表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第六話 リアル福笑い

 これは白井ののの兄が、小学生のころに聞いた怪談話である。他校で起きた事件らしいという、あくまで噂話の域を出ないもので、真偽のほどは定かではないが、かなりの気味の悪さがあるので、ここに紹介する。






 平成の、ある年の正月のこと。数人の小三のガキどもが、同じクラスのAの顔写真を大きく引き伸ばして二枚コピーし、それで福笑いをした。一枚目は顔を肌色に塗ってのっぺらぼうにし、二枚目から目鼻、口や耳などの顔の各部を切り取ってピースにする。これらのピースを、一人ずつ目隠しして一枚目に乗せて顔を作っていき、福笑いをして遊ぶのである。クラスで親しくもなく、今で言うぼっちだったAのことなので、遠慮なく笑いものにしようという、ガキの無遠慮なアイディアだった。そうしてみんなで写真の大判コピーを囲み「リアル福笑い(言い出しっぺのBのつけた名称である)」を始めた。


 ところが笑えると思いきや、リアルな目や口が輪郭の中で縦や斜めになったり、あちこちに点在すると、まるで化け物か妖怪のように見えて気持ち悪くなった。おかめのような簡素なマンガ絵とちがい、実写の人の顔の目鼻があちこちに移動したさまは、まるで事故死体の破損した顔のようで、おぞましいだけである。

 だが、ガキどもは前向きだった。それはそれでホラーとして面白いというわけで、みんなでわいわい寒がりながら、Aの顔をムチャクチャにして楽しんだのだった。





 新学期が始まったが、Aは来なかった。病気とのことだったが、正月にあんなことをして遊んだ手前、ガキどもは気になった。彼らのうち、BとCとが見舞いに行った。

 二人は、そのまま二度と戻ってこなかった。

 Aの親によると「お見舞いに来てちゃんと帰った」とのことだったが、結局警察も行方をつかめず、一週間が過ぎた。


「Aからメールがきたから、放課後に学校の裏庭で会う」とDがEに言った。しかしDはAとメール交換した覚えはないのに、スマホにショートメールが来ていて、Eは怪しいと思って止めたが、Dは気になってしょうがないからと、会いにいった。

 放課後、DからEにメールがきた。「顔がAの顔が」というだけの異様なものだった。


 翌朝、担任は「Dは風邪で休み」だと言ったが、EがDの家に電話してもつながらず、帰りに寄っても会わせてもらえなかった。数日後、Dは実は行方不明だと聞かされた。





 その翌日の下校時、誰もいない公園の前で、先生に相談しようかと悩んでいたEのスマホが鳴った。Aからで、(ほとんど聞いたことはないが)あいつこんなだったのかと驚くような、ぞっとするほど低い、老人のようにしわがれた声だった。しかも押し殺すような言い方だった。

「今、お前のうちにいる。早く帰ってこい……」

 そう言って切れたので、Eはぞっとして家に電話したが、家族の誰も出ない。

 警察に行こうと決意したとき、いきなり後ろから右肩をぐっとつかまれ、息がとまった。


「よく、き、け……」

 さっきのAのしわがれ声が耳元でした。それは今にも途切れそうなほどに、ゆっくりと発した。

「おまえらの、せいで、うちに、帰れなく、なった……」

「えっ……どうして」

 おそるおそる聞くEに、Aはさらに声を低めて言った。

「おまえらの、せ、い、で、」

 声がうっすらと怒りと恨みの色を帯びた。

「お、れ、の――か、お、は――」


 それ以上聞けなかった。Eは目をつぶったまま、後ろのAを思い切り突き飛ばして逃げた。

「E!」

 怒鳴り声に思わず振り返ってしまった。相手の顔だけは見たくなかったのに、だ。しかしAはそのとき彼に背を向けていたので、幸いだった。


 そのはずだったが、Eはそれを見てしまった。その瞬間、すさまじい恐怖に飛び上がって絶叫した。そして何度も転びかけながら、死に物狂いで走り去った。




 彼が最後に見たのは確かにAの後姿だったが、同時に、あまりにも恐ろしい、あるものがあった。Aの向かって左側のあご辺りに、大きな黒いほくろのようなものが見えたが、すぐにそうではないとわかった。


 それは彼を恨みがましくにらみつける、一個のぎょろっとした目玉だったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ