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バカコウ  作者: 常煮一人
3/3

ジャスコ

 翌日、俺宛てに馬ヶ鹿高校から宅配便が来た。

 

 結構デカめの箱に入ってるそれは、この高校で過ごすのに必要なものが入っているようだ。なんか、進研○ミに新しく入った気分と同じく、ワクワクしながら開けた。

 

 中には、色々なものが入っていた。

 

 生徒手帳とは名ばかりの理事長書下しの漫画。意外と上手かったのがなんか気に入らない。

 

 制服。かの有名なファッションデザイナーがこの学校のために書いたらしく、誰から見ても、普通の私服でかっこよすぎる。

 

 教科書とは名ばかりの理事長書下しの漫画。全25巻。もう漫画書くの辞めろ、理事長。しかも妥当な巻数だし。

 

 身分証明書。これが無ければ校内に入れないらしい。警備厚いな。

 

 二の腕かじり虫。

 

 ……。

 

 

 

 

 

 

 

 二の腕!?

 

 おしりじゃなくて二の腕!?見た目カマキリだし。

 

 すると、どう見てもカマキリの二の腕かじり虫がひょこっと起き上がった。

 

「よう、俺二の腕かじり虫、早速だけど二の腕ちぎっていいか」

 

「かじんねえのかよ!?」

 

 ならちぎり虫にしろ。

 

 二の腕ちぎり虫はどう考えてもいらないから、外に逃がした。飛んでる最中、【都会の二の腕甘すぎだー】と叫んでいた。

 よかったな。

 

 制服のサイズが合ってるか確かめたり、理事長書下し漫画が意外に面白くて一気に読んだり、二の腕かじり虫売れば高かったかなと考えたりしたらもう深夜二時になっていた。

 

 しまった、夕飯喰ってねえよ。

 

「親父ー、今日の夕飯何ー?」

「トンカツだ」

 

 なぬ!?

 

 一階から聞こえた料理名はオイラの大好物のトンカツじゃないか!?昨日は駄菓子のさくら大根であまりにも飯に合わなかったのに…。

 

 俺は高揚しながら一階に降りた。

 

 って、駄菓子のトンカツじゃねーかぁあああああああああああああああ!!!!!!!!

 

 30円の食卓。

 

 もう駄菓子屋やめて違う仕事見つけてくれ…。

 

 一気にテンションダウンした俺は何もやる気が起きず、寝ることにした。

 

 明日が楽しみだ…。

 

 

 

 

 

 

 

「功太!!新しいゲーム考えたからそれについて熱く語ろうよ!!」

 

 早く駄菓子屋以外の仕事見つけろ、クソ親父。

 

 

 

 

 親父は結局眠らせてくれなかった。

 しかも親父のゲームはゲームとして成り立たなかった。舞台が北関東だけだし、最初からレベル68だし、敵が村人だし、武器がドライアイスと明太子だし。いや、ドライアイスは何かと強いからいいけど、明太子は無いだろ。プニュプニュだし。

 

 俺は何回もあくびをして、納豆と味のりと焼き鮭とご飯と味噌汁という、昨日の夕飯とはえらい違う朝飯を喰い、髭を剃り、制服とは思えない私服を着て、自分のペースで家を出た。

 

 家から徒歩二分の特権を、有り難く使わせていただきます。

 

 

 あれ?確かにここなんだけど…。まさか、徒歩二分の距離で迷子!?ありえん。隣の家に回覧板を届けるのに迷子になる奴なんているか?いないよなあ…。

 

 確かに右に300m歩いた。だけど、そこには、10階建てのジャスコがそびえ立ってるだけじゃないか。もしやこいつ、新手のポケモンか?ポケモンの笛で起こして戦わなきゃいけないのか?そんなわけないよなぁ、勝てないもん、ジャスコに。

 

 だが、そんな考えもすぐに消し去られた。俺と同じ制服を来た男性の方々が、ジャスコになんの躊躇もせず入っているのだ。

 

 学校ってジャスコ!?

 

 小さい頃、デパートに住みたいと嘆いた事がある。まさか、その願いが8時間ぐらいだが叶うではないか。

 

 なら俺も、なんの躊躇もせず入るぞ。

 

 他の男性に混ざりながら入り口へと向かう。もうすぐで入り口だ…。よし、入れ…ビシッ。

 

 俺の目の前にななめ45度に傾いた腕。その持ち主は警備員だった。警備員いたのかよ…。

 

「身分証明書を」

「はい?」

「身分証明書を」

 

 そうか、身分証明書か。

 

「早く出さないとお前を○○で○○して○○するぞ」

 うわぁああん。なんかとんでもない事言ってるよぉ。

 

 俺は今にも泣きそうな顔で身分証明書を見せ、自動ドアを通り、中に入った。見せなかったら肉団子になってたよ…。

 

 外見がジャスコでも、中は普通の学校みたいに下駄箱とかあるかと思ったが、やはりジャスコ。見事に店舗が並んでいた。

 

 じゃあ学校は?

 

 まさか服屋でバイトするだけ?簡単だな。

 

 俺がオロオロしていると、後ろから【あのー】と声が聞こえた。

 

 振り向くと、若めの男性が立っている。

 

「あのー…何か?」

「君、編入生の大倉功太くんでしょ?俺は君のクラスの担任、若林勝。25歳、彼女は今んとこいない」

 

 彼女がいないことを俺に言われてもリアクションに困るが、とりあえず担任に会えた事はラッキーだ。

 

「すいません、学校はどこでしょうか…」

「ここの5階から屋上までが学校。そこから下はジャスコとジャスコの社員寮があるんよ。俺も行くから一緒に行こうか」

「はい、お願いします」

 

 なる程、ジャスコと学校があるのか。だから10階もあるのか。

 俺と若林先生は入り口付近のエレベーターで五階へと向かう。

 

 着いた。

 別にエレベーター内の状況など、読者は必要ないと思って省きました。すいません。俺が読者でも別にいらんし…。

 

 確かに五階からは学校の風景だった。五階は自販機、保健室などがあり、六階は職員室、三年の教室。七階は二年の教室。八階は一年の教室。九階、十階は吹き抜けで体育館。そして屋上は運動場だと若林先生は教えてくれた。

 

 だけど、体育祭とかはどうするんだ?それに体育でサッカーや野球をした時は危ないよな…。

 

「サッカーは体育館でフットサルとしてやるし、野球は体育のプログラムにも入ってないし、部活もないぞ」

 

 なんなんだこいつ?俺の頭の中が分かるのか?

 

【ん?なんだい?】と若林先生が聞いてくるので俺はいいえ、と答えた。危ないぞ、こいつ、要注意だな。

 

「まあ、とりあえず理事長に挨拶にでも行くか」

「はい…」

 

 理事長か…。どうせ白髪混じりのおばさんで何かと生徒を助けてくれる感じだろうな。ドラマの見過ぎとか言うなよ…。

 

 俺と若林先生が五階を歩いていると、木の扉に金箔の表札で【理事長室】と書いてある。なんか緊張するよな。偉い人の部屋に入るのって…。

 

 若林先生がコンコンと二階ノックをする。

 

「若林です。編入生が見えたので挨拶に来ました」

 

 ハッキリとした口調で若林先生がそう告げると、ガチャ、と鍵が開いたような音がした。

 

 ドアノブを捻って開けると、ギィと重みのある音が聞こえ、俺の緊張感が増す。

 

「理事長、こちら、転入生の大倉功太です」

 

 俺はついに、理事長と対面した。



次回に続く

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