わかっているけど
今回は春都の中の独占欲と嫉妬を書き出してみました。
そして思った以上に長くなった・・・。
※とっても春都が嫌なやつに見えるかも。それでも大丈夫な方はどうぞ。
「ねぇ、あれって神風豹牙(jb2823)先輩じゃない?」
教室の掃除中、クラスメイトの一人が私の肩を叩いて窓の外を指差した。
「え?」
「ほら、あの身長の高い銀髪の人!」
「……本当、ですね」
確かに窓の外……校舎裏の芝生に豹牙が立っていた。
身長がとても高い+銀髪というとても目立った特徴の彼は、
話をしたことも無いはずのこのクラスメイトにさえ、
名前を知られていた。
「なにしてるんだろう?」
「春都(jb2291)ちゃんを待っていたり~?」
にやにやした表情で聞いてくるが、そんな約束もメールも
届いてなどいない。
「それはないですよ。約束も何もしていませんから」
「そうなの?……あ。誰か来た」
その子の言うとおり、豹牙が顔を向けている方向から。
一人の女子生徒が駆けて来た。
「……………………」
「は、春都……ちゃん?」
恐る恐るといった感じで声をかけてくれたが、
今は何も答えられない。
ただ、じーっと豹牙とその女子生徒のやりとりを見ている。
女子生徒は焦った様子で頭を下げると、豹牙は手を横に振って答える。
そして、女子生徒は遠くからでも分るくらい深呼吸をすると、
真っ赤な顔で豹牙に何かを告げる。
あれだ。俗に言う「告白現場」と言うやつだろう。
結構、豹牙はモテる。
身長の異常な高さを除けば、顔はいいし。
かっこいいし、優しいし。
料理は出来るし、強いし。
彼女の私だけがしてもらえることを除いたって、
充分モテる要素はたくさんあるのだ。
本人は否定しているが、時々風の噂で告白されているのを
聞くと、いい加減自覚しろよと言いたくなる。
というか、大体何故私という彼女がいるのに、
みんなは告白をするのだろう?
なんて、考えていると女子生徒が豹牙の返事を待っているのに気づく。
豹牙の表情はここからは見えない。
でも、豹牙が答えること、その結果は分っている。
当然だけど。
だけど。それでも。
「……早く掃除終わらせません?」
「は、はい!!」
何故だろうか、怯えた様子で慌てて掃除に戻るクラスメイト。
その背中を追いかけるように私もそっと窓から離れた。
私の胸の中でモヤモヤとしたものが渦巻いた。
放課後。
「春都ー、いるー?」
珍しく連絡もせずに豹牙が教室まで迎えに来た。
「今行きますので、廊下で待っていてください!」
「おー」
慌てて机の中身を鞄に突っ込み、教室を出る。
その際に何人かのクラスメイトがにやにやした視線を
送ってきていたのはあえて無視しよう。
「お待たせしました。」
「いや、言うほど待ってないよ。じゃ、行こうか♪」
「……はい」
嬉しそうに私の手を引いて先を歩く豹牙。
私はその背中をじっと見ていた。
「いやぁ、実は今日さぁ……」
「それでさ」
「俺ってばさ、」
帰り道、豹牙は今日あった出来事を楽しそうに話してくれる。
私はそれを時々相槌を打ちながら、聞いている。
「春都?」
「ん?なぁに?」
「どこか具合悪いの?」
脚を止めたと思ったら、豹牙がしゃがんで目線を合わせて
心配そうに尋ねてくる。
「くすっ。悪くないよ、全然元気だよ?」
「………………ちょっと寄り道していこうか」
表情を少し曇らせた豹牙は、私の手を引いて近くの……
何故か森の中へ入っていた。
「俺、なにかした?」
立ち止まってくるっと振り向いた豹牙が最初に聞いたのは
それだった。
「なんで? 豹牙、私になにかしたの?」
「そう聞いてくるってことは原因は俺じゃないわけね。
……なにがあったの?」
真剣な表情の豹牙。
私の微笑んでいる仮面も、心の中のモヤモヤも。
なにもかも見透かされそうで、でも、まだバレていないなら。
「? 私なにかおかしい?」
「ああ。おかしい。だって、笑ってない。」
「え? そうかなぁ」
「春都っ」
ちょっと怒ったような声に肩が跳ねる。
「……なにがあったかも話せないほど、俺は頼りない?
信用なら無い?力に、なれないの?」
悲しそうな、寂しそうな豹牙の顔を見て、
「しまった」と思った。
胸の中に渦巻いているモヤモヤの正体は分っている。
でも、それを豹牙に知られたくなくて。
意地を張って、隠して……豹牙を傷つけてしまった。
「…………ごめん、違うよ。
豹牙が頼りないわけじゃない。」
「じゃあ、教えてくれる?」
子供のように首を傾ける豹牙は可愛らしくて。
意地を張るのも疲れて、ため息と共に肩の力を抜いた。
「え。あれ、見てたの?」
「ばっちりと。教室から丸見えだった」
「うわぁ……」
とりあえず座って話そうという事になって、
何故か持っていたレジャーシートを敷いて、二人で座って。
とりあえず私が今日見た「告白現場」の事を話した。
「告白、されたんでしょ?」
「……うん。あ。当然断ったよ?!」
「くすっ。分ってる」
慌てたように言ってきたので、苦笑した。
「豹牙が断ることも、浮気をしない事も。
私を裏切らないことも分ってるから安心して?」
「それなら良かったぁ。
というか、当然だろ?俺は春都以外に興味なんてないし、
浮気なんてありえないね。」
「……うん。知ってる……分ってる、よ……」
そう、分っているのだ。
豹牙が浮気をしない性格という事も。
私と別れて他の女の子と付き合うなんてありえないって事も。
分って、いるけど。
「それでも……豹牙が誰かに告白されるのは嫌なの。
豹牙が誰かに好かれるのは私も嬉しい。
それが恋愛の意味でもね?だって嫌われるよりは全然良いもの。
別にね、全ての女子に豹牙に恋をしないで。
なんて言うつもりは無いの。誰かを好きなる理由は理屈じゃないから。
私という存在がいても好きになってしまものは、好きになってしまうから。
苦しくて、苦しくてどうにもならなくて。
本人も、もしかしたら悪いって思ってるかもしれない。
でも、気持ちだけは伝えたい……それはなんとなく分るから。
まぁ、もしかしたら横取りしてやろうと思ってる人もいるかもだけど。
豹牙は困ると思うけど、そういう人達のそういう気持ちも
私は無視したくない。」
と、一呼吸置いて、私は苦笑する。
「なぁ~んて綺麗事。今からすっごい意地悪で性悪な事いうけど。
私は豹牙が絶対に裏切らないことを知っているし、
分っているから、絶対にその告白が失敗することも見えてる。
告白したいならすれば? でもそれは報われないから。
人のものに手を出すからそういう事になるんだよ。
なんて、上から目線で嘲笑ってるのかな。
でも、そんな事思ってるのに、それでも豹牙が告白されるの嫌なの。
ねぇ?豹牙は私の彼氏だよ?恋人だよ?
なんで好きになったの?告白するの?失恋するって分ってるでしょ?
やめて。好きになんかならないで。その気持ちを伝えないで。
一人で抱えて苦しんでよ!!
…………って、本当は叫びたいんだ」
モヤモヤの正体はこれ。
嫉妬と強すぎる独占欲。
あーもー……ほんと、嫌なやつだ私。
「ごめんね。一方的に話して。
すっごい独占欲と嫉妬の塊でしょ?
幻滅……しちゃったかな」
苦笑して豹牙を見れば。
豹牙はとても穏やかに微笑んでいた。
予想外の表情に私は戸惑う。
「な、んで笑ってるの?」
「だって、嬉しかったから」
「なにが? 私今豹牙が喜ぶようなこと一つも言ってないよ?」
「そんなことないよ。ずっと何を溜め込んでいるんだろうって。
何を思って、何を言いたいのかなって思ってたから。
それが聞けて俺は嬉しい。」
「嬉しいって……こんなドロドロした気持ちが聞けて?」
「うん。だって、それだけ俺が好きって事でしょ?
正直、さ。告白されるたび、春都がそれをどう思ってるのか。
ヤキモチ焼かないのかな?嫌じゃないのかなってずっと考えてた。
だって、聞いているんでしょ?俺は言わないけど。
俺が度々告白されてること。」
ゆっくり無言で頷くと、やっぱりって苦笑した。
「でも、春都は何も言わないし。いつもと変わらないから。
信頼されてるって思うのと同時に、ちょっと不安だった。
だから、今春都の気持ちが聞けて俺は嬉しい。
幻滅なんてしてない。むしろ、俺は幸せだ」
優しく抱き寄せられて、温かく力強い腕に包まれる。
「もっと話して?教えて?春都が思ってる事、感じてる事。
ドロドロしてる気持ちも、モヤモヤしてる気持ちも。
俺はどんな春都も好きだし、見たい。知りたい。」
「……私の中、こんな感じで一杯だよ?
重たくなるよ?き、嫌いになるかも」
「全然構わないよ。重たいなんて思わない。
嫌いなんて絶対にならない。
不安ならこうして抱きしめてあげる。キスもする。
何度も好きって、愛してるって言ってあげる。
俺が出来ることで春都が安心するなら、俺はなにも惜しまない。
だから、教えて?もっと話して。」
途中からぽろぽろと泣き始めて私の涙を指で拭って。
小さく無言で頷いた私に、豹牙は微笑んで優しく口付けてくれた。
(にしても、ヤキモチ焼いてくれてたんだ~。)
(っ!……焼かないわけないもん)
(ふふっ。大好きだよ、春都)
(っ?!……………………私も好き、だよ)
今回はちょっと糖度は低めで書いたつもりです。
・・・ただその分春都の独占欲と嫉妬と病んでる部分がぁぁぁぁ。
あ。ちなみに登場人物を知っている方々へ。
豹牙が告白されたというのはフィクションです。「もしも~」です。




