ロレッタと一夜
-自宅-
「おかえり、シャワー入んな」
「ありがと、今日の夕飯は?」
「今日ね、クレアさんからおしえてもらったこれ、シェパーズパイ、とっても美味しいから、さっさと体洗ってきなさい」
「はーい」
シャワーに入り、そのパイを食べた、正直イギリス料理に期待してなかったけど、クレアさんやフルードさんから聞いた料理はどれも美味いんだよなー。ロレッタがつくるお陰かな。
「ごちそうさま」
「はい、じゃあ後片付けよろしくー」
「うぃ」
その後、2人でゆっくりサブスクを見た、久しぶりに聞く日本語は、なんだか懐かしさを覚える。
「蓮、うちらがここにきてもう1ヶ月だよ」
「そんなたったのか、そろそろ開幕するしな」
「えぇ、全てが順調ね」
「あとは、信じるしかないからな」
………
「蓮、純花とは、まだ連絡とってる?」
「あぁ、忙しくてなかなか見れないけど、ほぼ毎日くるよ」
「そう、あの子も小さいころから蓮にくっついてたもんね」
「あぁそうだったかな?」
「覚えてないの?小学校のとき、遠足で蓮と純花が別の班になって、純花ずっと泣いてたんだよ」
「あぁ!あったなそういえば」
「それでうち純花と班交換してあげたんだよ、そしたら純花すっごい笑顔になっちゃって」
「だからロレッタ、遠足行きたくないって言ってたのか」
「えっ!うちそんなこと言ってたの…?」
「あぁ覚えてるよ、3人一緒じゃないなら行きたくないって、先生に泣きながら言ってたな!」
「嘘、恥ずかし…」
その後も、中学や高校と、懐かしい話をしていたら、いつのまにか日付が変わろうとしていた。
「こんな時間か、そろそろ寝室戻るよ」
「まって!」
ロレッタに引き留められたのは、これが初めてだった。
「明日はオフだし、夜更かししちゃおうよ、久しぶりにゲームとか、アニメとか!」
「悪い、今日は移動と交渉で疲れちゃった、また今度やろう」
「蓮…」
「じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ…」
そう言って部屋に戻った。そしてベッドの上でスマホを開くと、とんでもない量の通知が来ていた。
「純花…」
中身は愛の言葉や嫉妬にあふれた言葉などで溢れていた、こいつの独占欲がどれほどすごいのかは、もうとっくに知っている。
「純花、そんなに連絡されてもいちいち返信できないぞ」
すぐに既読がつき、返信がくる。こっちは0時過ぎだから日本は9時過ぎぐらいだろうか。
「ごめんね、でも毎日の連絡は蓮くんがやるっていったでしょ、約束やぶったら許さないよ」
「ごめん、ちょっとテレビ見てた」
「どうせロレッタちゃんと一緒でしょ?仲がいいね」
「ありがとう」
「褒めてないわ!!」
「ごめん」
「そんなことより本題だけどさ、私、本社移動が決まったの」
「本当か!おめでとう!」
「これでまた会えるね」
「そうだな」
「それでさ、蓮くんにお願いがあって…」
「なんだ?」
"コンコン"
「蓮、ちょっといい」
「ロレッタ!」
俺は急いでスマホの電源を消した。
「あら、お邪魔だった」
「いやいや、それよりどしたの?」
「要はないの、ただ蓮と話したいだけ」
そう言うと、蓮が寝ているベッドの隣りに座った。
「どーせ純花でしょ、あの子、まだ未練もってるの?」
「だらだら」
「それは厄介ね、でも、純花らしいわ」
そう言うと突然、俺の両腕を掴んだ。
「ねぇ、うちが高校の時告白してから、うちら付き合ってるんだよね?」
「…はい」
「はぁ…それ浮気だから、純花とは友人までって言ったよね?まだ他の女に目移りしてるの?」
「違うんだ、純花を放置したらいつ爆発するかわからないだろ?だから連絡しあってるって、前から言ってるじゃないか」
「うちはあんな提案反対した、でも蓮は優柔不断だから承認した、あのとき、ちょっと嫌いになったもん」
「ごめん…」
「もう連絡しなくていいんじゃない?うちらはもう26、純花もうちらも新しい恋を進めないと」
「でも…」
「あんたって本当そういうとこあるよね、その性格が、いつかうちらの仇にならないことを祈るよ」
そう言うとロレッタは手を離し、ベッドから降りた。
「なんだか冷めちゃった、じゃあおやすみ、チキン野郎」
やってしまった、自分でもこんなこと間違ってるなんてわかってる。でも、暴走した純花のほうが、きっと脅威になるだろうから…そう思いながら、眠りについた。
-翌朝-
ロレッタはいなかった。そしてテーブルにはサンドイッチが置いてあった。
「ロレッタ、優しいよな」
ふとスマホを見ると、ロレッタから連絡が来ていた。それは長い脅迫文だった。
「おはよ、純花のことは忘れられた?あんたにはうちしかいないもんね、よかったね、こんな献身的で情熱的な女性いないんじゃない?うちへの感謝を確認したなら、さっさとそれ食べて、うちの寝室にきて。1日楽しみましょう」
「……まじか」
「まじよ」
その後、夜まで2人で過ごし、リビングで夕食をとった。
「蓮どうしたの?腰なんかおさえて」
「ロレッタのせいだろ…」
「今日は唐揚げよ!テレビでも見て、ゆっくり食べましょう」
そう言うとロレッタはテレビをつけた、キャスターがスポーツニュースを伝えていた。
「プレミアリーグの開幕が近づいてきています!その前にチャンピオンシップやリーグ1、2などの開幕もありますが、そんな中私が注目するのはここ、リバプール!ここは昨日ドイツから獲得した…」
「いつか、ウェイクフィールドがニュースになるといいね」
「あぁ、そのためにやってきたんだ、とにかく勝つこと、予算を増やして、リーグ1昇格だ!開幕はもう近い」
大きな補強はしていない、スタジアムも町も小さいこのウェイクフィールドで、俺たちは新しい人生を始めた。そして来週、運命のリーグ開幕がはじまる、早速ホームでやることだし、是非頑張ってもらいたい。
「よし、明日に向けて、寝るぞ!」
「まて」
とても強い力で、腕を掴まれた、そして笑顔でこう言った。
「うちらの愛は、ここから開幕だよ?」
「え?だってさっきまでずっと…」
「あれ?あれは…プレシーズンよ、ここからが、本番だから」
「か、勘弁してー!」




