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闇と光  作者: 桜咲 雫紅
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第三十話 明かされた真実

―――まだ世界が統一されていた頃、双子の子供が生まれた。その双子は大きくなるにつれ兄は光、弟は闇に染まっていったらしい。


理由?知るか。続きを話すぞ。


双子の父親は世界を二つに分け、片方を兄が治める光国。もう片方を弟が治める闇国とした。


だが、時が経つにつれ弟の闇国は廃れていった。反対に兄の光国は豊かになり栄えていった。


人は豊かで栄えてる方。つまり光国へと移っていった。


当然弟はこれを快く思わず、兄の暗殺を決行した。暗殺は成功し、兄は死んだ。


そして世界は闇に支配されていった。


数十世紀が過ぎた頃、兄の光の思想を受け継いだ元光の国民達が大反乱を起こした。


そして戦い続けること数十年。ようやく主権を取り戻した光は弟を追放した。


そして今に至る。



「大雑把に言うとこんな感じかな。もちろん質問は受け付けないから」


連夜と竜也以外の全員は絶句してる。無理もない。いきなりこんな昔話をおっぱじめられて驚かないものはいないだろう。


「それで・・・・・それが優香の事とどう関係が?」


「本題はここからだ」


連夜は優香の隣に立つ。何をするでも、何かを言うのでもなく。ただ傍に立つだけ。それが何よりも心強い。


ありがとう、連夜。


「私の力は・・・・闇の力だ」


驚愕に目を見開くもの。手で口を覆い黙り込むもの。目を伏せ静かに目を閉じるもの。反応はそれぞれだ。


「連夜と竜也は知ってたの?」


いち早く冷静に戻った凪が二人に問いかける。二人は黙って頷く。


「なんで黙ってた!!!」


声を荒げて二人に詰め寄る凪。二人は黙り込んでいる。重い沈黙が一同を包んだ。


「優香が言わないでほしい、って言ったからだ」


全員の視線が優香に流れる。優香は小さな声で「皆に余計な心配をかけないように二人には黙っててと頼んだ」


「なんで優香だけが闇の力を持ってるの?」


「違う。克弥を除いた俺ら全員が生まれたとき闇が宿ったんだ」


優香ではなく連夜が即答した。


「――――――――――――ッ!」


「「・・・・私達も闇の力を継いでるの!?」」


「そうだ」


「じゃあなんで私達には封印がないの?」


「優香が・・・なって・・・・んだ」


「え?」


小さすぎてよく聞き取れない。


「優香が俺らの闇の入れ物になってくれたんだ」


「どういう・・・」


「つまり、俺ら全員の闇が優香の中に入ってるってことだ」





簡単に話すと


まず、後継者・守護者の印を持つものが生まれる。その全員が闇を持って生まれたので、闇に飲まれてしまう前に炎の後継者・優香に全ての闇が入れられた。


何故優香なのかというと、優香の力は後継者・守護者全員の中でずば抜けて強かったのと炎は浄化を伴う。これなら闇を押さえつけられる可能性が一番高い、と緋寒が判断した。というわけだ。


「浄化なら水だって」


凪が竜也に詰め寄る。竜也は低い声で


「言っただろ。俺らの誰も優香ほど力が強くなかったんだ」


「お前の中に入ったままだったら確実に死んでたぞ」


連夜も冷たく付け足す。その声音には向け所のない怒りが含まれていたのだが、優香以外気づいていないようだ。凪は連夜の胸倉を掴み、怒鳴る。


「仲間を犠牲にして生き延びるぐらいだったら死んだほうがマシだ!!」


「俺だってそうだよ!」


凪の手を強引に振りほどきながら怒鳴り返す。瞳が薄い紅に染まっている。感情が高まっているせいだろう。若干息も荒い。


「凪、連夜だって怒りを抑えてるんだ。落ち着け」


竜也が凪をソファーに座らせる。そして、その耳元で「これを聞かされたときあいつ緋寒に殴りかかっていったよ。しかも神をも恐れない罵詈雑言を浴びせまくってたよ。あの時の連夜ほど怖かったものはないね」ブルッと身震いをしてみせる。まぁ本心から言ってるんだけど。


凪は意外そうな目つきで連夜を見る。感情的になるタイプではないと思ってたんだけど・・・。


「とにかく、結論を言うと彩夜の狙いは私だ。正確に言うと私の中にある闇だね」


「でもなんで?闇が欲しいなら優香ちゃんと戦ったときに奪えばよかったじゃん」


燈架がもっともな事を言う。優香は「それだよそれ。そこが引っかかるんだよね~」と一人でブツブツ言ってる。ついにおかしくなったか。


「機を待っているんだろう」


克弥が口を突っ込む。言っちゃ悪いが存在自体を忘れかけて「聞こえてるぞ」


じとっと睨まれる。慌てて目をそらす優香。克弥は額に青筋を浮かべながら話を続ける。


「優香の闇を取り出すには火・風・水・雷の後継者が揃ってないといけない。だからあの時は退いたんだ。あとは年齢の問題かな」


「年齢・・・それだ!」


「どれだよ」


「私の力と私の中の闇の力が完全に融合する日が十六歳になったときなんだよ」


連夜と竜也を含めた全員が目を見開く。二人もこれは知らなかったらしい。


「でも彩夜はこの事実を知らない。だからこの戦いで私達が勝てば全てが終わる」


「なんで断言できんのさ・・・」


凪がため息をつく。優香は自信満々の笑顔で「大丈夫大丈夫。私、無敵だから」


ちなみに、今の台詞にまったく根拠はない。なのに自信満々で言い切る優香が凄い。





最高指揮官室から解散した後の工作員部隊隊長室。


「戦争か・・・この中の誰かが死ぬのかな」


凪は悲しそうな笑みを浮かべる。目の前で仲間が傷つくなんて・・・見たくない。


「・・・戦争はそういうもんだ。この中の誰が死んでもおかしくない」


竜也は低い言葉で呟く。無差別に人を殺し、物を壊し、ついには自分すら壊してしまう。それが戦争だ。


「優香はどうやってこの戦争を終わらせる気だろう」


「さあな。あいつの考えは読めないからな。そんなのはどうでもいいんだ・・・俺、戦争前にお前に言っときたいことがあるんだ」


ごくりとつばを飲み込む。凪は不思議そうにこっちを見てる。緊張する。だが、今しかチャンスはないんだ。十年間ずっと隠してきたこの気持ちを・・・言うんだ。


「俺・・・お前の事が・・・・・・好きだ」





「優香・・・お前、彩夜と相打ちになるつもりだろ」


「連夜はいつもいつも鋭いね。でも、それしか道はないんだ。この因縁を断ち切るためには、誰かが犠牲にならないといけないんだよ」


「だからってお前が死ぬことないだろう」


優香に詰め寄る連夜。優香は視線を下に向け、自分の左肩を触る。


「私、小さいときなんて呼ばれてたか知ってる?」


突然話が変わったので連夜は眉をひそめる。いきなり何の話だ?優香は下を見たまま続ける。


「忌み子って呼ばれてたんだ」


「忌み子?なんでお前が・・・」


「小さかった私の体には収まりきらないほどの闇を飼っていたからね。力を制御できずに感情の揺れに反応して人を傷つけてしまってたからだよ」


初めて聞く話だ。優香にそんな過去があったとは。今とは正反対だ。


「そんなときだよ、彩夜や美麗ちゃんや竜也、優也、燈架に会ったのは。あいつらがいなかったら今の私はいない。もちろん、連夜も凪も魅希も克弥も守弥もね」


優香は顔を上げる。優香は儚く消えてしまいそうな淡い笑みを浮かべていた。連夜は目を見開く。優香がこんな風に笑った顔など今まで見たことがない。


「だからあいつらを護るためだったらこんな命、くれてやるよ。私は皆が幸せならそれでいいんだ」


きっぱりと言い切る。連夜は声を出そうと口を開くが、肝心の言葉が思いつかず口をパクパクさせるだけ・・・


「皆には言わないように。言ったら絶対怒られるからね。特に凪は」


「・・・・・あぁ」


そういうだけで精一杯だった。優香はとうの昔から覚悟を決めてたのだ。いまさら俺が何か言ったとしても無駄だろう。


「俺も、お前に言いたいことがある。黙って聞け」


「なにさ、止めても無駄だよ」


「いや・・・止めはしない。だが、何も死ぬことはない」


こんな時のために緋寒からくすねといたものがある。世界に三つしかないという貴重な封印珠ふういんしゅ。一つが“空の珠”、二つ目が“海の珠”、三つ目が“地の珠”。三つ合わせないと封印の力は発揮できないが、“空の珠”は天の全てを操れる珠。“海の珠”は海の全てを操れる珠。“地の珠”は地の全てを操れる珠。


「うわぁ、綺麗な珠。この珠は今の空と同じ雨が降ってる。面白い」


「お前と彩夜の闇をここに封じ込めば終わりだ」


「な~るへそ。頭いいね」


「てなわけで、お前これ持ってろ」


「了解。戦争終結後、これに封印してバンバイザイだ」


「これなら誰も死なずに済む」


優香は小さく頷き、外を見る。この因縁に終止符を打ったら、彩夜と再び笑い合えるだろうか。唇を引き結ぶ。そんなわかんないことを思っていても仕方がない。


「どうして・・・・どうしてこうなる。私はっ・・・あいつと戦いたくないのにッ」


悲鳴のような声が漏れた。連夜にしか言えない本音だ。自らの体を抱き、震えを押さえながら心の中にわだかまっていた物を吐き出す。


「私は皆が幸せならそれでよかった。彩夜が笑ってくれてたら良かったんだ!なのに・・・なんでこんな事になる!私は彩夜と戦いたくない。誰とも戦いたくない!本当に私は生まれてきてよかったのかな」


連夜は静かに歩み寄り、優香を抱きしめる。優香ははっと息を呑み固まる。


「他の誰がなんと言おうと、お前は生まれてきてよかったんだ。少なくとも、俺は優香に人生を変えてもらった。優香に会って、俺は護りたいって思いを知ることが出来た。それは優香が生まれてこなければ変わらなかったし、知ることも出来なかった。俺はあのままのたれ死んでいた」


連夜は口元に綺麗な笑みを浮かべ、続ける。


「生まれてきてくれて・・・俺に手を差し伸べてくれてありがとう」


優香の瞳から大粒の涙が溢れた。今まで生まれてきてくれてありがとうなんて言われたこともなかった。その言葉が凍り付いていた心を優しく溶かしていく。今なら自分の気持ちに正直に向き合える。


「俺、お前のことが好きだ。初めて会ったときからずっと・・・」

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