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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
出会いと修行編
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お嬢様は強かった

 目が覚めて窓から外を見ると賑わっていた。ギルドから出される依頼を見に来る冒険者が多いのだそうだ。

 朝ご飯を食べて買い物へ出かける、貰った地図で欲しいものは大体揃った。

 行く店行く店で、あんたが武神様のお弟子さんかい?と言われるので師匠はかなり有名だと実感した。

 あと甘いものがあれば最高なんだけどなぁ……と思って聞いてみたら一応あるらしい。

 値段が高めで一般人向けではないと言われたがとりあえず行ってみた、パッと見た感じお店だとは思えない。

 中に入ると色とりどりの……これって金平糖?僕の好きなお菓子じゃないか!しかもいろんな種類がある。

 店主のおばさんに聞くと季節で変わるが10-20種類はあり今は12種類の味があるよと言われて1個味見させて貰ったら金平糖だった。

 1袋100グラム入って銀貨1枚だそうで確かに高いがガッツリ大人買いで12種類を2袋ずつ買った。

 結構な量を買ったのでおばさんが試作品だけどどうぞ。と飴を一袋くれた。

 (サクサクミルク飴)と言うミルク味の飴を薄く延ばして何枚も重ねて一口大に切ったもので舐めても甘く、噛んだらサクサクの新触感な飴だそう。

 食べると濃厚ミルク味で噛むとすぐ砕けて溶ける不思議な感じ。これ製品化したらまた買いに来よう。

 まぁ、こんなのばっかり食べるから転移してくる前は太ってたんだけどね。


 数日かかると思っていた買い物がまさか一日で終わるとは思ってもなかった、貰った地図のおかげで迷わず行けたのが大きい。

 ユベリーナで1つやっておきたいことがあるのでギルドへ向かった。

 それはズバリ、ギルドの依頼を受けることだ。方法が分からないと今後いろいろ困るし今なら登録したばかりなのでギルドで教えてもらおう。

「登録したばかりで依頼の受け方が分からないので教えて欲しいのです」

「あちらの掲示板に貼ってある依頼書を剥がして受付に渡してください。依頼が完了したら品物や依頼完了書を持って報告してください」

 大体想像していた通りだ、試しに何か受けてみようと思ったけど時間が遅いためほとんど依頼が残っていない。

 依頼を受けるのは諦めて帰ろうとしたらハイドが読んでいると呼び止められ部屋に案内された。

「Bランクの冒険者カードの発行が完了しましたのでお渡しします、それと出発の準備は進んでますか?」

「カードが銀色になるんですね。出発の荷物はもう揃いました。昨日貰った地図のおかげで効率よく買い物ができたので助かりました」

「もう揃ったのですか?少しでも長く滞在していただきたいですが引き止めすぎるのも悪いので複雑です」

「明日の朝出発する予定です。長く居すぎると寂しくなるので……」

「明日の朝ですか、朝はギルドが大忙しなのでお見送りに行けないですがお元気で幻妖斎様の旅の目的が果たされるように祈ってます。またお近くに来る際はお顔を見せてくださいね」

 握手を交わして僕は立ち去った。振り返ると寂しさが増すので振り返らずそのまま宿の部屋に帰った。


 いよいよ出発の日が来た。

 宿代を清算して外に出るとギルドは大忙しのようだったが2階の窓からハイドが一礼してそのまま奥へ消えていったのが見えた。

 宿から街の入り口までに数人からまた来てね。とか、いってらっしゃい。と声をかけられた。

 師匠の家に行くなら通り道だし良い街だからまた来ることはあるのかな?と思いながら一人で街を出た。


 地球に戻る方法は今のところ分からない。

 一応、ガーラとハイドにも尋ねてみたが知らない、グリアに転移してきたからと言って寿命が延びるわけはなく、こっちで生活して亡くなる人しか聞いたことはないと言われた。

「帰還例は聞いたことがない、まぁ異世界から来たものが要職に就くことは考えられず数人居なくなっても気が付いてないだけかも知れない、街の外に出れば魔物に殺される事もあるからな」

 ガーラはAランクなので各種族の首都にも行った経験はあるそうだけどこう言われてしまった。

 確かに転移してきた人が全員帰る方法を探すとも思えないし帰っても気が付いてないか死んだと思われてるだけの可能性もあるから望みは捨てないようにしよう。


 街道をこのまま進めば2日程度でエルフの国ルギードに入りそこからさらに1日くらい歩けばペリエスタと言う街に着くと言われた。

 日が暮れかけた頃、遠くから悲鳴とともに誰かが走ってきた、その後ろに大きなサソリが、あれは(マーブルスコーピオン)とか言うCランクの魔物だったはず……襲われてるんだよね?

 すぐに走っていくと、助けてと言われたので剣を抜く。この魔物の対応は簡単だ、対象者に針を振り下ろして刺そうとするので避けて弱点の眉間を攻撃するだけ。

 襲われていたのはショートカットのかわいい女性だった。こんな弱そうな女性一人で何をしてるのかと思えば護衛が居たのだけど森で大量のサソリに襲われて走って北へ逃げろと言われ逃げてきたそうだ、本当ならマーブルスコーピオンは森から出ると追跡を諦めるそうなのだけど1匹ずっと襲ってきて困ってましたと言われた。


 南にある森ってエルフの国の方だよな?ここから森までまだ1日くらいかかるようだけどずっと走ってきたの?

 「体力と足の速さには自信があるので~。あ、戻らないと心配させちゃう」

 にっこり微笑みながらそう言われたから全力で引き留めた。

「ちょっと待って、護衛の人が心配なのはわかるけどもう暗いし、また魔物が来たらどうするの?護衛の人が来ても分かるように街道横で火を起こすから朝までここで待ってそれから移動しよう。僕もルギード方面に用事があるから一緒に行くよ」

「そうね、強い人が一緒なら安心できるしお願いしようかな。お腹が空いたから何かあったら食べさせてもらえますか?」

 ポーチの中から食べられそうなものを出して渡すとおいしそうに食べて終わると横になって寝だした。


 とりあえず寝ずに朝になった。

 一人なら魔物の気配を察知して対応できるけど人が居るし、護衛経験はないので反応が遅れたら困る。

 若い女性の真横にくっついて寝るのも流石にまずいだろう……と言う判断をした結果だ。


 朝ご飯を食べて護衛の人を探してルギード方面に移動を開始した。

 彼女はマーブルスコーピオンが10体ほど出たが護衛が応戦、森の出口付近だったために外へ逃げろと言われたから逃げた、護衛は強いから心配ないと思うと言っている。

「私も結構強いんですけど血を見るのが怖くて……あ、疑ってますね?手合わせしてみます?」

 確かに疑ってしまう、小柄で普通の女性だし強い人にある独特な雰囲気もない。

 

「いきますよ~」と言うと向かってきた。驚いた、かなり速い。しかも闘気も使える。

 ユベリーナのあの8人組なら触ることも出来ない程のレベルだ。

 師匠の速さを体験しているためこの程度の速さは問題なく対応できるので軽く避けていた。

 

「どうして攻撃してこないんですか?女だから手加減してるんですか?攻撃してきてください」

 そりゃ女性相手に本気なんてね……と思っていたから攻撃して来いと言われ驚いた。

 構えて闘気と出した瞬間に彼女が後ろに下がり距離を取ろうとしたので踏み込んで肩に掌底1発撃つと10メートル位飛んだ。

 ちょっとやりすぎたかな?と思ったが平気な顔をして飛び込んできた、かなり強気だ。

 手加減はしているのだけどカウンター気味に反対の肩に掌底を打つとその場にうずくまってしまった。


 流石にマズいと思い駆け寄って大丈夫かと声をかけた。

「大丈夫よ、私より強い男の人って初めて会ったわ。もし良かったらお名前を――」

「お嬢さま!ご無事でしたか。おい、お前お嬢様に近づくな!」

 屈強な男3人が周りを取り囲んだ、全員武器を構えて戦闘態勢をとっている。僕が襲ってると思われたのかな?

「この方は私を助けてくれたのよ、食べ物も頂いて。強いから手合わせしてもらってたの。武器を下ろしなさい」


 男たちは武器を収めるとお嬢様と呼ぶ女性を馬車に乗せた。

 男の一人が先を急ぐのでとあいさつと感謝を伝えて謝礼金を出してきたがお金は受け取らなかった。

 馬車が動き出したとき、窓が開き彼女が顔を出して叫んだ。

「またどこかでお会いできれば手合わせお願いしますね、私の名前はカトリーヌです。カトリーヌ ラ…………」

 手を振る彼女はどんどん小さくなり言葉の最後は遠ざかる馬車の音でかき消されてしまった。


 カトリーヌさんか、不思議な人だったな。

 あの強さがあればマーブルスコーピオン1匹なら倒せると思うのに逃げてたしお嬢様と言われてるし。

 馬車は北へ走っていったからユベリーナの良いとこの家の人かな?


 そんな事を考えながら街道を歩いていると広大な森の入り口まで来た、立札が1枚立ててある。

 [これより先、ルギード。自衛手段の無き者は街道を歩け。森への感謝を忘れるな]

 

 来ましたルギード。エルフの国か~。

 まだ街には着いてないのでただの森なのだけど適度に手入れされた感じはある。

 一応は街道もあるが樹を迂回して曲がりくねっているのは森を大切にするエルフの意向かな?

 荷物を積んだ馬車や行商人らしき人をちらほら見かける。そういえば交易はあるって言ってたよな。

 1日くらい歩けば街に着くと言ってたので今から楽しみだ。

 

 数時間歩いたあたりで轟音が響く。

[ドッゴーーーーーーン!バキバキバキ!ドンドンドンドン!]

 

 木が倒れる音だけではない明らかに戦闘音、軽い戦闘ではなく大型の魔物が激しく暴れているレベルのすごい音だ。

 音は街道からは少し離れた所からのようだが行商人が巻き込まれると大変だ。

 僕は急いで音のする方へ向かった。

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