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6話 オールランド国の変態王子

 ランズブール城はゴシック調で高い天井を持ち、いたるところにステンドグラスが散りばめられた内観は大聖堂のようにも見える。

 国王は多忙らしく、俺たちは城内の待合室のような部屋で待ちぼうけを食っていた。

 その間に、これから会う国王の治める国の状況をエリーに教えてもらう。


「ここオールランド国は惑星ディオンの北部最大の国にあたるわ。恵まれた気候によってもたらされる食量の豊富さがなによりも魅力ね。ただし、それゆえに国民性として貪欲さが足りないわ」

「貪欲さ?」

「厳しい環境で生活している国は生きるためならなんでもするわよ。オールランドの肥沃ひよくな土地を奪いたい国が虎視眈々と機会を狙っているのよ」

「戦争があるのか?」

「いまはオールランドと交戦状態の国はいないわ。なにせオールランドはディオンにおけるじん攻略のリーディングカンパニーだから。わたしたち勇者を所持し、さらに対刃戦魔法隊たいじんせんまほうたいを結成している」


 “勇者を所持”って、まるで政治の道具みたいな言い方だな。


「他国は、まずじんをオールランドになんとかしてもらって、侵略戦争はその後に、って感じね」


 俺はため息をつく。

 敵を倒して世界平和だ。やったね。

 って、わけにはいかないのか……


 俺が憂鬱な気分になっていると、


『よくぞ来た。五代目勇者よ』


 と、部屋に声が響いた。

 しかし、姿が見えない。部屋には俺とエリーしかいない。

 俺は部屋中に視線を這わす。

 簡素な作りの部屋には机と椅子が置かれ、部屋の隅にはあきらかに怪しい甲冑があった。


『ふっふっふ。五代目勇者よ。私がどこにいるかわかるかな?』


 声はすこしこもり気味だ。兜のせいだろう。


「エリー、これはどうゆう状況だ?」

「いい質問ね。このオールランド国には王子が二人いる。優秀な長兄と変態な愚弟が」

「あの甲冑の中にいるのが、その弟か?」


 頷くエリー。


『さあ、五代目勇者よ。まずは私がどこにいるか見事当ててみよ』


 どう対処するのが正解なのかわからない。

 エリーは聞こえないふりをしている。


『……探してるかな?』


 きっと兜によって視界が狭く、俺たちの反応がわからないために不安なのだろう。


『……ヒントは甲冑の中だぞ』


 もはやヒントではなく答えを言い出した。

 それでも俺とエリーが無視し続けると、


『…………しくしく』


 泣き出した。




* * *




 甲冑が重くて動くことができず、自分で脱ぐこともできなかった哀れな王子は名をルイーズといった。

 甲冑を外したルイーズ王子は、腰まで伸ばした赤毛が特徴的で、少年のような面立ちをしていた。歳は二十代前半らしいから、世間知らずのボンボンなのだろう。


「五代目勇者よ。よくぞ私を助けだした」

「あれだけ号泣されたら、さすがにね」

「私はいたく感動したぞ。褒美をやろう。さぁ、こっちだ」


 と、俺の腕を引っ張って行く。

 エリーを見ると、バイバイと俺に手を振っている。王子とは絡みたくないようだ。

 俺だって、こんな妙ちくりんな奴とは仲良くしたくはないが、相手は仮にも王子である。腕を払うわけにもいかない。


 やがて王子はひとつの部屋に入っていった。

 そこは本棚が並んだ書庫のようだ。


「ここには世界中から集めた貴重な書物が揃っている。五代目よ、好きな本を持って行くがよい」


 この世界の文明レベルから察するに紙自体が高価なはず。

 俺は適当に一冊を棚から抜いてみる。


『制服の淫靡な告白』


 エロ本だった。

 どの本を見ても、露出の激しい女性が表紙を飾っている。


「ふっ。これほどのコレクションが揃うのはディオンでここだけと自負しているぞ。ちなみにお勧めはこの本だ」


 手渡された一冊を開いてみると、


「お前じゃねーか!!」


 半裸のルイーズ王子が載っていた。

 条件反射で、王子の頭をその本でスパンッと叩いてしまう。


「王子に対して躊躇いなくツッコムとは、五代目は底が知れんな」


 変に感心されてしまった。

 エリーが変態と言い切るだけあって、ルイーズ王子はなかなかの逸材だ。

 それにしても……


「五代目よ、バッグを持ってこようか?」

「そうしてもらえるとありがたい」


 俺は両手いっぱいにエロ本を抱えていた。

 なにせ、こっちにはネットも何もなくて、この手のものに俺は飢えていたのだ。


 持ち帰る本を吟味していると、急に城内が騒がしくなった。


「なにごとだ?」


 と、ルイーズ王子が通路を走る者に声を掛ける。


じんが発生しました。場所はダダラメ山です」


 ダダラメ山。

 聞き覚えがある地名。

 俺の脳裏にすぐ浮かんだのは、今朝遅刻すると慌てていた少女のことをだった。



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