第二話 心霊番組 三、ブルーレイの映像(一枚目)
画像のまんなかに、マイクを持った木戸霞が立っている。まっ白なワンピースに、薄いベージュのカーディガンをはおり、いちおう清楚な大人の感じをかもし出しているが、首のぶっとい数珠のような真珠のネックレスが、それをぶち壊しにしている。周りは薄暗く、彼女を照らすライトの漏れで、かろうじて脇にある白い壁が分かるだけだ。
木戸の顔はにこやかで、とても心霊スポットのレポーターという感じではない。普通こういう怪談ものの企画では、視聴者を怖がらすために、出演者も暗く辛気くさい雰囲気で、時おり自分も怖がりながらレポートするのだが、彼女にはそういう協力の姿勢が全くなかった。まるで怖がらないばかりか、時おり冗談まで飛ばして場を茶化している。明らかに霊の存在を信じておらず、この企画自体をなめきっていた。
「さあ、ここが今日、探索する廃病院でーす」
入り口でバスガイドのように体をやや傾け、マイクを握って明るくノリノリに解説する。
「ここは、多くの医療事故やずさんな管理、法外な治療費などでたくさんの患者さんを殺したり自殺させて、数年で潰れた悪徳病院でしたー。今は廃墟になっていますが、ここに夜な夜な死んだ患者さんたちの霊が現れる、という噂なんですよおー。きゃーこわーい」
ぶりっこポーズの笑顔で決める木戸に、スタッフもあきらめているのか、時おり自分らの笑い声を被せている。白井ののが帰るまでは、もっとまじめな怪談レポートになる予定だったのが、彼女一人になると、いつの間にか下世話なお笑い番組に変貌していた。
「ここが待合室でーす」
右手をあげて紹介する。
「心霊スポットなのに、幽霊なんか全然いませんねー。困ったなー。霞、どうしよー」
スタッフの笑いを背に、手術室や病室などを周るが、どこへ行ってもふざけた調子は変わらない。トイレでは、「あらー、幽霊さんもおしっこするんですねー。と思ったら、猫でしたー」と、足元をすり抜ける迷い猫をニヤニヤと見送る。スタッフの笑いが絶えないということは、この企画は完全にお笑い路線にシフトしたようである。
「いやー、完全に期待はずれなスポットでした。まあー、噂なんてこんなもんでしょー」
裏口で、まるで残念そうでもなく言い、レポートは終わった。彼女が何も見なかったのと同じく、撮影された院内の映像にも、なんら怪しいものは映っていなかった。
これだけでは番組にならないので、おそらくこれは前半のおちゃらけ部分に使い、後半には他のタレントによる別のスポットのまじめなレポートを持ってくるつもりなのだろう。




