過去の導き
白石が影山のそばにつくようになったのは捜査一課にいたころだった。誰しも憧れをもって見てしまうが、白石には何処か冷めて映った。何かに奮起する姿よりはやたら上司にゴマすりをすることで上に上がろうとする下心しか垣間見えなかった。こんなはずじゃなかったとは口にはしたくなかったがいつかやめてしまうと思っていた。
「君か。白石良太っていうのは・・・」
突如声をかけられたことで少し驚いてしまった。捜査会議では如何に目立たないことがすべてだと思っていたところもあって席も後ろのほうに座っていた。声をかけてきた彼は黒スーツの中にしわくちゃのカッターシャツを着ていた。いびつさが何処か彼の人間らしさを見せていた。
「貴方は・・・」
「挨拶っていうのを忘れていたな。影山明人といいます。一応は捜査一課にはいるが、窓際部署にでも移してくれって上にお願いをしているところなんだ。」
影山と名乗った彼は何処にも隠すところがないように思えた。そこに嘘すらなかった。正義に導かれたうえであったようにも思えてならなかった。
「どうして俺の名前を知っていたんですか?」
「どうも周りから評判やら噂っていうのが流れてくる立場なものでね。上を顧みない人を探していたんだ。」
彼は嬉しそうに言った。




