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闇と光  作者: 桜咲 雫紅
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第二話 再会

光城の七階(最上階) 定例会会場


「あいつは今頃出撃準備している頃か」


窓から外を眺める男、緋寒ひがんは少し悲しそうに呟く。足元にいる普通のより大柄な紅い瞳の狼が、主人を気遣うように足にすり寄る。


「でしょうね。今隊列を整えてるらしいですよ」


緋寒の言葉に頷いた男、風華ふうかは銀色の瞳の白虎びゃっこの頭を撫で、そう言い


「あぁ。俺のもそう言ってるぞ」


蒼い瞳の川獺カワウソを肩に乗せながら歩み寄ってくる男、聖藍せいらんもそう言った。


「ところで、緋寒。なんで悲しそうな顔してんだ?」


深緑の瞳の猫を抱き上げながらそう言った男、翡翼ひよく


「なんでかな、俺にもわからない・・・・」


外は見とれるほど綺麗な青空。だが反対に緋寒の心は曇りのまま、晴れることはなかった。

《その頃の闇の軍勢 黒軍》



優香達が出撃準備を始めているとき、闇の軍勢は光の国土に侵攻しようとしていた。闇と光の国境線にある通称『くれないの森』に闇の軍勢は集結していた。


その軍から少し離れた所にある木の根元で、一人の男の子が懐かしそうに森を眺めていた。昔よくこの森に息抜きに来ていたことを思い返していたのだ。それと、その頃知り合った女の子のこともだ。無鉄砲で無茶苦茶な女の子。名前は忘れてしまったが、その女の子がいなければ今の自分は多分いなかっただろう。今でも鮮やかに思い出せる。



七年前のことだ。その日は珍しく一日中暇になったから、朝から『紅の森』に行くことにした。着いたら早速いつも座ってる木の根元に、いつものように座ってのんびりするはずだった。だが突然足音が聞こえた。(こんな森に来る物好きが他にもいたのか。)そう思いつつ足音のする方向を見る。そこにいたのは自分と同じぐらいの女の子が一人。女の子もこっちに気づき近寄ってきた。そして


「竜也?なんでこんな所に・・・・」


(いきなり話しかけてきて人違いかよ。てか竜也って誰だよ)そう言いたいのを堪えて


「人違いだ」


少し冷たくそう言ってそっぽ向いた。こう言えば、たいていの奴は怖がってどっか行く。こいつもどっか行くだろうと思っていた。だが女の子は平然と俺の横に座り


「竜也じゃないの?じゃあ誰?なんで竜也と同じ顔なの?」


(俺が知るか!というかなんで俺の隣に座る?!)と思いながら、無愛想に


「俺は克弥かつやだ」


「克弥ね・・。私は  って言うの、よろしくね。克弥君」


「よろしくね。じゃねぇ!お前人違いしたこと忘れてんのか?」


「そうだったっけ?ごめんね、克弥君」


そう言って笑った女の子。初めてだった。今まで俺に近づいてきた奴らは、外見だけで寄ってくるバカ女共か、媚を売りに来るアホな男共しかいなかった。そいつらも、俺が少し冷たくするとすぐ離れてく。なのにこの女の子は、冷たくしても、怒ってもどこにも行かず笑ってた。それから一ヶ月間、時間があいたら女の子と一緒にすごした。あの女の子のおかげで、俺は笑顔を取り戻せたんだ。



昔の思い出に浸っていたとき突然


「兄さん。こんなとこにいたんですか?」


「克弥様。そろそろ進軍の準備をいたしませんと」


「あぁ。そうだったな」


やる気なさげに呟く克弥。年は十四歳。闇の火の国後継者である。神弥の兄で、竜也に瓜二つ。だが髪は明るい茶髪。いつも軽い口調で本心が読めない。闇の国では彼氏にしたい人四年連続No.1。闇の最高指揮官。


「すぐに準備しましょう」


克弥にそういった男の子。名は守弥かみや、十四歳。克弥の弟で、髪は黒。紳士的な好青年である。口調はいつも敬語。兄に負けないぐらいカッコいい。最高指揮官補佐。


「ほら兄さん。早く指示を出してください」


「わかってる」


気だるそうにそう言い、よく通る声で


「全軍突撃。狙いは各国の当主および後継者だ!他の奴はあまり傷つけるな。わかったな」


「おぉ!!」


遠くからは別の指示が聞こえる。


「奴らに我らの力を思い知らせてやれ」


そして次々と光に侵攻してい行った。



《その頃の優香達》 


優香ゆかは隊列を整える味方を見ながら


「はぁ~。戦いか・・・」


と呟き重いため息をついていた。全員の命を預かるにはまだ幼すぎたし、経験も足りていないのだ


「誰も死なないでほしい」


叶わないとしりながらもそう呟いた。


「優香。そろそろ出陣だ。命令を」


竜也りゅうやが優香の頭を優しく撫でながらも指示を仰ぐ。優香は頷いて大声で


「・・・・先陣、突撃準備」


優香の後ろで味方が武器を構える。そして前方に敵が見えた瞬間


「先陣突撃。私に続け!」


そう言い真っ先に飛び出していく優香。後ろから


「火の後継者優香に続け!」「みんな遅れないようにね」「みんな魅希みきのために頑張って~♪」「火の後継

者の周りを固めろ」


そう言いながら優香に続く竜也、優也ゆうや、魅希、れい。その後を味方の兵士たちが追いかけてゆく。優香が敵の先陣に斬りかかり、その後を追い、竜也達が敵の先陣を斬り崩していく。斬ると言っても、殺さない程度に打ちのめすだけだ。敵兵の何十人かが一気に叩きのめされた。それを見た敵兵達が


「つ・・・強い・・。おい!大人数で囲め」


周りにいる闇兵に呼びかけ、十数人で優香達を囲んだ。優香達の近くにいた光兵も負けじと


「後継者様方をお守りしろ」


と怒鳴りながら優香の近くにいる敵兵をなぎ倒していく。すると、敵の指揮官らしき人物が


「お前らは他の兵を足止めしておけ!その中にいる後継者は俺がやる」「皆さんは巻き添えにならないよう下がっててください」


そう言い放ち優香達の前に現れた二人。


「お前らが最高指揮官と副官か」


「ご名答。御初にお目にかかります、光の最高指揮官様とその副官様方。僕の名前は守弥と申します。以後お見知り

おきを。そしてこちらが「俺が神弥の兄で闇の最高指揮官の克弥だ。よろしくな♪」


丁寧に自己紹介する弟の守弥を遮って、友達に名前を教えるように、じつに気安く名乗ってくれた兄の克弥。正直兄弟とは思えない。


「・・・で、最高指揮官さんと副官さんが何の用?」


睨みつつ優香が兄弟に聞くと


「俺らの狙いは後継者と当主。ここまで言えばわかるよな?」


「なるほど・・・・やってみな」


瞳が徐々に紅く色変わりをはじめる。不敵に笑って桜色の魔刀を構える優香。克弥が


「お前が後継者か?」


と言うと優香は、上に羽織ってた服を脱ぎ、服をまくり左肩を見せる。そこには紅い色で『火』という字の刻印が・・・それは、生まれたときから体のどこかにある後継者の証


「これでも信じられない?」


「なるほど。本物みたいだな。お手並み拝見」


そう言って緋色の魔刀で斬りかかってきた。受け流しながら蹴りを放つ。が、克弥はこれをあっさりかわし、横殴りの斬撃ざんげきを叩き込む。受け止めて、そのまま突きに転じる。それを避け双方再び斬りあう。そこに零が来て、克弥の刀を夕焼け色の魔刀で造作もなく受け止める。だが克弥は零を見ていない。目を見開いて優香を凝視している。


「余所見なんて余裕だね」


そう言い袈裟斬り(けさぎり)の一撃を送り込んでくる。


「くっ・・・」


慌てて防ぎ、零に意識を集中させる。考え込むのは後回しだ。


「優香!」


という声とともに、優也と竜也が優香の元に駆け寄ってきた。少し離れたところでは、魅希が敵をオトすのにいそしんでいる。いや・・・・・案外楽しんでるかも。


「竜也!優也!どうして・・・」


「そんなの決まってんだろ」


「大切な仲間・・・いや、親友だからだよ」


竜也と優也が交互にそう言って守弥に斬りかかっていく。優香は、戦場であるにもかかわらず俯いて嬉しそうに笑いながら


「カッコつけすぎなんだよ・・・二人そろって」


そう呟き零の手助けをしようと顔を上げたとき、目の前で敵兵に攻撃をはじかれ、体勢を崩した味方の兵士が斬られそうになってるのを見た。刹那、迷わず敵兵と味方の兵の間に入り、味方の兵を横に押して剣撃から逃れようとした。が、一瞬遅かった。優香は背中に鈍い衝撃を感じ、次の瞬間激痛が背中にはしった。地面に倒れこみ、顔を歪ませながらも味方の兵士が無事なのを見て


「無事・・・・っよかっ・・・・・」


少し動いただけでも激痛がはしる。零達がこっちを見て息をのみ、魅希が優香を斬った敵兵を容赦なく打ちのめした


「優香!」


「おい!誰か優香を後陣の治癒部隊のとこに・・・」


「急いで!」


誰かがそう叫んだのを最後に優香の意識は闇に飲まれた



★★★★★★★★


克弥は倒れた優香を見て頭を押さえた。今すべて思い出した。昔、優香と会ったことがある。一ヶ月だけだけど共にすごしたあの女の子だ


「兄さん。いったん撤退しましょう」


守弥がそう耳打ちしてきた。運ばれていく優香を見ながら克弥は頷いて


「いったん退け!」


そう命じ撤退した



《三時間後 三階 光城の病室》


優香はゆっくり目を開けた。夢を見ていた、懐かしい昔の夢。竜也とそっくりの顔だけど無愛想な男の子の夢だ。傷をおして起き上がろうとするが、血が足りず上半身を起こすのもままならない。病室には誰もいない。優香は首にかけてある笛を取り出し吹いた。十秒後、一匹の狼が音もなく病室に入ってきた。そして


『俺を呼んだか?優香』


「うん。今すぐ私を『紅の森』へ」


『その怪我でか?傷が開くぞ』


「いいから・・・お願い、紅蓮」


少し考え込む紅蓮。そして


『わかった。仕方ないな』


そう言い、紅蓮は優香を背中に乗せて走り出した。

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