監督探し
翌日、ロレッタと近くを散歩してからオフィスに入り、事務仕事をしていた。
「なんかさー、もっとチームを動かして、勝利へ導くような仕事したいんだけどなー」
「それは現場の人たちと監督に任せて、うちらはパソコンを動かす!」
「そうですよ、ま、監督いないんですけど」
「うわっ!いたんですか」
「監督がいないって?」
「いや、いないんですよ、うちの監督」
「嘘、前任の方は?」
「それが、息子さんが倒れてしまって、工場を支えることに専念したいとのことで」
「じゃあ、まず監督探しから?」
「それは大丈夫、候補が1人います」
「なら、安心ですね」
「いや、交渉はまだなので、2人とも、初仕事お願いします」
-ガル宅-
「相手はマーカスガル48歳、ウェイクフィールド一筋引退後はスコットランドのコーチを経て現在は子供向けのクラブコーチを務める」
「いきましょう」
ベルを鳴らすと、奥さんらしき人が出てきた。
「はじめまして、ウェイクフィールドユナイテッドのオーナー相坂です」
「秘書のマルティンです、今回は、監督打診のお願いにきました」
「あれ、秘書だっけ?」
「別にいいでしょ秘書で」
「まぁそうですか、あなたー!お客さん!」
「誰だ!」
中から強気なおじさんが出てきた。
「…このアジア人が私になんのようだ」
「初めまして、相坂です。今回は監督依頼に来ました」
「監督?面倒事の押し付けなら断る!」
「ちょっとあなた」
「お話だけでも、私たちの熱意を伝えにきたんです」
「熱意?よそから来たお前らがこのチームに熱意だと?笑わせるな」
「まぁまぁ、2人とも中でお話しましょう」
「紅茶です」
「ありがとうございます」
「それで、あいさか?だっけ、それとマーティン」
「マルティンです」
「どっちでもいいだろ!それで、なんで私に監督を依頼しにきた」
「ガルさん、僕たちはこのチーム一筋でこの町に貢献したあなたしかいないと思っている」
「私たちと一緒に、昇格を目指しませんか?」
「ゆくゆくはプレミアも目指しています、どうでしょうか?」
「ふっ、昇格?プレミア?ふざけんな!このチームはかろうじてのリーグ2なんだ、上がることも下がることもない、君たちは理想主義者か?ならなおさら断る!」
「あなた!この方たちは本気よ」
「そんなことないだろう、彼らはにはわからないだろう、そこのスペイン系にもな」
「なっ…」
「ロレッタ落ち着いて、たしかに急にこんな話されても困りますよね、どうでしょう、来週にまた…」
「お断りだ、何度も言わせるな」
「お願いします!」
ここで、ロレッタが勝負に出た。
「あなたしかいません、私たちは確かによそ者です。でも、みなさんのチーム愛を尊敬しています!ぜひ、このチームに1番詳しいあなたが、このチームを導いてくれませんか!」
「僕からもお願いします!あなたしかいません!」
「……」
「あなた、この方たちの熱意は本物ですよ、こんな機会もうないかも」
「……連絡しろ、キッズコーチを辞めて、トップクラブのヘッドコーチになると」
「あなた!」
「ガルさん!」
「ありがとうございます!」
「…また、ウェイカーズと会えるのか」
オフィスで交渉成立を伝えた、ブラウンは失敗するにかけていたらしく、いやいやトイレ掃除に向かった。ベイルからも感謝され、なんとか今日も終えた。
「やったね、蓮!」
「あぁ、なんとかなったな」
「いよいよ明日はチームに挨拶、選手とも顔合わせをするわよ」
「楽しみだな、そういえば、ガルさんの言っていたウェイカーズってなんだろう」
「それ、サポーターの愛称らしいよ、結構いいよね」
「そうなのか、めっちゃいいな」
「うちらもウェイカーズとして頑張ろ!」
「そうだな!」
自宅に帰り、ロレッタのシャワー待ちのあいだゴロゴロしていると、1通のメールが届いた。
「誰だ…えっ、純花?」
森野純花はロレッタと同じ幼馴染、大学卒業後純花は外資系に言って会うこともなかったけど、連絡なんて何年ぶりだろう。
「蓮くん久しぶり、実は今ロンドンにいるんだ!本社がここにあるから定期的に来るの、それで、よかったら今度会えない?ロンドンのこのホテルにいるから、来れるなら連絡ちょうだい」
会いたいな、せっかくだしロレッタにも言おうかな。
「シャワーいいよー」
「ちょうどよかった、純花が今ロンドンにいるらしい」
「そうなの?」
「ロレッタの方に連絡は?」
「うちは…来てないや」
「そっか、せっかくだから一緒に会いにいこうよ」
「うーん」
「どうしたの?」
ロレッタは何かを察していた。
「うちは仕事しなきゃだから、蓮が1人で行きなよ」
「えー?せっかくだから2人で行こーよー」
「明日は選手挨拶もあるのよ?1人くらいはオフィスにいないと」
「うーん、わかった」
「純花によろしく伝えて」
「あぁ」
そうして俺も、シャワーに入った。




