雨が
とことこ、とことこ。故郷は雷、ここは晴れ。
雨が
降ってきた
やはり憂鬱だった
通り雨だろうか
確証はないが
とにかく走った
遠くで雷が
狭い軒の下
誰かがいたバス停で
手持ち無沙汰に待っていて
手慰みをとことこ
叩いている
故郷の匂いは
濡れたアスファルト
むせ返る地面
この匂いには形がある
ようで
ない
手に掬った匂いはふよふよと
宙を漂っては
もわっと崩れて
風にさらわれる
見えないかたちを
目で追っている
薬局のお店
こんなもの故郷には
ひとつもなかった
雨止みに使うには
すこしばかり
後ろめたかった
紫陽花が勧める
甘いお湯は
ない世界へのいざない
どぼんと落ちた
友人の鞄
僕が預かっている
田んぼに入った中学生の
泥だらけなお顔に
雨粒を投げつけて
おしゃれ模様
なんてことない
雨粒模様
雨が
止んだころには
友人は帰ってきたろうか
最後の一粒が落ちてくるまで
まだ
わからない
相合傘を止めた
睦まじい男女の
本物の半分こ
故郷にはあんな濡れ方なかった
ようで
あるのだ
匂いは崩れ
形をなくして
ほろほろと落ちて
舞い上がって
日の香り
雷様が歩き出す
紫陽花の木が
とても大きくなっていて
見下ろされている僕
老いぼれ紫陽花
煮詰まったような
成れの果て
古井戸を過ぎるとそこは
知らない世界の片端
とんとん背中を叩かれ
僕は鞄を返した
知っている人も
びしょ濡れだった
故郷を思わない日がないように
君を思わない日もない
だって君は唯一無二
アパートの一室
暗い隅っこ
明るい心
からからからから
鳴子を渡して
僕の毎日
からからからから
人の鳴子を
鳴らして回る
鏡の中のお化けたち
水たまり映って
青空を
僕らに邪魔されながら
外に出られれば
考えてるのか
戸を開けて体を拭いて
服を着替えていすにぐったり
お湯を沸かしてホットココア
作ってくれた人は
もちろん
頭の中