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闇と光  作者: 桜咲 雫紅
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第五話 寮内案内そして襲撃

ここは闇の主城 通称暗黒城


その最上階


「準備は出来た?」


そう言ったのは魅希に負けないくらい可愛い女の子。


「えぇ。万全です。彩夜さや様」


彩夜と呼ばれた女の子は薄く笑う。その笑みは暖かさとは程遠い冷たい笑

み。


「そう。じゃあそろそろ迎えに行きましょうか。守弥」


守弥と呼ばれた男の子は一礼して


「そうですね。参りましょう。彩夜様」

光城の周りの湖に架かってる八つの橋を、火の国方面に渡ってすぐの所に三階建ての建物がある。そこが優香達の住んでる場所だ。寮みたいなものだ。


「結構大きいんだね。すご~い」


寮を眺めて感心する克弥。優香は生まれた頃から見慣れてるのでそんなに感心するか?と思ってる。

中に入ると竜也がいて


「お帰り優香。それから・・・・ようこそチャラ男君」


「俺チャラ男って名前じゃないんスけど・・」


「そうだっけ?まぁなんでもいいじゃんか。チャラ男君」


ブチッ 何かが切れる音。次の瞬間


「だからチャラ男って名前じゃねぇつってんだろうが!お前には耳がないのか!この耳無しが」


「誰が耳無しだ!耳ならちゃんとある」


そういって両耳を指差す竜也。


「聞こえてんじゃねえか。無視すんなよ」


「聞こえない聞こえない」


「この野郎。一発ぶん殴ってやるよ」


「やれるもんならやってみな」


果てがなさそうな二人の喧嘩を眺めてる優香は、頭を押さえながら


「誰かこいつら止めて」




数十分後。ようやく喧嘩は終わり寮内案内再開。


「玄関からすぐのこの部屋が修練場だよ。よくみんなで修練するんだ」


「大きいな。ここなら多少暴れても大丈夫そうだ」


修練場の多きさは体育館と同じくらい。魔法を使っても大丈夫なように結界で覆われている。


「次の部屋が食堂だよ」


食堂は人数分の椅子と大きなテーブルだけのシンプルなとこだ。


「次は浴場。ちゃんと男女別だから」


「へぇ。すげえじゃん」


「次は和室」


「なぜ?なぜに和室?」


「美麗ちゃんが和室好きだからだよ」


中は当然畳張りで、見てるだけで穏やかな気持ちになれる緑一色。庭には桜の木が植えてある。


「次は弓道場。まぁ弓道というよりは普通に弓を射る場所なんだけどね」


「設備しっかりしてんだ。闇とは大違いだ」


「闇がどんなのか知りたくなってたよ。次は二階にあがろう」





階段をあがるとそれぞれの部屋がある


「階段をあがってすぐの部屋は空き部屋で、空き部屋の隣が竜也の部屋、竜也の隣が凪の部屋だよ」


「ふーん。あんな奴の部屋なんかどうでもいい」


「ハイハイ。竜也達の部屋の隣が燈架の部屋で、竜也達の部屋の隣は美麗ちゃんと優也の部屋」


「その美麗とかいう奴の隣とその隣のピンクの部屋は?」


「ご想像にお任せします」


「あぁ、あいつの部屋か。聞いた俺がバカだった。てか二部屋も持ってんのかよ」


「そうだよ。二部屋ないとヤダとか竜也に抱きついて」


克弥は想像してしまったのか頭を押さえてる。優香も思い出してしまったのか頭を叩いてる。


「俺の部屋は?」


「凪の隣が零兄の部屋で、その隣が私。克弥は私の隣だよ。その隣は空き部屋」


「ここか、じゃあ入ってみっか」


中は必要最低限の家具のみの部屋。しかも


「俺の部屋の半分誰か使ってんのか?半分だけ使われてる気が」


「それ私だよ。後継者とその守護者は一緒の部屋なんだよ」


「はぁ!マジで」


「うん。マジだよ。美麗ちゃんと優也も同じ部屋だし、竜也と凪も同じ部屋だよ」


「燈架とかいう奴は?」


「燈架は守護者いないから一人だよ。それから三階は当主達が住んでる」


あまりのことに絶句中の克弥。そのとき外から悲鳴が聞こえてきた。


「なんだ?」


絶句中の克弥を捨て置き、部屋の窓から外を見る。外には自分と同じぐらいの年の女の子がいた。腰には黒い刀を差

している。その女の子が魔法をつかって一般人を攻撃してた。しかもこの黒い魔力


「闇の奴か」


即座に正体がわかった。そして躊躇なく窓から飛び降りる。地面に着地したら魔刀の柄に手をかけつつ


「やめろ!」


するとその女の子は、こっちを見てぞっとするぐらい冷たい笑みを浮かべた。そして優香を指差し


「風よ。かの者を切り裂け」


いままで一般人を襲ってた風が優香に殺到する。優香は魔刀を抜き裂帛の気合で風をすべて叩き落とす。浅い切り傷

が頬に一箇所出来たが、怪我といえばそれくらいだ。優香はそのまま女の子に斬りかかった。


そのとき、何かが優香と女の子の間に滑り込み、赤と黒が混ざった魔剣で優香の魔刀を受け止めはじき返す。克弥と同じ顔の


「お前は・・・守弥」


「お久しぶりです、火の後継者さま。裏切り者の我が兄はどこにいますか?」


「兄?・・・克弥のことか」


「そうです。いますぐ渡してもらいましょうか」


「却下。克弥が自分でこっちに来るって決めたんだ。お前らなんかに渡すか」


するといままで黙っていた女の子が動いた。腰にある魔剣を抜き、優香の無防備なわき腹に向かって横殴りの斬撃を

放つ。真っ黒な魔剣が避けきれない速さで優香に襲い掛かる。


避けきれない それなら


そう覚悟をきめ、体を襲うだろう痛みに悲鳴を上げないよう歯を食い縛り左腕で受ける。派手な血飛沫があがった。


女の子の斬撃を左腕で受けた優香は苦痛に顔を歪ませながら間合いをあける。地面に片膝をつき刀を地面に落とし、左腕を押さえる。よほど出血が酷いのか大地が赤く染まってく。


「結構深いな・・・ヤバイかも」


他人事のように傷口を観察する。肘から手の甲まで斜めに斬り裂かれている。


「その場しのぎだけどやらないよりかはいいかな」


服を千切り、傷口にきつく巻きつける。激痛に一瞬意識が遠のいたが、唇をかみ締めその痛みで無理矢理ひき止める。


守弥が女の子に一礼して


「さすがです。彩夜様」


優香は弾かれたように顔を上げる。彩夜と呼ばれた女の子は


「当然でしょ。あんだけ無防備だったんだから」


「ですけど、左腕を犠牲にして防ぐなんて予想外ですね」


驚きより呆れが混じった声音の守弥。彩夜は


「でもあの出血量じゃろくに戦えないね。さてじゃあもう一度聞こうか。克弥はどこにいる」


優香はよろめきつつ立ち上がり


「誰が教えるか。仲間を売るくらいなら死んだほうがマシだっての」


そう言い放って、左腕に斬りかかろうとした優香の後ろから


「よく言った。偉いよ優香」


後ろを見ると零、竜也、優也、凪、美麗、燈架そして十数人の男を引き連れた魅希。零が優香を支えて


「大丈夫かい?」


「ヨユ~」


優香の傷を見て竜也と優也が彩夜と守弥を睨んで


「これやったの誰だ?」


彩夜は人の神経を逆なでする笑みを浮かべ


「さぁ?」


竜也と優也は同時に彩夜に向かって斬りかかる。そして彩夜に魔剣を振り下ろした。が、彩夜と二人の間に立ち塞がった“何か”によって魔剣を受け止められた。昼間にかかわらず盛大に火花が散る


「なに!」


「なっ」


二人は同時に声をあげた。二人の魔剣を止めた“何か”が二人に一礼して竜也の魔剣を受け止めた方が


「御初にお目にかかります。俺は闇の水の国後継者。名はひょう。以後覚えとけ」


次に優也の魔剣を受け止めた方が


「俺は闇の雷の国後継者。名は雷音らいおう


そして四人同時に間合いを開け、四人同時に斬りかかる。明るい紺と深緑の魔剣と黒が混ざった蒼と緑の魔剣が交差する。地面が赤い斑に染まる。


残った零は彩夜に切りかかろうと走り出す。だが零の前にも“何か”が飛び出してくる。


「新手か」


「その通り。我が名は風牙ふうか。闇の風の国後継者だ」


「ふうん。俺は零。火の国の後継者の兄だ」


そして双方一歩もひかず斬りあう。魔剣がぶつかるたびに火花が散り、スパーク音が辺りに響く。


彩夜は魅希とどっちが美少女か周りの男達を巻き込んで競い合ってる。燈架はみんなの後方援護をしている。


その時、いままで傍観してた守弥が動いた。凄い速さで優香を治療している美麗と凪に向かって斬りかかる。凪と美麗は優香の治療に集中していて気づいてない。優香は血を流しすぎて意識が朦朧としている。あの様子だと当分動けないだろう。


守弥が魔剣を振り下ろす


「凪!」「美麗!」「優香!」


竜也、優也、零がそれぞれの敵を振り切り走り出す。だが間に合わない。



バチバチバチバチ



魔剣同士がぶつかりやかましいスパーク音。その音に負けないよう守弥は声を大きくし


「ようやく来ましたか。兄さ「お前達なにしたんだよ」


守弥の言葉を遮り詰問する


「なにとは?」


「とぼけんな!優香の左腕は誰がやったんだて聞いてんだよ!」


守弥は動じる事無く


「ああ。そのことですか・・・あれは彩夜様がやったんですよ」


克弥は軽く目を見開き一瞬彩夜をみた。つまり隙が生まれた。その一瞬を逃す守弥ではない。即座に間合いをつめ、斜め下から斬りあげる。克弥は反射的に下がったが避けきれない。腹から左胸にかけて浅く斬られる。半瞬後血飛沫があがった。


「ちっ」


「余所見なんかしてるからですよ」


傷口を押さえて間合いをあける克弥。見てみると幸い動けないほどではない。安堵のため息をついて顔をあげると


「克弥♪探したんだよ」


そのセリフを聞き終わる前に抱きつかれた。驚きより痛みがまさってしりもちをつく


「彩夜・・・離れろ。ベタベタすんな。ウザい」


「克弥ったら照れちゃって」


「照れてない。さっさと離れろ!・・・っ」


怒鳴って傷口に響いたのか微かに顔を歪めるが、痛みを無視して彩夜を退かす。


「傷口開くよ?」


「知るか」


自分のことなのに淡々と言い捨てて、彩夜を睨み


「何しにきた」


「決まってんじゃん。克弥を連れ戻しに来たんだよ」


世界の常識を語るがごとくさらりと言う彩夜。


「俺は闇には戻らない。光でやりたいことが出来たんだ」


強い決意を秘めた口調で言い切る。その瞳に迷いは一切ない。


「やりたいこと?もしかして」


そう言って血塗れで倒れてる優香を一瞥し


「あの後継者に関係するの?」


「そうだけど?正確には優香こいつがくれた世界を守りたい。それだけだ」


言ってから恥ずかしくなったのか俯く。その背を竜也、零、最後に遠慮がちに優也が叩き


「カッコ良いこと言うじゃんか」


「竜也君に同意。そのセリフもらった」


「克弥君・・あとで優香にも言ってあげなよ・・・・きっと喜ぶよ」


三人とも満面の笑みだ。克弥はまだ恥ずかしそうにしながら


「三人とも、ありがとう」


竜也は驚いた顔をして


「お前お礼言えたのか・・・心底驚いたぞ」


克弥は一瞬で不機嫌になり


「なんだと・・・・・・どういう意味だ」


「俺は何も言ってないぞ~」


わざとらしくそっぽ向き口笛を吹く竜也。克弥は自分が傷を負っているのを忘れて今にも殴りかかりそうだ。


「まさか忘れたわけじゃないよね」


彩夜は克弥たちを睨みながらそう吐き捨てる。次のセリフは克弥以外の全員が驚愕した


「私と克弥は婚約者フィアンセなんだから」


『えぇ~!!!』


凪、優也、竜也、零、燈架は叫んだ。特に凪が叫んだのは見ものだ。滅多に動揺しない人だからものすごく珍しい。反応がなかったのは美麗ぐらいか。顔色ひとつ変えず優香の傷を治療している。克弥は冷静に


「その話は断ったはずだ。俺は九年前からずっと想い続けてる子がいるんだ」


彩夜は克弥に詰め寄って


「それって誰?」


「教えるか」


彩夜は優香達を睨みつけて


「こいつらが・・・・こいつらさえいなければ」


そう言って一番近くにいた優香達に斬りかかる。するとどこからともなく魅希が来て


「彩夜怖い~確かに魅希は彩夜より可愛いけど嫉妬しないでよ~」


彩夜は射殺できそうな視線で魅希を睨む。守弥が


「今日は退きましょう。彩夜様」


「そうする」


そう言って魔法で転移した。信じられないがホントに退いたらしい。美麗はのんびり


「怪我人は治療室に。急いで~」

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