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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸・人間の領地ガヴィメズ編

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高位の治癒士と2人の騎士

「変って族長に問題があるの?」

 この2人が感じたのなら何かあるのだろう。

「現在の族長はテイル・レイモンドって奴なんだけど本来は夫人のリリース・レイモンドが族長の血筋で夫人が族長だったんだ」

 やっぱり血筋もあるのか、エルフも女王だし珍しくは無いんだろう……ん?族長だった?

「リリースって優しくて人に好かれてたけど世間知らずで、以前から政治的な事は全てテイルがやっていたらしいんだ」

 夫婦だしエリアの住人からすればどちらが統治していても問題ないんだろう。

「数年前に病死したらしくてテイルが族長になったんだけど、その辺りから横柄で粗暴になったみたいでさ」

「僕が元居た世界では権力持ったら横柄になる人とかも居るよ」

「首都ではあまりの変わりように『魔物がテイルに化けてリリースを殺した』なんて言う奴も出てるようなんだよ」


 ピーフェが言うには化けていると言う事実は無いだろうという事だ。

 宮殿内には魔法禁止の結界があるため、魔物レベルの変化では解けてしまう。

 変……と言うのは横暴になったと言う割には住人の安全は守られている事という。

 少し前の厄災の時も部隊の配置や食料の配給などが完璧に差配され他国からも称賛されたようだ。

 多少、横柄な人が仲間の危機に頼りになったりと言うのは、地球ではある事だけどグリアでは珍しいのかな?

 どちらにしても噂なので首都にって確かめるしかない。

 

「それと明日、このスクロスにお偉い治癒士が来るってよ。それで入場審査が警備強化で混んでたようだな」

「お偉い治癒士?」

「毎年1回、各街を回って病や傷を癒すんだけど、これもテイルが始めたらしいぜ」

 住民思いの良い族長じゃないか……。

 


 翌日の早朝から街が騒がしかった。

 治療の対象者ってどうやって決めるんだろうかと思ったが単純だった。

 街の住民で治療すれば回復するがお金のない人が優先、自力で治療費が出せる人は除外。

 もちろんだけど老衰などの治癒士で対処が不可の場合も除外だ。

 人数は100人までだが、枠が埋まる事はほぼ無いそうだ。

 軽症者まで治療すると街の治癒士の生活が出来なくなると言う判断からのようだ。

「1日で100人も治療するのは高位の治癒士だからできる事ですわ」

「治療対象者を街の治癒士が仮に治せても5人程度治せば魔力切れするだろうぜ」

 治癒魔法ってそんなに大変なのか。


 そんな話をしていると北側の門がざわついている。

 どうやら治癒士が到着したようで、ピーフェが『どんな奴か見に行く』と言うので僕たちもついて行った。

 広場に止まってる馬車は紋章が書いてある立派な物だった。

(レイモンド家の紋章かな?)

 馬車から顔をベールで隠している人を2人の騎士が護衛して降りて来た。

 乗ってきた馬車が大きすぎるので、街の中の移動は小型の馬車でするみたいだ。

 小型の馬車に治癒士が乗り、左右を騎士が護衛する。

 その騎士の1人が、こちらを見てから見事に二度見をして手を振ってきた。

「おーい、そこの妖精を連れてる冒険者の2人。こっちに来てくれ」

 やっぱり妖精って目立ち過ぎるのか……。

 僕とカトリーヌはピーフェと共に馬車の方へ歩いて行くと治癒士の人が降りて来た。

 顔は見えないけど、女性と言うのは分かるし、所作が美しい。

 胸の前で手を組み、お辞儀をしてくれた……ピーフェにお辞儀したのかと思ったが僕とカトリーヌに向けてだ。

「お久しぶりでございます。公務の途中ですので後ほどお食事をご一緒したいのですがよろしいですか?」

「はい、もちろん喜んで」

 僕は反射的に答えたけど、誰だこの人?

 その答えを聞いてすぐ、治癒士は馬車に乗り護衛の騎士と共に治療をする家に向かって行った。

 

 僕たちはとりあえず宿に戻った。

「お前、ガヴィメズに来たことあるのか?」

「始めて来たよ、カトリーヌも無いんだよね?」

「私も初めてですわ。妖精を連れた冒険者と言ってましたし、ピーフェと話がしたいのかも知れませんね」

「あー、妖精の加護で治癒士の能力が上がるからな。目的はそれか、めんどくせー」

 本当はこの後、街を出る予定だったんだけど治癒士って族長が派遣してるんだよな。

 流石に無視すると族長に会いにくくなりそうだ。


 先日、ジマワウで購入した焼き菓子を食べている。

 陸の孤島と言われていた頃から食料に困らないよう、農業が盛んで小麦や果物などが豊富にある街。

 柑橘系の果物の皮や、茶葉などを練りこんだ焼き菓子をカトリーヌが気に入ったので大量に購入している。

 僕の持つマリスのポーチに入れておくと時間経過が止まるので安心して持ち運べる。

 この先どうするかという話になって困っている。

 武闘大会には参加できなさそうだし、暫くは首都に滞在しつつギルドの依頼をこなすしかないのかな?

 師匠にお願いすると言うのは迷惑をかけるので気が進まない。

 今回は幸いなことに妖精のピーフェが居るので名声も上がりやすいだろうという事が救いだ。

 どうしても面会が出来ないようなら小人族の族長へ会いに行くと言う方法もある。

 大陸内の転移は問題ないのだから戻ってくるのは容易だ。


 宿の人から呼ばれて入口へ行くと兵士を連れた厳つい男が立っていた。

「俺はスクロスの街の管理を任されているユタリアと言う。首都からお越しの治癒士様が食事に誘っているのだが同行願えるか?」

 呼び出された時点でそうだろうと思っていたので準備を済ませていて良かった。

 同行している間、街の人がユタリアに手を振ったり挨拶をしている、見た目は厳ついが住民には慕われているようだ。

 連れて行かれたのは食堂で、本日は貸し切りと書かれてある。

 中に入るとテーブルに食事が置かれていて、今朝の治癒士と2人の騎士が座っている。

「私が良いと言うまで誰も中に入れないようにお願いしますね」

 治癒士がユタリアに告げると、敬礼をして外へ出て行く。

 ユタリアって街の管理者って言ってたよな?

 この人かなりの権力がありそうだ、少し緊張してしまうが食事するだけだ。

 

「久しぶりね。朝はあんな態度でごめんね。妖精さんは初めましてね」

 ベールを外した女性はシンだった。

「正体がバレないように、こんな甲冑付けるのも疲れるぜ」

 兜を抜いだ2人の騎士は雪村と哲だ。

 そう言われれば、シンって聖女なんだよな。

「俺っちピーフェって言うんだ。この2人の友人だ、よろしくな」

 ピーフェと会うのは初めてだったっけ?と思ったがエルフの街では僕のコートに隠れて出てこなかったんだった。

「あれ?みんなってミューマ大陸出身なの?セイルーンって確かゼルディア大陸だよね?」

「聖女って各種族5人ずつ選ばれるんだけど人間はゼルディアとミューマ合わせて5人なの」

「俺達は異世界から来たから出身って言えないけどセイルーンの街はゼルディア大陸だぜ」


 シンから今回の話を説明された。

 回診の儀と言って1年に1回、聖女の2人が輪番制で各街を受け持つ。

 名前や顔は街の人に知られてはならない。

 宿と食事以外の報酬の受け取りは禁止。

 正当な理由なしに拒否した場合は聖女の肩書を剥奪。


 この説明だけ聞くと無給で族長に、こき使われている感じだけど実際はかなり違うようだ。

 聖女の名前と顔は知れ渡っているが隠すのは、護衛の関係で聖女の誰が来ているかを秘密にするため。

 聖女は宮殿から相当な報酬を貰っているため、街の人から貰うなという事。

 彼女たちは、請われれば何時でも……と言う気持ちなのだが聖女の疲弊を気にして族長が年に1度に決めたそうだ。

 

「住民と聖女の体調も気にしていて良い族長なんだね」

 噂は噂でしかないって事か。

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