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闇と光  作者: 桜咲 雫紅
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第一話 後継者

プロローグ



「ったく、無駄な時間くっちまった」


一人の女の子がそう呟き小路を歩いてく。その女の子の後ろには無数の屍(見える部分はほぼ赤黒い痣に覆われてる男五人)が倒れている。男の中の比較的軽傷の奴が「なん・・・で・・こんな子供に・・俺らが・・」とか言ってるのをきれいに無視し、大通りに出る。


「おや。もう終わったのかい?いつもすまないねぇ」


そう言ってこちらに歩み寄ってくる男。この大通りでお店をひらいてる人だ。名は桐樹とうき。みんなには桐じいさんとか桐じいとか呼ばれ方は様々だ。


「いいんだよ、桐じいには世話になってるから。こんくらいしなきゃ」


少し嬉しそうに微笑む女の子。桐じいは女の子の頭を撫でて


「でもいいのかい?今日は大事な用事があるんじゃなかったの?また怒られるよちゃうよ?」


手で口元を隠し含み笑いをしつつ腕時計を見せる桐じい。女の子は腕時計を見て


「・・・ヤバッ・・・。殺される~!!またね桐じい~」


そういいながらものすごいスピードで走っていく女の子。それを見送りながら桐じいは


「転ばなきゃいいけど・・・・」

「ヤバイヤバイヤバイ~。ぜっっっっっっっっったい怒られる~てか最悪殺される~」


叫びながら全力疾走している女の子。名は優香。十四歳。肩まである黒髪に好奇心に満ちた黒目。いっけんどこにでもいる普通の女の子。だが、似合わない刀を腰に一振り、左肩にもう一振り斜め掛けしている。


「このままじゃ間に合わない・・。どうしよう・・どうしよう・・・そうだ!」


大声を出し何事かと振り返る人々をしりめに人気のない小道に入り


「ここなら誰も巻き添えにしなくて済む」


目を閉じ集中する。全然みえないが、彼女は魔導師なのだ。不可視の力で上着がはためく、優香は叫んだ。


「風よ!」


瞬間すさまじい風が巻き起こり優香の体は宙に浮かんだ。


「定例会の会場、光城こうじょうに行け!」


優香は鋭く命じ、風は命令通り目的地へ。



              ★★★★定例会会場 光城★★★★

火・風・雷・水・この四ヶ国の中心、光城。周囲を湖に囲まれた光り輝く美しい城。この光城は、主に国同士の会議や月に一度の定例会の会場として使われる。


今日はその四月分の定例会がある。のだが・・・・・・。



「あいつはまだ来ないのか。もうすぐ定例会が始まるというのに・・・。まったく・・」


時計を見ながら呟いている男、名は緋寒ひがん。火の国の現当主である。


「まあまあ・・。落ち着いてください。まだ十時にはなってませんから」


そう言いつつ緋寒をなだめる黒髪の青年、名はれい、十七歳。優香の兄である。道行く女性が必ず振り返りそうなほどカッコイイ。妹の優香にはとても甘い。第一部隊隊長。


「相変わらずだねぇ。火の後継者は・・・」


呆れ混じりに呟く男、名は聖藍せいらん。水の国の現当主である。


「あいつらしい。そう思うでしょ?美麗ちゃん、竜也」


笑いながら隣の男女に話しかける女の子。名はなぎ、十四歳。水の国の後継者である。冷徹冷静かつ無愛想だが“親友限定”で優しい。工作員の隊長。


「そうだね」


苦笑しつつ応じる眉目秀麗な男の子。名は竜也りゅうや、十四歳。水の国後継者の守護者である。髪は漆黒で、その笑みはそこらの女性なら五秒でオトせそうなほど・・・・・・・。まあ本人はやったことないけど。真面目で几帳面。第二部隊隊長。


「やっぱこうじゃなきゃね~」


穏やか+平和そうな声で断言した女の子。名は美麗みれい、十四歳。雷の国の後継者である。マイペースでおとなしいがときどき怖い言動をとることが・・・・・・。治療部隊隊長。


「美麗・・・・。それはあまりにも無責任すぎるよ」


うろたえながら美麗の言葉に小声で反論した男の子。名は優也ゆうや、十四歳。雷の国の後継者の守護者。竜也と同じくらいの容姿ルックスの持ち主。性格が控え目なため他人に強く言えないのが玉に瑕。だが友のためなら普段見せない強さを発揮。第三部隊隊長。


「確かに優也の言うとおりだ。美麗・・お前少しはあの火の後継者を止めろ。友達なんだろうが・・・・」


そう言ってため息をつく男。名は翡翼ひよく。雷の国現当主である。


「いいじゃないですか、元気があって」


薄く笑って翡翼をいさめる男。名は風華ふうか。風の国現当主である。


「風華!お前までそんなこと言って・・・・」


「二人とも、魅希のために争わないで」


そう言いながら二人の間に立った女の子。名は魅希みき、十四歳。光の国現当主である。(優香を除いた)自他共に認める美少女だが、ナルシストで自称“世界一の美少女”らしい・・・。第四部隊隊長。

翡翼が何か言おうと口をあけた



ガッシャーーーーーーン         ドサッ!



突然窓ガラスが割れ、黒い塊がふってきた。そしてその塊は起き上がって


「痛っ・・・ったく・・・・怪我したらどうすんだか、まあいいや。なんとか間に合った」


そう言って立ち上がった塊は、周りを見回して


「どしたの皆?私間に合ったでしょ?」


ほとんどの人は(そういう問題じゃないから)と心の中で言うだけにしてるが、


「そういう問題じゃない!お前は毎回毎回なんで遅刻ギリギリに来るんだ!!時間に余裕を持てと何千回言わすんだ!」


「そんなに怒らなくてもいいじゃんか~間に合ったんだし、緋寒に文句言われる覚えはないね」


「緋寒と呼ぶな!ここ(光城)では当主と呼べ!これも何千回言わせる気だ!」


「火の当主と優香ちゃん、そこまでにしなよ。定例会始まるよ」


そう言って二人の間にわって入った女の子。名は燈架とうか、十四歳。風の国の後継者である。芯が強く、心優しく、とても友達思い。弓兵隊と魔法使い部隊の隊長。

壁に掛けてある時計を見ると、もうすぐ定例会が始まる時刻になる。緋寒は仕方なく説教を中断して、自分の席に座る。そして厳かに


「各国の後継者は別室で待ってなさい。では、今から定例会を始める」




後継者控え室


ここは、光城の七階にある後継者達の控え室。中は質素で装飾品は一切ない。壁の大半を使ってる本棚には、優香と竜也と優也が家から暇つぶしに持ってきた本がたくさん置いてあり、床には魔法書や刀、剣、弓矢などが散乱している。


「はぁ~。どうせこうなるのわかってたんだから、来なきゃよかった。失敗した」


優香はため息混じりにそう呟いた。ちなみに優香は全部隊の最高指揮官だ。見えないけど


「優香っていつもそう言ってない?」


呆れ混じりにそう言った凪。


「確かに」


笑いながら同意した竜也。何も言わないが、竜也の隣に座っている優也も同意見らしく凪の言葉に頷いている。


「まぁそう言いながら来るのは優香ちゃんらしいよねぇ」


美麗ちゃんはお茶を飲みつつのんびりした口調で言って、燈架も


「そうだね。優香ちゃんは定例会サボったことないしね。私は一回サボったけど」


「魅希は定例会なんかよりメイクしてたいのに、優香が邪魔するんだょ」


「お前はメイクより剣技を磨け」


若干怒り気味な優香。


「メイクのが大事だし」


そう言って早速メイク道具を取り出す魅希。ついに優香がキレて、


「魅希もう一度今の言葉言ってみな♪。ほら、早く」


「ちょっと待ってて、このメイクが終わったら・・・」


ブチッ


「おや?なんの音かな」


竜也が若干引き攣った笑みを浮かべつつ後退する。みんなも同様にゆっくりではあるが後ずさる。彼らは経験上知っているのだ。この後なにが起こるか、この自称美少女にどんな不幸がふりかかるか。案の定優香が魅希に掴みかかり、魅希はメイク道具をしまいつつ優香の攻撃をあしらってる。


「おい!逃げんな。この自称世界一の美少女とか言ってる馬鹿魅希が!」


「違うよ~自他共に認める世界一の美少女女神の魅希だよ♪」


「ふざけんな。その自慢の顔を変形させてやる!」


「えっ?魅希は整形しなくても可愛い?やっぱりね」


会話がかみ合ってるようでかみ合ってない。笑いそうになるのを必死に堪える凪と竜也。今笑ったら確実に火の粉が降りかかってくる。こんなくだらない事で寿命を縮めるなんて馬鹿げてる。


「やめなって。優香ちゃんに魅希も」


「二人とも、喧嘩はよくないよ。お茶でも飲んで落ち着きなさい」


二人の穏やかな声が止めに入るが、時すでに遅し。もう誰にも止められない、と覚悟したそのとき、城内に警報が鳴り響く。それに覆い被さるように


『敵襲!敵襲!各隊の指揮官および最高指揮官は至急会議室へ。繰り返す』


優香と魅希は喧嘩を止め、全員は緊張した面持ちで会議室へ。



                   《その十分前》


各国の当主は自国の一ヶ月間の出来事を報告し合っていた。報告と言っても、一ヶ月でたいした事が起こるわけもなくもっぱら大人達の雑談タイムになっている。例えば自分の後継者を自慢したり、新しく開発した武器の性能を話したり、今度の最高指揮官は戦士をまとめられるかなど。そのとき


『敵襲!敵襲!各隊の指揮官および最高指揮官は至急会議室へ。繰り返す』


敵襲を告げる緊急放送が流れ、緋寒が


「後継者達を呼べ」


と言ったのと同時に、ドアが開いて


「敵襲だ!会議はいったん中止にしろた方がいいぞ」


という優香の声がほぼ同時に放たれた。


「わかっている。最高指揮官優香!これより一万の兵を伴い、闇を追い出してこい!」


「了解。行くぞみんな」


優香がそう言うと各々から力強い声がかえってきた。


「優香。深追いはするな。光から追い出したら、そのまま待機だ」


「わかってるよ。口うるさいな」


にっと不敵な笑みを浮かべながら走っていく。

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