再会
-ロンドン-
純花に指定されたホテルに来たけど…でかいなぁ。
「蓮くん!」
「純花!久しぶり」
純花のほうからハグしてきた。
「会えてうれしいよ」
「私も、ロレッタちゃんは、来てない?」
「あいつは仕事だよ、純花によろしくだって」
「そっか、それは、残念だなー。それよりさ、順調?蓮くんのクラブ」
「あぁ、なんとかシーズンイン出来そうだ」
「よかった、私も蓮くんたちを心配してたから、それでさ、そのー」
純花はもじもじしながらも、真っ直ぐ見つめていった。
「ロンドン、観光しない?私今日オフだし、せっかくだからいろいろ周りたいなーって」
「あぁ、俺も最近仕事ばっかだったから、行こうか」
「うん!へへ」
そうして2人でロンドンの観光地をまわった。食事もして、いっぱい写真を撮った。あっという間に夕方になり、帰りの電車まで送ってもらった。
「キングスクロス駅すごいね、9と3/4番線もちゃんとあるんだね」
「あぁ、あそこはいつも人が多いな」
「蓮くん、今度はいつ会えるかな?」
「どうかな…シーズンが始まったら忙しいだろうし、昇格にむけてやることはいっぱいだからな」
「そっか…私ね、もしかしたロンドン本社に転勤するかもしれないの!そしたらさ、また会おうね」
「もちろん、今度はロレッタも連れてくるよ」
「無理は、しないでいいから、2人でもいいし」
「それじゃあ、また会おう」
「後で連絡するね、じゃあね」
「あぁ」
そう言い残して、帰路についた。
-自宅-
「おかえり、純花はどうだった」
「相変わらずだよ、そういえば、今度ロンドンに転勤になるかもって言ってた」
「そうなんだ、そしたらまた3人一緒だね」
「そうだな、俺たちはどこ行っても一緒みたいだな」
「それでさ、今日選手に会いにいったんだけど…」
ロレッタは神妙な顔で話した。
「士気は低かったわ、みんな降格しなければいいやーって感じ、仮にもプロの選手なのに」
「そうか、今度ベイルに話しつけとくよ、人員整理の参考になるし」
「でも補強はできないって言ってたじゃない」
「4部以下にも上昇思考があって、安い給料でもやってくれる若手が1人はいるだろう、今度スカウトに話つけるから」
「そう上手くいくのかな…」
-2日後-
「1人、ピックアップしました」
スカウトから俺に、そう報告が入った。
「本当か、詳細を送ってくれ」
俺がそう言うとスカウトは、部屋をでた。
「蓮、さっきの人は?」
「彼はマイルズスターリングスカウトだ、たまにはお茶出しじゃなくて本業もしたいと言っていたから、スコットランドに派遣したんだ」
そう説明しているうちに、パソコンから選手情報が送られてきた。そしてスターリングも部屋に入ってきた。
「彼はレオシンクレア19歳、ポジションはボランチ、ロンドン生まれ、かつてはアーセナルのユースにいましたが競争に負け、そこからユースを転々とし、今はスコットランドのU-21に所属しています。本人ばイングランド志望で出場機会を1番求めています」
「ピッタリだ!僕たちは強い選手じゃない、地元で多くの試合に出場する期待の若手が欲しかったんだ!それにこぼれたとはいえアーセナルのユースにいたというのは非常に期待できる、直ちに交渉だ」
「はい!これでしばらくはコーヒーの買い出しにいかなくてすむぞー!」
スターリングは軽快に部屋を出た。
「よし、てことだから行ってくる」
「えぇ、気をつけて」
翌日、俺とベイルとスターリングの3人で、スコットランドのユースチームにお邪魔した。
「はじめまして、ウェイクフィールドのceoジョナサンベイルです」
「同じくスカウトのスターリングだ、久しぶり」
「よろしくお願いします」
その子は困惑した表情で俺の方を見た。
「あなたは…?」
「オーナーの相坂蓮です、よろしくね」
「はい、お願いします」
彼と握手を交わし、席についた。
「早速本題です、シンクレア、君を私たちのチームに加えたい」
「はい、僕もそのつもりです」
「それはよかった、スターリングから君の能力の素晴らしさは理解している、早速だが交渉してもいいかな?」
「あ、ちょっと待ってください。お父さんが来るまで何も話すなと言われてるので」
「そうですか…」
その後すぐ、彼のお父さんらしき人が入ってきた。
「すいませんお待たせして、代理人のマークです」
なるほどな、父親が代理人か。
「それでは、我々はシンクレアにこちらの給与を用意します」
マークはその紙をじっくりと見つめた。
「ふっ、失礼、これは本当にトップチームの給料ですか?」
彼は不機嫌そうに答えはじめる。
「いくらリーグ2とはいっても、これじゃあ平均以下じゃないか?彼はまだ19だ!アーセナルにもいた!この有望株にたったそれだけの給料しか用意しないのか!」
我々はこの父親の気迫に押されかけていた。
「いいですか?」
「ん?君は誰だ?誰か中華のデリバリーでもしたのか!」
「オーナーの相坂です、たしかひ私たちは彼に対する評価が金額に現れていません。しかし、私たちは彼に十分な出場機会と、移籍をさせないことを約束します!」
俺が移籍という言葉を使うと、シンクレアは小さく反応した、そしそれはベイルとスターリングにも伝わっていた。
「シンクレア、ウェイクフィールドは南部の都会的な部分は少なく、ほとんどのサポーターが顔見知りばっかだ。だからこそフットボールに熱い情熱を持っている。だが君が求めているのは出場機会と、本当のホームにいることじゃないのか?」
そう熱心に説得すると、シンクレアは口を開いた。
「お父さん、僕もう移籍したくないんだ…」
そう悲しく語り始めた。
「アーセナルにいたときも、みんなと仲良くできない、ライバルなんだ。他のチームでもそう。同じポジションの子にはシューズを隠されることもあった。それからチームを転々としても、仲間も友達も出来ない、出来てもすぐにいなくなる、こんな生活もういやなんだ!」
「レオ!お前はまだ幼いんだ、世の中金だって言っただろ?仲間?そいつらを蹴落としてでもスタメンを取れ!そして金を稼いで家族を助けること!これはお前が言ったことなんだぞ!」
「嫌だ!これ以上こんな生活が続くなら、フットボールなんかやめる、叔父さんの工場を引き継ぐ」
「レオ!」
「お願いお父さん!このチームがいい!ここで成功すればもっとお金が稼げるんだよ?もっと有名なチームにスカウトされるかもよ!」
後半の言葉にはチクリと来たが、それでも彼の情熱は本物だった。
「……出来高をのせろ、10ゴールだ、それから契約書もってこい」
「はい!ありがとうございます!」
俺はこの父親に頭を下げた。
「ねぇアイサカ、僕のことはレオって呼んで」
「あぁレオ、これからよろしく」
「うん!」
その反応は、純粋な青年そのものだった。
-電車-
「オーナー、すごい交渉でしたね」
「ありがとう」
「オーナー…アイサカさん、交渉のしがいがありましたね!」
「なんとかなりそうだな」
「えぇ、あとは2人でやります。あなたがしれっと許可した"出来高"についても話し合うので」
「すいません…」
今日はひどく疲れた1日だった、通り過ぎる夕焼けに照らされた田園風景をみながら、ゆっくりと目を閉じた。




