ベヒーモスの特殊変異体
事前の情報通り、ボスは複数体いる。
スケルトンソルジャー、スケルトンメイジ、スケルトンサマナー、スケルトンナイトと一番大きいのはスケルトンキングだ。
これが結構厄介で、ナイトはキングを守っている、他の3体は連携している。
ナイトを倒すとキングが、ソルジャーとサマナーを倒すとメイジが約1分後に魔法で復活させる。
メイジは魔法攻撃をしてきて、サマナーは普通のスケルトンを召喚してくる。
ここは定石どおり戦う事に決めている。
僕が突入してソルジャーに向かい倒し、その隙を見てカトリーヌがメイジを倒す、その後2人でサマナーを撃破する。
召喚されたスケルトンを倒してからナイトを倒してキングをすぐに倒す。
武器への魔法付与と身体強化と移動加速を掛けて戦闘を開始する。
僕がソルジャーへ近づくと同時にナイトがキングの傍に移動し、サマナーは召喚魔法、メイジは攻撃魔法を詠唱開始した。
ソルジャーの攻撃を短刀で弾いて避けながら、メイジの魔法が発動されるまで待つ。
ウインドアローが僕の向かって発動されたのを確認してカトリーヌがメイジに向かって行く。
光魔法を短刀に付与し、頭から心臓部分に掛けて真っ二つにすると、魔法発動直後だったメイジは何も出来ずカトリーヌが倒し終わっている。
サマナーが5体スケルトンを召喚していたので、スケルトンを相手にしている僕よりも早くサマナーを倒してカトリーヌがナイトに向かって行く。
ナイトに向かっているとシールドバッシュし彼女の体が宙を舞った。
助けないと……そう思うと同時に空中で体勢を立て直し着地するとすぐ攻撃に移る。
合流した僕たちはナイトを倒して、そのままキングを倒した。
このキング、体が大きくて強そうだけどナイトの回復をするだけで全く強くない。
「シールドバッシュされてたけど怪我はない?とりあえず回復しよう、傷を見せて」
カトリーヌは全く傷が無かったし骨にも異常はなさそうだ、叩かれる瞬間に後ろに飛びながらライオネルクローでガードしたと言う。
彼女の格闘センスとオリハルコンの丈夫さを思い知らされた。
次はいよいよ最終層のベヒーモスとの戦いだ。
戦った経験はあるので攻撃パターンは大体わかっている。
魔力暴走の心配もないのでオーラや魔法剣も使用可能だし勝てるだろう。
6層へ続く階段で休憩しているとカトリーヌから思いもよらない事を言われた。
「ベヒーモスなのですが私だけで戦っても良いですか?ライオネルクローの魔法を使ってどこまで出来るか試してみたいんです」
「さすがに危険すぎるよ。軽い怪我だけでは済まない可能性もあるし……」
「危なくなれば助けを求めますし、幻妖斎様の判断で危ないと思ったら合流して貰っても構いません」
多分だけど普通なら危険すぎるから断る内容なんだろう。
結果はやってみないと分からないし、やる前から無理だと言うことも出来ない。
グリアでは女性冒険者も少なくはないので『女性だから』などと言う理由で拒否するのも変な話だろう。
「わかった、でも僕が危ないと判断したらすぐ助けに入るからね」
彼女は笑顔で頷いてくれた。
ベヒーモスの攻撃自体は大振りだし、魔法の発動にも大きな溜めの動作があるから問題はないと思う。
その思いは見事に踏みにじられる事となる。
階段を降りたところにベヒーモスを数倍にしたほどの大きさで紫色の肌に金色の模様が入った3本角の魔物が見える。
以前、図鑑で見た(ベヒーモスエンペラー)という特殊変異体でかなり強い。
「カトリーヌ、あれは特殊変異体だ。協力して2人で倒すよ」
「最初は私1人で戦う約束です、幻妖斎様は手を出さないでください」
「その約束は無しだ!もうすでに危険と判断する」
「約束は約束です!」
そう言うと、ライオネルクローの魔法(炎の獅子)をベヒーモスエンペラーに放ち向かって行く。
身体強化も付与されているので早い、真っ赤になったライオネルクローの攻撃は効果があるようだ。
皮膚に傷がついているが……ダメだ、すぐ回復している。
もっと強い攻撃か、回復速度を上回る速さで攻撃を当てないと倒せない。
気のせいか攻撃が単調だ、興奮しているのかな?普段だともっと動いて的確に効果的な場所に打撃を与えている。
ベヒーモスエンペラーの3つの角が激しい雷撃を溜めている。
(これはまずい)
咄嗟にカトリーヌと僕に魔法防御結界を強めに張った。
かなりの広範囲に強力な雷が連続で落ちたが結界で助かった。
「余計な真似はしないでください!」
興奮してるだけでは無い感じだ……早くベヒーモスエンペラーを倒さないと。
僕は短刀にオーラを込めてエターナルファントムで近づいて翔雷を撃つ。
皮膚を切り裂き肉にまで達したが短刀が見事に砕けてしまった。
(極大魔法を想像して放つか?ラルドが使った『ルドラブラスト』なら神の魔法だし倒せるかも知れない)
幸い、ここには他に誰も居ないから遠慮はいらない……ルドラブラスト!
大量のすさまじい大きさの竜巻と突風が広範囲に吹き荒れ巻き上げた砂塵でベヒーモスエンペラーの姿も見えない。
さすがにこれは耐えられないだろう……と思っていたが無傷だった。
(何故だ?傷が全くない、効果を打ち消した?いや、神が使っていた魔法だぞ?)
カトリーヌに近づき、とりあえず一度撤退しようと告げた。
「嫌です、倒します」
「短刀が壊れた、魔法も効かない。一度退いて作戦と立て直そう」
「それはあなたの武器が弱いから、魔法が未熟だからでは無いのですか?私の攻撃は効いてます」
やっぱりおかしい、こんな事を言う人じゃない。
僕はカトリーヌを抱き抱えて移動加速で距離を取る。
今までと違う事は……ライオネルクローだ。
まさか呪われた武器とか?いやそれは無い、轟鬼から直接貰ったものだ。
外さないと!そう思って真っ赤なライオネルクローに手を掛けた瞬間、激痛が走る。
僕の両腕は真っ黒に焼かれている、この前触れた時は何ともなかったのに何故?
「私は戦いたいだけです。邪魔をするなら、あなたも敵です」
僕を見る目は何かに取りつかれているようだ。
フォーゲルとネーブルタワーで戦った時に回復速度が早くなったため手はすぐに回復した。
カトリーヌに抱きついて移動を制止したが彼女は僕の背中を殴って来る。
「僕が不死者なのは知ってるだろう?死ねないんだよ。君が僕を敵だと言っても、僕は大切な人に攻撃できないよ」
その言葉を聞いて攻撃が止まった、すぐに僕はライオネルクローをカトリーヌから無理矢理に引き剝がした。
睡眠魔法をかけて、轟鬼の元まで転移させる魔法を想像すると彼女の体は転移したようだ。
ダンジョン内で転移魔法が使えるのは神龍の涙を飲んだ特権だろう。
僕はライオネルクローを装備する。
ベヒーモスエンペラーを確実に倒すには、この技しかない。
あれから何度も練習を重ねた今なら使える。
危険と言われたがダンジョン内のボスフロアなので他に誰も居ない。
全身に纏った闘気をオーラに変える。
ライオネルクローがオーラに呼応するかのように小刻みに揺れている。
ベヒーモスエンペラーに近づくと踏みつけ攻撃をしてきたので横に避け体勢を整える。
纏った全てのオーラを瞬練で右拳に移して突き出す。
『散華』
右拳が光を放ち、オーラが花弁のように流れる。
光る拳がベヒーモスエンペラーに触れた瞬間、破裂するように割れて大爆発を起こした。
辺りを見回すと地形が変わってしまっている。
爆発の中心に居たベヒーモスエンペラーは跡形もなく消え去って爪と角と皮と宝箱が残されている。
ライオネルクローは無傷だが僕の体はズタボロだ……人が居る状態で使うと間違いなく大惨事になるな。
不死者以外が使うと使用者も死ぬ可能性があるぞ。
その後、僕は数時間待って復活した普通のベヒーモスを倒して無事に角と皮を入手できた。




