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湯気の向こうの男の娘  作者: 小鳩
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第1話

「もりおかー、もりおかー」

 目的地に到着し新幹線から降りる三人。既に周りを警戒し出す勲。パッと見では佑奈の双子にしか見えないのでそう簡単にばれることもないだろうが「地元の昔からの友人なら見抜く可能性はある」と、車中でずっと心配している始末。まだ住んでいた地域は遠いのになんだこの警戒心。

「とりあえず誰もいない、よし」警戒を解く勲。一息ついて地元の空気を存分に吸う。数日前にいたはずなのに。

「あー涼しい! 早く美味しいもの食べに行きましょう!!」

「いやー、いいねぇ北は。早く結婚してこっちに越してこようかな」

 めいめい好き勝手なことを言っている。

「とりあえず車借りに行きますよ…、って」

「どったの?」

「そっか、この恰好で借りるのか!?」

 そう、免許証を提示しなくてはいけないのだ!! 今更気付く勲。宿泊先では身分証まで提示する必要はないのでネットで旅館を予約する際はセーフ。『勲』と言う名前も、女性名としてないとは言い切れない。押し切ることを決めた。

「いいじゃん」サラッと真白。

「よくない!」流石に許容できない勲。

「減るもんじゃないし」

「減ります、心と人生が」

「ぇー。じゃあどうすんのさ、車。私免許持ってないよ」

「んー、どうしましょう…」腕を組み考える勲。美少女同士の言い争い、ホームにいる人々の視線を集めていることに気付いているのかいないのか。

「じゃあ私借りましょうか?」

「え?」勲と真白、キツネにつままれたかのような素っ頓狂な声を出す。

「佑奈さん、免許あるんですか?」

「はい、高校卒業と同時に取りました」

「そうだったの? 私すら知らなかった」

「親が車買い替えて、それがロード○ターだったので。二人乗りで家族で出かけられないので、仕方なく」

「なんかすげぇ走りそうなの乗ってますね」

「はい。楽しいですよ、首都高とか」ハンドルを回すジェスチャーをしながら答える佑奈。勲の中で佑奈のイメージが180度変わる。真白ですら知らなかった真実、真白も驚き口が開いたまま。

「じゃ、じゃあ借りるのだけ佑奈さんお願いします。運転は僕がしますので」

「はーい」

 駅前にあるレンタカー屋へと向かう。外に出ると涼しい風が三人を撫でる。勲こそ慣れているものの佑奈と真白は初めての体験。改めて「すずしー」と叫ぶ。目の前にあるレンタカー屋へと入店、そして滞りなくレンタル完了。真白が車中で販売員に聞いた「この子女の子に見えます?」をまた聞くもんだから、勲が軽く頭を平手でひっぱたく。ここから彼女ら三人の旅行が開始される。


「さて、まずどこにいきましょうか? 温泉には夕方迄に着けばいいわけですから、行きたいところとか調べてありますか?」車に乗り込みエンジンを掛ける。ナビを起動して目的地を決めに入る。

「おひるー!」もちろん佑奈。

「まだ9時ですよ? 朝ごはんならわかりますけど、昼って」朝早いのに乗ってきたため到着してもまだ午前中。昼には到底早い。

「どこかないですか?」兎に角食いたいらしい。仕方なく承諾する勲。

「そこに松屋ありますけど?」

「やだ」そりゃチェーン店じゃ、勲君センスが無い。

「んー、そうですね。住んでいる街ではないので何とも言えませんが、国道沿いなら何かあるかもしれません」

「この旅行のコンシェルジュはダーリンなんだから。頼むよー」

「僕マンション管理人じゃないですよ…」

「あ、冷麺食いたい」真白からの案が出る。

「そうしよう!」佑奈も同意。行先はソレが食えるどこかに決定。

「難しいな。ナビで『冷麺』って入れたら出るのかな…」取り敢えず入力する勲。…出た。

「あるにはあるけど、やってるかなこの時間」

「ちょっとくらいなら待ちましょう」

「えっと…。あ、駅の中にある。ちょっと調べてみます」スマホを取り出し営業時間を調べる勲。

「お、10時からだ。少しだけ待てば食べれますね」

「けてーい!」

「じゃあ駐車場に車入れましょう。駅の中でお土産見ながら待ちましょう」

 早速出発は延期される旅。だったら借りるの後でよかったじゃんと言うのはナシ。

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