構えた先
影山はそこに立っているだけでは何もならないと言いたげな顔をしていた。署長にはぐうの音も出ない状態だった。
「天下り先とか考えているようだが、上の連中はそんなことないと思いますよ。警察の金を横領したうえに部下に処分を受けるように促したという事実も上がっているからね。そんなことを天下り先でされたら困るってね。上もバカじゃないんだよ。・・・光畑君、上田に言ってやってくれないか?汚名が晴れるとね。」
「わかりました。」
「何をうなずいているんだ。こいつはただの捜査一課のただのお飾りだぞ。」
署長の負け惜しみのような苦痛の叫びがむなしく響いた。狭い世界でしかないはずなのに、何処か憧れを持てない人だった。すると、どたどたとあわただしい音が響いてきた。ドアの近くには整列をした人達が並んでいた。
「あぁ、もう到着ですか。茶番劇でも鑑賞しようかと思っていたのですが・・・。」
「そんなこと言ってられないですよ。警視総監からお呼び出しをもらっている手前にこんなくだらないことに口出しをする必要がないといったはずです。」
先頭に立っていたキチンとした人物が洩れぬように言った。2人でみっちり話している様子から安心できる相手のようだった。影山はそのあとあっさりといなくなってしまった。