一話
式典での眠気を引きずったままボクは寮へと急いだ。
家は遠くではないのだが、とにかく地元にいたくなくて、ボクは寮を選んだのだ。
この寮は、男女両方が入れる寮で、とにかくユルい。これは、ボクにとってもいいことで、パソコンなどの持ち込みも可能なので寮にいるときは、常につけている。
今日は、何をしようか考えている時に、前からボクを呼ぶ声がした。
「オーイ!今いいか?」
「あ、うん。別に・・・」
ボクを止めたこのひとは、オバサマが寄ってたかりそうな肉体の持ち主。所属は、柔道部に所属している。
名前はたしか・・・・・小暮先輩だったような・・・
「相変わらずなんだその冴えない顔はー?まぁそんなことはどうでもいい。部活決めたか?」
「ぜんぜん。」
「なぁ~もう少し考えてみないか?」
「もうお断りしたはず。何度も言うけど、ボクは、柔道部には入らない。」
「何でだよ~入れよ~」
「やりたいことあるから、もういい?」
「なら仕方ない!今日は見逃してやる!」
これで何回目の見逃しだろうか、小暮先輩は、人当たりはよく、陽気なのだがボクを執拗に勧誘してくる。少し苦手だ。
部屋に入ってすぐパソコンに電源を入れる。よし、今日はパソコンで、絵をかこう。今は5時30分。今日は、掃除当番でいろあろあるから、7時には終わろう。今日は・・・小暮先輩と一緒に掃除かぁ・・・勧誘あるね・・・まぁ、仕方ないか。
あっ!7時じゃん!パソコンの画面の角の時計で初めてわかった。
掃除じかん・・・
小暮先輩に捕まった。
「お~い、やっぱり入ろうかな~っておもわない?学習時間に考え直したとか・・・」
この寮には、一日1時間の学習時間がある。
「もう、勘弁して・・・」
ボクは、もう、うんざりだった。
「そうかぁ~じゃあ止めようかなぁ~」
そのあとは、小暮先輩と、たわいもない話をした。
その時ボクは、思った。
『人とと話すのは、いつぶりだろうか、・・・』
そんなことを考えていると中学校時代を思いだした、ほとんどくぐることのなかった校門。毎日開き、そこにだけしか逃げ場はなかった。やがてその世界の知識が、今まで12年間の知識を凌駕しつつあった。あの時ボクは、どんな顔をしていただろうか・・・もしかしたら今と同じ顔かもしれない・・・
ふと思ったそれは、ボクの意識を持っていくには、十分だった。
目の前では、小暮先輩が楽しそうにしゃべっている・・・
次に目に入った光景は、床だった・・・・