第2話 ねらわれたお姫様(前編)
第 2 話 : ね ら わ れ た お 姫 様 ( 前 編 )
どこの海にも、必ず海賊がいる。
「七つの海」とはよくいうが、世界にはもっとたくさん、名前の付いた海がある。
一般には南北それぞれの太平洋、大西洋にインド洋、それに北極海、南極海を加えた7海洋とされている。
しかし、中世の帆船航海時代、アラビア人がその支配する全海洋を指していうときもある。すなわち、南シナ海・ベンガル湾・アラビア海・ペルシア湾・紅海・地中海・大西洋の七つである。
アラビア人…とは限らないが、ここで言う「七つの海」とは、これらのことを指す。
「地獄の底か〜らわきあが〜る〜フッツフッツ燃える〜魔〜の海〜俺たっちゃ地獄の海賊〜ハッ! メディタの海賊〜♪ ぁルンルルンルルンルルンフッフフッフ〜……」
今日はすこぶる天気が冴えない。いいとも言えないし、悪い風でもない。ただもしここがお墓なら、今にも何かが出そうな雰囲気だ。
そんな中、潮風に乗って不気味なメロディーが流れてきた。
「地獄の海賊〜地獄の……っておい! あれ見てみろよ!」
「地獄の……“ドカッ”」
「聞けっ!」
「んあ?」
メロディーの根源、小さなボートの上に二人の男がいた。
この男たち、人相がよくない。着ている服もボロボロで、ポートサイトような活気あふれる港町には似つかわしくない男たちだ。どうやら先程の歌からして、海賊のようだ。
「あれって……あれか」
「ああ。あれだ」
男たちの視線の先には……
今日も桟橋に腰掛けているシャンドラの姿があった。
「シャンドラ、シャンドラ。またこんなところにいたのかい」
「おとうさま」
「ここはもうすぐ潮が満ちてあぶない。さあ、おうちへ帰ろう」
「でも……」
「おっと!」
シャンドラがこちらを向いたので、男たちはさっと身を伏せた。
「なあ……へへへへ……」
「へへへへ……」
男たちは不気味にほほえみあうと、再び桟橋に目を向けた。
「地獄の底か〜らわきあが〜る〜フッツフッツ燃える〜魔〜の海〜俺たっちゃ地獄の海賊〜ハッ! メディタの海賊〜♪ ぁルンルルンルルンルルンフッフフッフ〜……」
段々遠くなる歌声が、シャンドラの耳に届くことはなかった。
TO BE CONTINUED...
後編に続く・・・