表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/136

ドワーフに受け継がれている楽器

 9日はあっという間に過ぎた。

 カトリーヌも元気になっているのが分かる。

 僕は今日マジアルに戻るが彼女は武闘大会が終わってから迎えに来ることとした。



 マジアルに戻って、すぐエルバートへ会いに行った。

 顔を見るなり怒鳴られた……。


「ベヒーモスエンペラーを討伐したと連絡があったが俺に報告せず何をしていた!」

「すいません、実は……」


 僕が事の顛末を話すと、そう言う理由なら仕方ない、と納得してくれた。

 ベヒーモスの皮と角を渡して任務完了だ。


「ベヒーモスエンペラーの皮と角と爪もあるのですがお渡しした方が良いですか?」

「それは必要ない、お前が持っておけ……いや、角1本と皮を少し貰っても良いか?」


 角と少しの皮を渡した後、イリジーンが居る工房へ向かう。

 ロイドの工房かと思ったがオリハルコンなので宮殿内部で制作するようだ。

 案内されて入ると、銀色の塊が置いてある。


「これがお前の短刀になるオリハルコンだ、持ってみろ」


 イリジーンの促され塊を手に持つとヒンヤリした感覚があったが、すぐ温かい感じに変わった。

 適度な重さはあるが変な感じだ。


「さて、来てもらったのはお前の戦い方を見せて貰うためだ。俺は武器を作るとき、所有者が戦う姿を想像して作る。協力してほしい」

 そう言うと彼は頭を下げた。

「もちろんです。こちらこそお願いします。戦い方を見せると言っても、どうすれば良いですか?」

 慌てて僕も頭を下げてお願いする。


「訓練場の真ん中に鉄の杭を打ってある。それを敵とイメージして戦うだけで良い」

 簡単そうに言っているが、杭は反撃してこない。

 回避や相手の攻撃を避けてからの攻撃なども想定しないと駄目だから大変そうだ。


 イリジーンに言われるがまま、ずっと杭を相手に戦っていた。

 彼は戦い方を指示した後は、じっと見つめて目を逸らさない。

 時々、目を瞑って考えている。

 数時間は動きっぱなしなので休憩したい……と思ったその時、イリジーンが手を叩いた。

 

「よし!戦い方はそれで良い。お前は魔法剣とオーラ、その混合も使えると聞いている。それを見せてくれ」


 鉄製の短刀に魔法剣、オーラ、魔法とオーラの混合の順で見せた。

 剣を振ると壊れるので発現させただけだが、それを見たイリジーンが大声で叫んだ。

「素晴らしい!これは一世一代の製作になるぞ」

 

 工房の扉を開けるとエルバートを呼んだ。

「ロイドとコデルを呼んで水と保存食を大量に用意してくれ。食料が揃い次第すぐ製作に入る、気が散るから誰も工房へ入れないように強めに命令しておいてくれ。頼んだぞ、エル!」

「10日後には双頭の龍の演武と武闘大会があるぞ、お前の席も確保しているが見ないのか?」

「興味はあるが、製作の方が今は大事だ。お2人に謝っておいてくれ」

「お前らしいと言えるが勿体ないな。俺が口を出す事ではないから言われた通りにしよう」


 まさかここでずっと寝泊まりして製作するのかと思ったら、そのまさかだった。

 武器が出来るまでは僕も立ち入りを禁止されてしまった、実は見物したかったので残念だ。

 ロイドはもちろん製作の補助なのだが、コデルが柄や鞘の職人と聞いて驚いた。

 暫くしてロイドとコデルが到着し大量の食糧と共に慌ただしく工房に消えて行った。

 

 

 大会までまだ10日もあるので、ライオネル家に戻ろうかと思ったがエルバートに呼び止められた。

「幻妖斎殿に少し相談があるのだが着いてきてくれないか?」

 一緒に歩いて行ったのは大会が行われる闘技場だ、首都の闘技場だけあって立派でかなり大きい。

 内部に案内して貰ったが一部が改装されている途中で職人が慌ただしい。

 改装の理由を聞くと師匠と轟鬼が大会を観覧するための特別席だと言う。

(師匠の性格だと自分の席で見る人が減るなら必要ないとか言いそうなんだけど、この場所なら大丈夫か)


「それで相談と言うのは会場内部の結界についてだ。大会中は観客に被害が及ばないように舞台と客席の間に結界があるのは知っているな?」

 それはもちろん知っている。結界のおかげで激戦が繰り広げられても問題が無いのだから大会が成立しているようなものだ。

「ええ。結界が無いと観客が危険ですから、かなり強力と聞いてます」

「ダグラスや武神様の攻撃で結界が壊れないかが不安なのだ」


 突然言われたが、師匠たちって軽く手合わせと師匠の演武だけと聞いてるから結界必要ないと思うんだけど……。

 観客に被害が出るような攻撃は2人ともしないだろう。

 2人とも魔法攻撃もしないし飛んでいくとしたら舞台の破片とかじゃないかな?と思ったが安全は大切だ。


「結界を2重にするとかは出来ないんですか?それならもっと強固にできると思います」

「それなら確かに対応可能そうだ。宮殿に戻って術師に相談してみよう」


 もちろん僕も同行する事になった。

 術師たちに説明すると、多少負担が増えるが何とかなるとの事で安心した。


 

 懸案事項も解決し安心しているエルバートに質問してみる。

「獣人の謁見の間に結界が張ってある場所があったんですがドワーフの謁見の間にもあるんですか?」

「ん?あぁ、楽器が置いてある場所の事だな。見たいなら見せてやるぞ」


 謁見の間に案内して貰い結界の前に来たが……弦が多い楽器だな。

 触っても良いかと確認をして手を伸ばすが、もちろん弾かれた。


「お前でも無理か。俺の知る限り触れた者は居ないのだ。職人が模倣して作った楽器は街で売られていてドワーフでは、なじみの楽器なんだが残念だ」

「そうなんですね。ちょっと変わった楽器なので音も聞きたいし、後で街で探してみます、楽器の名前ってなんて言うんですか?」

「音を聞くだけなら宮殿の楽団で聴けるぞ。『シタール』と言う名前で言い伝えられている」


 移動し楽器を見て演奏も聞かせて貰った。

 音に関しては詳しくないけど聴いたことがあるが不思議な感じの音だ、なにより演奏している指先を見てその速さに驚かされた。

 他の種族には有名な楽器では無いのだが、宮殿楽団でシタールの奏者に選ばれることはドワーフにとって栄誉な事だと言う。


 

「少し疲れているんじゃないか?」

 エルバートに心配されたが特別な不死者で疲れは感じた事が無い……もちろんそんな事は言えないので大丈夫と答える。


「カトリーヌの件もあるし精神的な話だ。大会までの10日間はマジアルの観光をしてはどうだ?」

「ステルドに帰ってカトリーヌの傍に居ようと思ってます」

「それは止めておけ。たった10日、会えないだけで終わる関係では無いのだろう?お前が傍にいると回復は早いだろうが再発の確率も上がる。1人で考える時間を与える事も大切だぞ」


 エルバートに話を聞くと、恋人が傍にいると回復は早いそうだが、傷の表面だけを治す感じになり再発の可能性が上がる。

 1人の時間があると、傷自体を徐々に埋めていき再発の可能性が下がるそうだ。

 もちろん個人差はあるらしいが……。

 少し寂しいが、武闘大会が終わって迎えに行くと言っているのでマジアルの観光をすることにした。


 首都なだけあってお店も豊富だ。

 今まで気にしていなかったが、劇場などもあり演劇や音楽会も行われている。

 

 折角なので、お土産用のシタールを買って広場で演奏していると行き交う人が半笑いで見て去って行くので移動した。

 人気のない場所で鳴らすと綺麗な水色の小鳥が近づいて来た、 水色の小鳥は僕の肩に止まって音を聞いているようだ。

(鳥も聞き惚れる音色、まさか才能ある?)

 そんな妄想は小鳥の澄み渡る鳴き声の綺麗さで打ち消されてしまった。

 小鳥が光って消えたように見えたのは木漏れ日のせいかな……。


 大会が近づくにつれ、屋台のようなものも増えて来た。

 ドワーフはもちろんとして、小人族も結構見かけるし、エルフや人間も結構な人数見かける。

 獣人は……僕には人間との区別がつかないが多分居るのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ