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不死者が望む戻らない死  作者: 流幻
ミューマ大陸編

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蝕まれた心

 ダンジョンを出て、カトリーヌに会いに行きたかったがギルドへ報告するために向かう。

 僕たちが中に入って24日が過ぎているようだ。

 マジアルに戻るまで後10日はあるから問題ないな。


 特別依頼の完了報告をすると品物は僕から直接エルバートに渡して欲しいと言われた。

 ベヒーモスエンペラーを倒したのを報告したら大騒ぎになった。

 冗談と思われていたようだけど手に入れたアイテムを見せると信じてくれた。

 いろいろ質問責めにあったが知っている内容は全部話して解放された。


 頭の中でカトリーヌに会いに行くことを想像するが転移できないし、轟鬼に会いに行く想像でも無理だった。

 ダンジョン内では出来たのにどうしてだろう?


 

 こう言う事はシュバイツに聞いてみるのが早いだろうと思い岬の入り口に転移した。


「そう言う事か。説明したと思ったが理解してなかったのか?」

「カトリーヌは轟鬼の元に転移できてるんですよね?」

 

 異次元にでも飛んでいたら困るので確認した。


「それは問題ない。物体を条件付けで特定の位置に転移させることは可能だ。今回の場合はカトリーヌと言う物体をお主と面識ある轟鬼の居る場所に転移させる想像で可能だ」


 人を物体扱いってどうなのかと思ったが黙っておく。


「お主の転移だけは特殊で足を付けた場所でその場所を想像してしか行けないと説明しておいただろう。つまり轟鬼の元へと言う想像では転移できない」

「そう言われれば聞いていました……。カトリーヌが何処に居るか教えてもらう事は可能ですか?」

「我が何でも知っていると思っているのか?カトリーヌは今、武神・疾風流妖斎の居宅に居るぞ」


 少し文句を言いながらもキッチリ教えてくれた。

 師匠の家に居る?ってことは轟鬼も一緒という事だよな。


「ダンジョン内で『ルドラブラスト』と言う魔法を使用したのですが威力が出なくて、理由は分かりますか?」

「ん?それは神の魔法だろう。今のお前では模倣は出来ても威力は皆無だ。神の魔法を正しく使用する条件は……我とした事が危ない。」

 

 話して良い事と駄目な事があるとシュバイツでも間違えそうになるんだな。

 今の僕ではという事はチェインの解除数とかだろうなと想像した。


「それとチェインを解除し終わって不死で無くなると神龍の涙の効果は無くなるんですか?」

「無くなる。チェイン自体が我の神力によるものだ。それを解除すると神龍の涙の効果も強制解除される。その際の寿命は元のままなので安心しろ」

「もしも、解除した後に神龍の涙をもう一度飲んだらどうなりますか?」

「効果は再度得ることが可能だが、寿命が半分になるぞ。元の世界に戻っても魔法は使えないし半減した寿命は戻らないため飲む意味も無いし勧めない」


 解除後、転移してお世話になった人たちと会いたいが地球に戻って寿命が半分になるのは嫌だな。

 シュバイツはとりあえず渡しておくといって神龍の涙をくれた……、一応ポーチに入れておこう。


「早く会いに行ってやれ、我はいつでもここで待っている」


 そう言ってくれたので岬の入り口まで走って師匠の家まで転移した。



 この時間だといつも薪割をしている師匠の姿が見えないので家を訪ねてみる。

 ノックをして返事があったので入ると轟鬼と師匠が居た。

 

「カトリーヌがいきなり転移してきてずっと寝ている!怪我もあるし何があった!」


 轟鬼が鬼のような形相で近づいてくる、目の前で止まると拳を握りしめて聞いて来た、返答次第では殴られそうだ。

 僕は起きたことを順を追ってすべて話していくと聞いていた師匠がポツリと呟いた。


「蝕まれたか……」

「どういう意味ですか?」


 聞いていた轟鬼が割って入ってきた。


「娘は真面目過ぎる面がある、ライオネルクローの力を見て、使いこなしてお前の力になりたいとでも思ったんだろう。対応できずに心が蝕まれていったのだと思う」


 それ以降、全員が黙ってしまって暫く時が過ぎた。

「う……うーん」

 カトリーヌが目覚めたようで轟鬼が駆け寄って行く。

 パチーン。乾いた音が響いた、轟鬼が彼女の頬を思い切り叩いたのだ。

 

 「お前のしたことで幻妖斎にどれだけ迷惑をかけたか分かっているのか?この先どうするつもりだ」


 カトリーヌはうつむいたまま何も言わない。

 師匠が優しく語り掛けるように言う。

 

「強さを求める事は悪い事ではない。だが力に心が飲まれてはダメだ。起きたことを振り返ってなお君の心が求める答えを真としなさい」


 言い終わると僕の肩を軽く叩いて、場所変えようと言って部屋を出た。

 

 

 隣の部屋に移動すると轟鬼が頭を下げて来た。

 

「娘が迷惑をかけた。許してやって欲しい」

「ライオネルクローを持たせたのは僕ですし、謝らないといけないのは僕の方です。さっき言っていた『蝕まれる』と言うのはなんですか?」


 轟鬼が詳しく説明してくれた。

 己の力量を遥かに超える武器を持つと自分が強くなったと錯覚する。

 苦戦していたり倒せなかった敵を武器の力で倒せるようになると、更に強い敵と戦いを望むようになる。

 そして戦いを繰り返し好戦的になり、強すぎる敵と対峙した際に自身の力で対応できなくなり殺される。

 その徐々に心が変わることを、蝕まれると言って結構多いそうだ。


「やっぱり僕の責任ですね、彼女が好戦的になっている事に気が付いたときすぐ止めるべきでした」

「いや、それは難しいだろう。冒険者であれば戦いは日常だ。娘の幸運はお前が傍に居て止めてくれたことだ。あの程度で済んで本当に良かった」

「ライオネルクローに魔法を込めた人って誰ですか?付与されている属性の威力が以上に強い上、身体強化まであるようなのですが呪いとかではないですよね?」

「それは無いな、なにしろ火の賢者ボルドー様だ。数年から数十年に1度、宮殿に現れるのだが丁度ライオネルクローを手に入れた時期に来られたのでお願いした」


 賢者?それであの威力なのか。大賢者の手がかりなど会って話を聞きたい……。


「先に言っておくが何処にお住まいか俺は知らん、アルベールも知らない。突然現れて宮殿内を一通り回った後は消えるように居なくなるのだ」


 聞かれることを予想していたかのように先手を打たれてしまった。

 今回のカトリーヌの件があって僕は気掛かりな事がある。


「僕はオリハルコンの武器を持っても大丈夫でしょうか?強い武器に魅了されないか不安です。強い敵と戦うと高揚する事も多いですので……」

「それは持ってみないと誰も分からない。強い敵と戦うと高揚するのは普通だろう。1つだけ言えることは俺は大丈夫だと思ってるぞ」

「私がイリジーン殿に言った言葉を覚えているか?お前なら彼の装具を正しく扱えると確信しておる」


 あの時言った『正しく扱える』と言う意味はそうだったのかと初めて知った。

 

「不安は弱さではない。己の弱さを知りながら対処しない者が弱いのだ。己の心と正しく向き合い、正しく悩みなさい。お前には私や轟鬼、そしてカトリーヌが居る」

「仮にお前が蝕まれたら俺とジジィが全力で止めてやるから安心しろ。だが、カトリーヌを不幸にはするな」


 この2人に言われると心強い。

 轟鬼がこの先どうするかと聞いていたがカトリーヌは大丈夫だろうか?

 旅の疲れや、戦いで精神的な疲労が貯まっていたのかも知れない。


「カトリーヌを部屋で1人にして大丈夫でしょうか?」

「それは問題ないだろう。考える時間が必要なので父親の意見としては数日は家で静養させたい。良いか?」

「もちろんですよ。僕が傍にいると良くないですよね?」

「お前が傍に居てくれると、あの子も心強いだろうが……旅は良いのか?」

「僕は不死者ですから時間はあります、今はカトリーヌが心配です」


 轟鬼と師匠に後10日したら武器製作のためにマジアルに帰って来いと言われている事を告げ、エルバートに延期して貰うようにお願いしようとすると、それはダメだと即答された。

 今から9日間は一緒に居て、マジアルに移動し大会が終わるまでは滞在する事になった。

 カトリーヌは母や兄が見てくれるそうだ、そう言えばお兄さんが居るって言ってたな。


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