表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸・人間の領地ガヴィメズ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/136

誘拐未遂

 出発して数日が過ぎた、コカトリスを倒した後は小型の魔物が数体出てきた程度だ。

「聖女って回診の儀の時にも護衛ついてたけど冒険者パーティに入っていて大丈夫なの?」

「異世界人だからじゃないかな?その辺りは私もよく分からないのよ」

 突然、ガヴィメズの首都ゼラキューゼに呼び出されて聖女に任命された。

 聖女の任命は拒否も出来る、その時点で雪月花の結成が決定していたので断ったそうなのだ。

 しかし族長から強制された。

「これは決定事項だから拒否をするならセイルーン孤児院への支援の一切を打ち切るって言われたの」

「それって強制と言うより脅迫になるんじゃ……」

「でも、回診の儀だけ参加してくれれば良い。それ以外の行動を制限はしない。って事で冒険者登録も出来たのよね」

 その回診の儀の護衛も本来は宮殿の兵士が担うのだが、雪村と哲を特別に配置してくれる配慮までしてくれたようだ。

 カトリーヌに聞いたら、聖女は宮殿に住み族長の指示で活動するため冒険者登録は出来ないし他種族エリアへ出る際は許可が要るそうだ。

 かなり強めの束縛が掛かるので、任命拒否や自己都合での退任まで認められていてそれに対する罰則も無い。

 シンはかなりの特別待遇のようだが本人や雪村たちに不都合がある訳ではないので気にしていないらしい。

 

 小さな森を抜け、見晴らしの良い丘の上から街が見える、首都ルビエーンの街だろう。

 大きくて普通に首都っぽいな、と呟いたら首都だからな、と笑われてしまった。

 中に入って、ギルドに護衛完了の報告をして宿を探して昼の食事を済ませた。

 雪村たち3人は族長に報告があると言うので宮殿へ向かって暇なので街を散策して待つことにした。

「この街って音楽食堂が多いですね。ちょっと驚きました」

 音楽食堂と言うのは、その名前の通り演奏や歌を聞きながら食事ができる店だ。

 ゆったりとして曲が多いので落ち着いて食事が出来るが少し値段は高い。

「あ、これは!獣人の間で評判になっていたおやつですわ。食べて行きませんか?」

 一度食べてみたかったそうで看板を見るとパンケーキみたいなものだ。

 今食べた食事が結構な量だったのでお腹いっぱい、と言うとカトリーヌが珍しく不貞腐れた。

「俺っちはまだ入るぜ。こんな小食はほっといて2人で行こうか。幻妖斎は散歩でもして待ってろよ」

 そう言って、ピーフェはカトリーヌを誘ってお店に入って行った。

 一緒に入りたかったが2人に断られてしまったので仕方がない。

「食べない奴が見てると急かされてる気がして嫌だ」

 そう言われたが、確かに言ってる事は分からなくもないので1人で散策する。


 大通りばかりもつまらないし、せっかくだから裏道とか入ってみよう。

 軽い気持ちで入ったが大通りから離れると商店などは全くない。

 買い物がある訳でもないから、風情があって散策には良い感じだ。

「誰か、助けてー」

 角を曲がった辺りから小さな声が聞こえた気がした。

 急いで向かうと小さな女の子が連れ去られそうになって藻掻いている。

「何をしているんですか!」

 誘拐犯に向かって叫んだ時に確認した人数は見張りを含めて6人で武器を持っている、子供1人を攫うには多すぎるぞ。

「おい、兄ちゃん。お前の命に価値は無い。見なかった事にして立ち去れば命は助けてやる」

 フー、僕は軽くため息を吐いて素早く動いて見張りも含めて全員を捕まえた。

 少女に話を聞くと買い物に来て迷子になり、裏道に迷い込んだところを襲われたそうだ。

 逃げる時に転んで膝を擦り剥いてるので治癒魔法をかけてあげた。

 治療が終わったころに少女の護衛だろうか、2人の男が走ってきた。

「貴様!クレアお嬢様に何をしている!」

 誘拐犯と誤解されでもしたら大変なので説明しようとした時、少女が前に歩み出て話す。

「このお兄ちゃんがね。私を誘拐しようとしたね、悪い人――」

 話の途中で1人の男が襲い掛かりながら抜刀し連続攻撃をしてくる、かなり早い。

 僕が後ろに引くと別の男が少女を抱き抱えて確保した。

 護衛なのは間違いないので、あえて何もせず少女を渡したが、これは誤解されているだろう。

 襲い掛かってきた護衛は強いが相手が僕なのが運が悪かった。

 持っていた剣を叩き落として奪い取り、相手の腰の鞘に戻す。

「ありがとうございました。とてもカッコ良かったです」

 少女がお辞儀をして僕にお礼を言ってくれて誤解が解けたようだ。

 護衛は礼を言って少女と犯人を連れて戻って行った。

 

 結構な大立ち回りをしたが裏道だったこともあり野次馬は全く居なかった。

 人が来ない場所に誘い出して誘拐しようとしたのだろうか?

 綺麗な鳴き声が聞こえて目を向けると屋根の上に小鳥が居る。

 全身が真っ白で目だけが黒く怖い位に目立つ。

 僕の視線に気が付いたのか純白の小鳥は飛んで行ってしまった。

 飛んでいく小鳥が輝いて見えたのは、日の光が目に入って眩しかったからだろう……。

 

 カトリーヌと合流したが、ピーフェは食べ過ぎたと言って宿に戻って行ったと言われた。

 2人で散策しながらさっきの誘拐未遂事件の話をした。

「首都でもあるんですね」

 聞いてみたら、誘拐自体はあるようだった。

 そう言えば、異世界人や孤児は犯罪に巻き込まれやすいって言ってたな。

 護衛が付いてる裕福な家の子なら身代金目的と思うと言われたが、グリアでもそう言う事があるんだ。

 

 宿に戻ったら雪村たちが待っていた、明日族長と面会できるらしい。

 本来は面会に数日待つのだけど、ピーフェが居る事で急遽明日になった。

 僕たちは慣れてしまっているが妖精を連れていると言うのは、それほど珍しいと実感した。

 族長と会って何を話せば良いんだろう?帰還の許可は貰っているし何か話題を考えておかないとダメかな?


「ピーフェって賢者について詳しいの?」

「普通に知ってるくらいだな、特別な情報は無いぞ」

「7賢者って不死者なのかな、と思ってさ。かなり昔から居るよね」

「不死者は賢者になれないはずだ。初代賢者の名前を引き継いでいるだけの呼称に過ぎないから普通に代替わりするぞ」

 賢者について知っていることを聞いたが、カトリーヌや雪村たちでも知っている感じの内容だった。


 7賢者は火土水風空光闇を司り、各エリアを守護している。

 火の賢者ボルドーは獣人領ステルド、水の賢者ビトレイはドワーフ領ヴィルゲータ、土の賢者オリゼは小人領ゼンペリム、風の賢者ラスティーヌはエルフ領ルギード、空の賢者マリスはセントス、光の賢者ノーリムは西の人間領アドリンス、闇の賢者ゾルバードは東の人間領ガヴィメズ。

 居住地は不明で不定期に守護する宮殿に突如現れる。

 種族は固定されている訳ではない。

 賢者の名前は全て初代賢者の名前を受け継いでいる。


 大賢者については雪村たちも、ピーフェでさえ詳しく知らないと言う。

 ピーフェは長く生きている妖精なので賢者にも何度かは会ったことがあるそうだ。

 ただ人類にあまり興味が無いため、どの賢者に会ったかは記憶に無いと言っている。

 大賢者に会えば良いので7賢者は関係ないのだが、ピーフェすら知らない大賢者を探すための糸口が欲しい。

 そのために賢者の誰かと会って一度話がしてみたいと思っている。

「私が賢者です。って賢者が誰か訪ねて来ないかな」

 心の声が言葉になっていたようで全員から『そんな都合の良い事は無い』と言われてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ