ぎ居間へと向かう。そして今へと続く扉を開く。
「らっしゃーい!!!」すると中から威勢のいい声で出迎えられる。
「まさか!?」
「ようこそうちの実家へ。待ってたわよー!」これでもうわかった。




