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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸・人間の領地ガヴィメズ編

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天と地の短刀

 まだ僕は人間と獣人の区別だけが出来ない。

 獣人の間で僕の事は(ダグラスの娘の婚約者)として知れ渡っている。

 轟鬼の物だが族長の指輪もあるし、獣人が僕を呼び捨てにすることは無い。

 彼の事を人間と思ったのはそう言う理由だ。


「えっと、どこかでお会いしましたか?」

「こうして直接会うのは初めてだ。俺の名前はロキ。頭の片隅にでも置いていてくれ」

「同行者を待たせているので、用が無いならこれで……」

 強いな。とか言っていたしスピリエの時のように喧嘩を売られても困るので逃げるように立ち去ろうとした。

「お前の武器が生まれたようだ。要件はそれだけだ」

 男は言い終わると人波に消えて行った。


(武器が生まれた?エルバートに伝言でも頼まれた人かな?)

 合流したら転移魔法で僕だけ帰って聞いてみよう。

 ピーフェは妖精でイリジーンたちは見た事が無いから驚かれそうだ。

 カトリーヌはオリハルコン製の武器を見せて良いか不安なので適当な理由を考えよう。

 

 食事をして、街を散策した後に宿へ入った。

 武器が出来たようだと言ったら、結果的に1人で行くことになった。

「オリハルコンの武器をお前のために作ったんだろ?それなら受け渡し場所には製作者と受取人しか立ち会えないからな」

 2人は残って情報集めておいてくれるようだ。

 後日、聞いたがこんな決まりは無くピーフェがカトリーヌを心配してくれて嘘を言ってくれたようだった。

 

 翌日マジアルの宮殿近くに転移して兵士に声を掛けるとすぐにエルバートに面会できた。

「ロキと言う方から武器が出来たと聞きましたのでお伺いしました」

「ロキ?誰だそれ?昨日やっと武器は出来て今からギルド通信しようと思っていたところだ」

 エルバートからの使者ではなかったのか……ドワーフじゃなかったが人間領なので人間にお願いしたのかと思っていた。

 完成品を見るために工房へと向かった。


 扉が開くとイリジーンとロイドとコデルが待っていた。

 台の上に2本の短剣が置かれてある。

 柄と鞘は紫色に金色の模様が施されていているが過度な装飾ではなく見た目も綺麗だ。

(あれ?どこかで見た模様だな)

 曲刀と直刀で2本の形が違う。

 イリジーンが口を開いた。

「待たせたが、やっと完成だ。曲刀の銘は『天』、直刀の銘は『地』という」

「刀身の形が違うんですね」

「お前の戦闘は右が主体で斬撃を左が防御も兼ねている。抜刀と斬撃に適した天と、打ち払いに適した地。使って貰えば分かると思う」

 手に持ってみると吸いつくような感じだ。思っていたよりも軽く扱いやすい。

「柄と鞘には頂いたベヒーモスエンペラーの角と皮で作りました。魔法やオーラとの親和性も強く、納刀時に鞘が魔法攻撃を緩和してくれます」

 コデルがサラッと言ったけど、どこかで見た模様と思ったらベヒーモスエンペラーの皮だったのか。

 

 場所を変えて試すことにした。

 抜刀と納刀が格段にスムーズにできる、驚いたのは切れ味だ。

 木で出来た杭と言っても結構太い物をスパッと切れた上に切断面も綺麗。

 オーラを纏わせたり、魔法剣も使ってみたが問題は一切なさそうだ。


(そう言えば魔法を込めるのってどうやるんだろう?魔法剣とは違うんだよね)

 イリジーンに聞いたら魔法をオリハルコンの部分に直接込めるだけだが、結構特殊技術で出来る者は限られているそうだ。

 ライオネルクローの炎の獅子のような魔法は賢者クラスでないと無理だろうと言われた。

 僕でも出来るんだろうか?一応この場で試してみる。炎の獅子の小型版で試してみよう。

 いつもの様に小声で呪文風な言葉を呟いて魔法を込めると刀身が輝いた。

 成功したのか分からないが、あとは発動を試せば良いだろう。

 使って良いかの確認をして込められた魔法を使用してみる。

 右手に持った短刀・天を目の前にかざし魔力を流すと、炎のライオンが杭に向かって飛んだ。

 成功だ、室内だから威力も抑えて大きさもかなり小型化したが僕も出来ることが分かった。

 振り返るとその場に居た全員がポカンと口を開けて見ていた。

「お前、剣の腕だけでなく魔法も使えたのか?しかもこんな強力な魔法を使えるとは驚きだ!」

 イリジーンがかなり驚いていた、魔法剣も使えるから魔法は使えるの分かってると思ってた。

「こいつはトリアーグ武闘大会の魔道の部の優勝者だからな」

 エルバートはイリジーンに、そう教えると工房に戻るぞと言って場所を工房に移した。

 

 幾つか注意されたことがある。

 魔法剣やオーラのみの使用は問題ないが魔法とオーラを併用する場合は連続使用するなという事。

 一対なので込められる魔法は1つだけという事だ。

 理由は刀身はオリハルコンなので問題は無いが柄の部分が魔法とオーラの併用攻撃を連続で使うと壊れるそうだ。

 そもそも他の人に使わせないし、込められる魔法の数は関係ない。


「それと、これを渡しておくぞ」

 イリジーンが台の上に小さなインゴットを置いた。

 余ったオリハルコンらしいが元々が僕の物じゃないから受け取れないと告げる。

「職人として余った素材を己の懐に入れるような行為は出来ん!これも込みの代金だ」

 半ば無理矢理渡されてしまった……代金と言われたが金貨出してないんだけど。

 インゴットと言ってもマッチ箱位の大きさだから武器には出来ないし記念品かな。


 お礼を言って帰ろとした時、イリジーンから師匠と轟鬼に伝言を頼まれた。

「俺は釣りが得意でね。釣りなら双頭の龍にも負けない自信がある。両名のお越しをお待ちしています、と伝えてくれ」

 そう言うと、ニヤリと笑っていた。

 罪を消す理由で確かそんな事を言っていたが……2人には釣りも頑張ってもらうしかない。

「それと、一度だけしか言わん。娘の……ラエルのためにしてくれた事は生涯忘れない。ありがとう、幻妖斎」

 イリジーンが言い頭を下げるとロイドとコデルも頭を下げていた。

 顔を見られるのが恥ずかしいのか、ずっと頭を上げないのを見てエルバートが僕にそっと退出を促した。


 エルバートに食事でもどうかと言われたが、カトリーヌを待たせてあるので辞退した。

 族長の誘いを断るやつも珍しいぞ、と言われたが顔はニコニコしているので怒ってないと思いたい。

「俺もラエルの事もイルと仲直りできたことも感謝している。仲間や友は大事にしろ。自分は些細な事と思っても友を深く傷つける事もあると覚えておいてくれ」

 帰り際に言われて、何かあればいつでも来いとも言ってくれた。

 

 

 スクロスの街へ戻ってカトリーヌ達と合流した。

 宿の部屋で出来上がった短刀を見せたらピーフェが興奮気味に喜んでいた。

 短刀を黙って見ているカトリーヌを僕が心配そうに見ているのに気づかれてしまった。

「私はもう大丈夫です。強くなりたいですけど焦って強くなるのは止めます」

 カバーに入ったブローチを触りながら呟いた。


 少しの沈黙を破ってピーフェが話し出した。

「幻妖斎が居ない間に街で族長についていろいろ聞いてみたんだけどさ。ちょっと変なんだ」

 カトリーヌも頷いていた、族長が変なのかな?

 性格は変でも良いから帰還の許可貰いたいが面会も難しそうなのかな……?

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