檻の中に閉じ込めた思い
影山はけだるそうに警視総監室へと向かった。彼から呼び出されるのは厄介事ばかりでうんざりしてしまう。下を向いているとなんだかんだといってしまう人が多いので無理くり上を向いている感じだった。影山は警視総監室につくとノックをした。
「入ってくれ。」
そっけない態度の声だった。呼び出しておいてとしか思えないが一応階級が上なだけ仕方がない部分があった。それでも責任というものから逃げ出すものが多いのだ。
「なんですか?」
「あぁ、隠れ公安だった奴が捜査一課の奴にばれたという話を聞いたものでな。」
「なんだ。そのことですか。彼なら墓穴を掘るのは分かっていたのに、捜査一課の課長が一目置いていたからっていう理由でしたっていうことみたいですよ。代わりならいくらでもいるんです。」
恐らく誰か向いている人間を教えてくれということなのだろう。公安や隠れ公安っていうのは伊達の仕事じゃない。身内から恨まれる恐れすらあるのだ。ばれたとて行動が伴っていないと何もならないのだろうから。
「影山なら誰を差し出すのか?」
「上田です。今は濡れ衣を被っただけで、腕は一度は捜査一課で活躍していただけあって一人前です。半人前を選ぶよりよっぽどです。」
交番という檻に閉じ込めておくのはもったいないと思っていたのだ。上田修一に託す価値は多かった。