ホーリアと言う街
街まで来たのは良いけどイリジーンの顔も分からない。
とりあえず人に聞いてみるか、と思って歩いている人に聞いたらすぐ分かった。
言われた道を歩いて行くが見かける街の人の全てがこちらをジロジロと観察するように見つめている。
「獣人はやはり珍しいのでしょうか?」
カトリーヌも気になったようだ。
「小さい街みたいだから他所から来た人が珍しいのかもね」
心配させないように、そう答えたが何かある予感がする。
エリアの境や辺境と言う訳でもなく馬車で4日かかると言っても首都の南だ。
海沿いの田舎……とは言っても、もう少し賑わっていてもおかしくは無い。
言われた場所に行ったが、みすぼらしい家だ。
職人が仕事をできる環境ではない、まさか首都を出てから本当に製作してないのか?
ノックをする扉も無いので声をかけて中を覗くと1人のドワーフが居た。
彼は立ち上がり、何の用かと聞いて来た。
「初めまして、流幻妖斎と言います。失礼ですがイリジーンさんですよね?」
「あぁ、そうだ」
「武器の製作をお願いしたくて、エルバート族長にお願いしたらあなたが首都へ来るのを拒否したと聞いて直接頼みに来ました」
「俺は罪人となりここに居る。ホーリアを出たり製作すれば子供たちが危ない。悪いが諦めてくれ」
「族長はあなたの事を罪人と認識していないようでしたよ」
「俺の罪は大臣が決めた。お偉い族長様に小物の処遇など報告は行かないんだろう」
彼は力ない声で話していたが、突然声が大きくなった。
「それに『お互い頼み事をするときは頼む方が会いに行く』と約束している。だが兵士1人が来て偉そうに首都へ来いと言ってきたよ。ホーリアに居る時点で分かりそうだが何もしてくれない。病気が悪化した娘に会いにも行けない、エルの奴は偉くなって変わってしまったな」
そこまで言った後、もう誰とも会いたくないから帰れ、と言われ追い出されてしまった。
「やっぱり変ですね。ここからセントスまで時間はかかりますが行けない距離では無いですわ。この街の出入りは難しいのでしょうか?」
カトリーヌが不思議そうに言っている。
イリジーンの話で大体の想像はついた、帰って確認してみよう。
ホーリアを出て帰りは転移魔法を使った。
予定より1日早く帰れた、僕はその足でコデルを訪ねる。
話したい事があるのでと言って別室で僕とカトリーヌとコデルが集まった。
「コデルさん、お聞きしたい事があります。ホーリアと言う街ですが罪を犯した人が送られる場所ですか?そして逃げないように相互監視する」
「そうです。海辺の街のため隠居した人が釣り目的で移住する場合もごくまれにあります。何故か治安はいいのです」
やっぱり、そう言う事か。
治安が良いのも区分けして相互監視で逃亡や内部で犯罪を犯せば区の住人が罰せられるとか、怪しい人を密告すれば報告者に何か報酬があったりとかだろうな。
やたらとジロジロ見られてたのも僕たちが何をするか見ていて、イリジーンが僕たちをすぐ追い返したのも怪しまれないため。
ホーリアに居る時点で……と言っていたのも、そう言う場所だと知ってるエルバートが気が付いて対応してくれると思っているんだろう。
娘に会いに行けない理由もそれだろうな。
使者として来た兵士に説明すれば終わる事なのに、頑固にもほどがある。
「明後日の朝、ロイドと私が宮殿に呼ばれているのです。父への罰が決まったのだと思います」
コデルはかなり不安そうだ。
これは急いでエルバートに面会しないとダメだけど会ってくれるかな?
「駄目だ駄目だ。族長は今お忙しいのだ」
まさしく門前払いされた。
族長の指輪を見せたが、族長本人が拒否しているので効果が無い。
「お父様かアルベール叔父様にお願いしますか?シルマまで転移魔法で戻れば首都グリオベーゼまで飛べる術師が居ると思います」
「いや、獣人族を巻き込むわけにはいかないよ」
轟鬼の手紙は僕に関する事だったので良いが、今回はドワーフ内の問題なので他種族を巻き込むのは避けたい。
他にドワーフの族長を知ってるような知り合いは居ないし……そもそも知り合いに居ても族長に意見できる人物なんて無理だろう。
あ、1人居た。
「確か師匠ってドワーフにも尊敬されてるんだよね?」
「ええ、疾風のおじさまの書状があれば多分会えると思いますわ」
カトリーヌには待ってもらって僕だけで転移した。
師匠の所だ。
「話は分かった、ドワーフの族長に面会できるように計らえば良いのだな」
今までの経緯を聞いた師匠は快く引き受けてくれた。
「現在の族長殿とは面識が無いので会えるか分からないぞ。1つ聞きたい、お前は今回誰のために動いている」
誰のため?ロイドたちを悲しませたくないし、エルバートとイリジーンにも仲直りして欲しい。
「自分自身のためです。全ての人を助けることは出来なくても、出会った人が悲しい思いをするのを見るのが僕は辛いのです」
「ふむ、考えが甘いな。だが嫌いではない。その思いを最後まで忘れないようにしなさい」
そう言うと師匠は家に戻って、見た事が無い服に着替えて来た。
アクセサリーもつけてるけどグリアの礼服とかなのかな?
手紙を書くだけと思っていたが同行してくれるようだ。
マジアルに戻った僕たちはカトリーヌを合流して宮殿に向かう。
「何だ、またお前たちか。族長はお忙しい。後日また来い」
相変わらず門前払いの様相だ。
スッと兵士の前に立つ師匠の姿を見て兵士の顔色が変わった。
「私は疾風流妖斎と申します。エルバート族長に面会をお願いしたい」
今までの態度が嘘のように見た事ない速さで敬礼をし、お待ちくださいと言って宮殿内へ走って行った。
偽物の可能性は考えないんだろうか……。
兵士と数名のドワーフがドタドタと走ってきている。
しかも、真ん中に居るのはエルバート族長だ。
「お初にお目にかかります!ドワーフ族の族長エルバート・ダミアンと申します。どうぞこちらへ」
族長がする態度じゃないしカトリーヌも驚きを隠せないようだ。
轟鬼は別としても、エルフの前族長のマーサは親しげに話してたような。
師匠が僕の事を弟子と紹介したものだから、僕に対する態度まで丁寧になった。
グリアの最高権力者って師匠なのでは?と思ってしまう位だ。
部屋にはエルバートと僕たちの4人だけだ。
「本日お越しいただいたのは武具の購入でしょうか?」
「私の弟子が武器を求めているのですが、イリジーン殿と言う方の助力が必要だと言っておりましてな」
エルバートは僕の方を睨みつけて来た。
「言いにくいのですが、その者は罪人となる者ですので……」
「罪人となる、という事は今は違うという事ですな?私が聞いた話とは違うようだ。幻妖斎、説明をしなさい」
僕はロイドとコデルから聞いた話、イリジーンから聞いた話を族長に話した。




