12話 閑話休題 ラッキースケベ
対刃戦魔法隊の軍事演習日。
俺とエリーは演習地となる旧闘技場に来ていた。昔は、この地で闘士たちの拳闘が行われていたらしい。いまでは、それは廃れて、闘技場は使われぬまま朽ちていた。
今日は勇者の正装となる“竜の紋章”が刺繍された礼服を俺たちは着ているのだが、
「この服って、スカートバージョンもあるんだな」
エリーは先日着たパンツバージョンと違って膝丈ぐらいのスカートをはいている。
「いやらしい目で見ないで欲しいな。あっちは洗濯中だからスカートをはいてるだけよ。あんたの目を喜ばすためじゃないのよ」
「別に喜んでないし」
「ちなみに男子用に短パンもあるけど、そっちはく?」
「遠慮しとくよ」
「そうね。あんたおっきいから、ハミチンするもんね」
「それが女の子の発言か!」
女子が“ハミチン”と発言したのを初めて聞いたぞ。
「わたしは事実を端的に述べたまでよ」
「語らなくてもいい事実があることを学んでもらいたいもんだな。ちなみに、そんなデカくないからな」
「ウソつきなさいよ。あんなに赤黒くて、ズルムケのくせに」
「ズルムケとか言うな!!」
女子としては信じられないことを言う奴だ。
第一、俺は見せたことないぞ。
いや、ちょっと待て。
「……なぁ、俺って刃と戦ったあとで、気絶するけどさ……そのとき、俺の……、見た?」
「あんた、目覚めたときに服着替えてるでしょ?誰が着せたと思ってるの?」
「マジか!!」
頭をかかえる。
確かに振り返ってみると、気絶後目覚めると着替えが済んでいた。あれはエリーが着せていたのか……
と、いうことは、
「……マジで、俺の……見たの?」
「うん。だから、デカチンだって言ってんじゃないの。あのサイズで遅漏なんて、極悪よ。女の敵ね」
恥ずかしくて死にたい……
俺のテンションがガタ落ちになっていると、ゴホンゴホンとわざとらしい咳払いの音が聞こえた。
そちらを見るとミヒャイの姿。
「おそろしく破廉恥な会話をする連中ね」
そう言うミヒャイの顔は真っ赤である。
ホントに下ネタが苦手なんだな。
「まあ、今日逃げずに来たことは褒めてあげるわ。私が指揮する魔法隊の威力を知って、今後はおとなしくしてもらいたいわね」
切れ長の瞳で、俺たちを見下したような発言をするミヒャイ。
それにしても……
「おまえの格好、エロ過ぎないか?」
先日会ったときも露出の激しい服を着ていたが、今日のミヒャイの格好はさらに気合が入っている。
チューブトップのような上着は胸の谷間を露わにし、もはや薄い腰布にしか見えないスカートは少し屈めば中身が見えてしまいそうだ。とても軍事演習を行う格好には見えない。
「え、エロいですって!?ど、どど、どんな目で私を見てるのよ!!」
両手で胸元と下半身を隠そうとするミヒャイ。
こいつ、エロい服だと自覚してなかったのか?
エロと指摘されて恥ずかしがるミヒャイにエリーが追い討ちを始める。
「あなたは格好良く決めたつもりかもしれないけど、ここのいる五代目勇者には淫らなメスにしか見えないのよ」
「えっ?」
「五代目はね、女子の首筋を見るだけで、全裸を想定できる技を取得しているのよ」
「くびすじだけで……?」
「あなたみたいに肌の露出が激しいと、もはや細部にわたって丸見えよ。あなたのサーモンピンクな……」
「やめいっっ!!」
とんでもないことを言い始めるエリーの頭をひっぱたく。
俺のことを性魔人みたいに言いやがって。
超純情なミヒャイはエリーに責められて、しゃがみこみ涙を浮かべている。
う~ん。見た目はドSなのに、なぜこうも純情なのか。
「お、おそるべし、五代目勇者……」
「勘違いするなよ。エリーが言ったこと間に受けるんじゃないぞ」
俺の言うことは耳に入っていないようだ。
ミヒャイは意を決したように、
「ならば、死なばもろとも、道連れだ!」
と、叫ぶや、エリーのスカートをがばっと捲り上げる。
「やだっっ!!」
即座にエリーはスカートを押さえるが、もう遅い。
してやったり顔でミヒャイが言う。
「どうだ!五代目、いまの白パンを見たか!さあスキャンするのだ、この女の全身を!」
俺はそんな術使えねーよ。
まぁ、純白のパンツははっきり見たけどさ。
「あなた、なにすんのよ!」
エリーがミヒャイに襲いかかる。
それに応戦するミヒャイ。
互いに相手の服をまくりあげようとし始める。
「四代目!なにをする!」
「もとから半裸だったんだから、いっそ全裸になりなさいよ」
「はぁ!?そっちこそ五代目にとんだ変態を人選した責任を取りなさいよ!」
キャットファイト状態のふたり。
乱れた衣服から、様々なモノが見える。
おおっ!ミヒャイのパンツは黒かっ!
なにっ!エリーのブラはピンク!上下で揃えていないとはっ!
もはやラッキースケベの確変状態なのか!?
目を皿のようにして凝視している俺の存在に、ようやくふたりが気づく。
『どこ見てんのよ、このスケベ!!』
顔面を同時に殴られて、体力が1しかない俺は気絶したのだった。
ちゃんちゃんってか。




